「チーム全員がモーディのバスケを遂行できるのが強みだと思います」
9月8日、長崎ヴェルカは武蔵野の森総合スポーツプラザでアルバルク東京とプレシーズンゲームを実施。機動力と運動量を生かした激しいディフェンスからリズムをつかみ出だしでリードを奪ったが、最後にはA東京の堅守を崩す事ができずに62-76で敗れている。
勝敗は二の次で内容重視のプレシーズンにおいて、モーディ・マオール新ヘッドコーチが率いる新体制の長崎は敗れた中でも多くのポジティブな要素を感じさせる内容だった。大きな敗因となったのはターンオーバーや強引なシュートで終わるオフェンスが増え、そこからA東京にトランジションを食らいイージーバスケットでの失点が多くなったこと。しかし、この試合はオフェンスの起点となる外国籍ガードのマーク・スミスが欠場し、さらに経験豊富な狩俣昌也も前半途中に負傷退場と、メインの司令塔2人がともに不在という明らかな原因があり、不安視するものではないだろう。
ポシティブな要素の筆頭に挙げたいのは山口颯斗だ。筑波大時代から世代屈指のスコアラーとして活躍してきた山口は、Bリーグに入っても着実に結果を残してきた。茨城ロボッツに所属した昨シーズンは52試合に出場し平均10.9得点、4.6リバウンド、2.4アシストを記録。5月には代表のディベロップメントキャンプにも参加するなど、リーグ有数の若手ウイングとして注目すべき存在だ。
山口は故障者の影響もあり34分10秒の出場とフル稼働の中、15得点を挙げるなど日本人エースとしてしっかりと爪痕を残した。「プレーシーズンは初めてで、試合中やその前のケガで選手が欠けている状態でしたが、ディフェンスは自分たちの良いところが出せました。ただ、自分たちのオフェンスが遂行できない時、ディフェンスもやられてしまう悪循環がありました、前半はそういう時にカムバックできましたが、後半はもっと我慢できたらよかったです。新しいヘッドコーチで、僕も含めた新加入が多い中で、チームとしての若さが出たと思います」
このように試合を総括する山口は自身の役割について、ボールシェアを大切にするチームオフェンスの中でいかに効果的に持ち味を発揮できるかと語った。
「ウチのチームは全員がアタックできます。そして、マーク(スミス)が復帰したらクリエイトもできますし、JB(ジャレル・ブラントリー)もいますし、乗っている選手がクリエイトすればいいです。チーム全員がモーディのバスケを遂行できるのが強みだと思います。僕個人がというより、チームバスケットの中で今日は自分がうまくクリエイトをできたのかと思います」
「これだけやらせてもらっている以上、結果を残さないといけないです」
山口の持ち味は外角シュートに加え、195cmのサイズと巧みなボールハンドリングを生かしたアタックからのレイアップやキックアウトのパス。そして、自らリバウンドを取って素早くボールプッシュできるなど多彩なオフェンス能力にある。スモールボールで機動力を重視する長崎のスタイルとの相性は抜群であり、本人も「(チームスタイルが)僕に合っていると思って新天地にヴェルカを選んでいます。モーディのバスケットにアジャストするのは大変ですけど、徐々にできていると思います」と手応えを語る。
このアジャストへの苦労については、次の違いを挙げる。「ヴェルカではフローオフェンスで流れの中で攻めていくことで、自分がボールを持つ時間はこれまでに比べると減っています。ただ、その中でもクリエイトしていく回数は変わらないです」
今はモーディヘッドコーチの要求に応えることに苦労しているが、指揮官へ全幅の信頼を寄せている。「情熱的かつ、とてもスマートでリスペクトしています。彼についていけば間違いない。ミーティングをやっていると、これは勝てるというイメージを浮かべられますし、強いチームになれると感じます」
そして、新たな指揮官の下で、個人としてもさらなる進化を遂げられると確信している。「このチームに来て、モーディの下で今までやったことのない役割、プレーを与えられています。考えさせられることが多いですし、ディフェンスでは最初からエンジン全開のフルスロットルと、今までより高い強度を要求されます。人生で1番キツイですけど、バスケ選手としてもっと成長できると思います」
「人生で1番きついです」と言った時、山口の表情には笑顔が見えた。これこそ、長崎で充実の日々を過ごせている証拠だ。また、この試合が示すようにウイングの要の1人として起用されていることで、「これだけやらしてもらっている以上、結果を残さないといけないです」と強い覚悟を見せる。
豊富な運動量が求められ、スピードと激しさを前面に押し出す長崎のスタイル。それを体現し、チームの躍進に繋げるには山口の活躍が不可欠になる。そんな期待感を大きく抱かせてくれる、プレシーズンだった。
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