ステフィン・カリー

残り3分からのプルアップスリー連発で勝負を決める

開催国フランスとアメリカの顔合わせになったファイナルは、アメリカが2桁リードを奪ってはフランスが追い上げる展開が続き、残り3分の時点で82-79と1ポゼッション差の接戦となりました。豪華メンバーの揃うアメリカは圧倒的な力を持っていましたが、フランスはメンタリティの強さで立ち向かっていきました。

開幕戦からスターターを3人も入れ替え、全く別のチームになったフランスは、ガード陣の突破からビッグマンのフィニッシュへと繋げる形をやめ、ビクター・ウェンバニャマをオフェンスの中心に置いたことでチームが良い形で動きだしました。インサイドにスペースが生まれたことでオフボールで複数人が絡むプレーが増え、特にガーション・ヤブセレのカットプレーが効果的でした。

そしてファイナルの大舞台になってベテラン陣の奮起も目立ちました。特にここまで5試合で6得点しか記録していないナント・デ・コロが、ステフィン・カリーのサイズを狙ったアタックからフィールドゴール7本中5本を沈めて12得点を奪いました。26得点を奪ったウェンバニャマを中心に、大会中にチームとして急激に完成度を高めたことでアメリカに食らいついていきました。

アメリカはフランスがゾーンディフェンスを駆使して中を固めるのを見て、3ポイントシュート中心のオフェンスを展開することになりましたが、急増チームゆえかパッシングで崩すことができず、苦しい形でのシュートが多くなってしまいました。しかし、そんなシュートでも決めてしまうのがスーパースターたる所以とばかりに、外から射貫き続けます。

しかし、そんなスーパースターでもオリンピックのファイナルという舞台に慌てたのか、凡ミスが目立って17のターンオーバーを喫し、カウンターの速攻に走られてしまいます。チームとして機能し始めたフランスに対して、ゾーンを崩すパスワーク不足に個人でのミスも重なり、試合がクライマックスへと向かうほどに、アメリカの方が苦しい状況になっていきました。

そんな中で迎えた残り3分から、ステフィン・カリーの独壇場が始まりました。個人技からのプルアップスリーを連発すると、最後はオフバランスから放り投げたハイアーチまで決めて、なんと4連続で3ポイントシュートを成功させ試合を終わらせたのです。上手く行っていなかったチームオフェンスを、理不尽なまでの個人能力で成立させてしまうことで、98-87でフランスを退けました。

カリーは29分半の出場で3ポイントシュート12本中8本成功を含む24得点。ケビン・デュラントとデビン・ブッカーが15得点、レブロン・ジェームズが14得点6リバウンド10アシストを記録しています。

初代ドリームチームに匹敵する豪華メンバーと評された今回のアメリカ代表ですが、セミファイナルでの大苦戦もあり、チームとして圧倒的な強さを見せたと言い切るのは難しい内容でした。しかし、大会MVPに選ばれたレブロン・ジェームズを筆頭に、個人レベルでライバルたちを圧倒しており、これこそがアメリカらしい金メダルの取り方だったのかもしれません。