ゴードン・ヘイワード

「浮き沈みのあるキャリアで支えてくれたことに感謝」

ジャズ、セルティックス、ホーネッツで活躍したゴードン・ヘイワードが、34歳で迎えた今オフに現役引退を発表した。「信じられないような経験で、自分が想像した以上の結果を出す上でサポートしてくれたすべての人に感謝したい」と、ヘイワードは声明の中でコメントしている。

バトラー大で2010年のNCAAトーナメント決勝進出の原動力となったヘイワードは、その年のNBAドラフトで1巡目9位指名を受けてジャズに加入。ルーキーシーズンからローテーション入りし、2年目からは主力として活躍した。ジャズで7シーズンを過ごした後、フリーエージェントでセルティックスへ。バトラー大を指揮していたブラッド・スティーブンスの下、カイリー・アービングとアル・ホーフォード、ヘイワードの『ビッグ3』で優勝を目指したが、その希望は開幕戦で打ち砕かれた。

試合開始からわずか7分後、カイリーからのロブをアリウープで決めに行ったヘイワードは、空中でバランスを崩す。コートに倒れ込んだその左足首は、あらぬ方向に曲がっていた。脛骨が完全に折れ、足首も脱臼。手術は成功し、麻酔から目覚めたヘイワードは一番に「僕はまたプレーできるようになるのか」と医師に尋ねたという。結果として、その答えはイエスでもありノーでもあった。プレーはできてNBAキャリアは続いたが、ケガをする前のパフォーマンスは最後まで取り戻せなかったのだから。

結局、2017-18シーズンは開幕戦で7分間プレーしただけ。翌シーズンのプレシーズンゲームから戦線復帰を果たすも、かつての爆発力は戻らない。リハビリで身体能力は元に戻ったはずだが、それでもどこかで力を出し切れなかったのは、ケガに対する恐怖心が拭えなかったからかもしれない。2019-20シーズンには左手首の骨折と不運が続いた。セルティックス3年目のこのシーズンともなると、優勝への期待と全盛期のパフォーマンスを取り戻せない現実との間でヘイワードは苦しむことになる。

かくして2020年、フリーエージェントとなったヘイワードは、当時オーナーだったマイケル・ジョーダンの誘いを受けてホーネッツへと移籍。優勝候補のセルティックスから再建中のホーネッツへと環境を変え、ルーキーだったラメロ・ボールのような若手を引っ張る立場になって心機一転のヘイワードは、ジャズ時代のパフォーマンスを取り戻す。ただ、ここでもケガに妨げられ、ホーネッツでの4シーズンで出場試合数は多くても50に留まった。

昨シーズンのトレードデッドラインで、ヘイワードはサンダーへとトレードされる。西カンファレンス首位を争うまでに成長しながらも若手ばかりのチームに経験を補うための補強だったが、ヘイワードはすでに完成されたサンダーのバスケにフィットできず。サンダーが躍進を続ける中で、価値を発揮できないままシーズンを終えた。

かくして、NBAで14年目のシーズンを終えた今オフに現役引退を発表することに。ジャズで毎年のようにキャリアベストを更新したキャリア前半と、大ケガを負ってその影響と戦い続けたキャリア後半で明暗が分かれた。

リムアタックも3ポイントシュートもできてオフェンスの主役を演じ、それと同時にチームを円滑に動かすことのできるプレーの幅広さとバスケIQも備えていた。ヘイワードの恵まれた才能はケガに阻まれて生かせなかった。それでも彼は引退に際して、自分のキャリアを「素晴らしい挑戦」と表現し、周囲の人々への感謝を惜しまない。

「感謝すべき人が多すぎる。数えきれないほどの年月をともにし、僕を助けてくれた。ファンの皆さんにも、浮き沈みのあるキャリアで僕を支えてくれたことに感謝を述べたい。世界中のファンからもらった励ましの手紙や、一緒に分かち合った瞬間を、僕はいつまでも大切にする。ファンのみんなが、夢を持って日々向上しようとする僕を鼓舞してくれた。次に続く若い選手たちが同じようにできるよう、僕は挑戦するつもりだ」

「これからは父親や夫として家族と過ごす時間が増えるだろうけど、新たな冒険や挑戦を楽しみにしている。コートで学んだ教訓が僕を人生の次の章へと導いてくれるはずだ」