「できあがっているチームに加入する難しさを感じました」

島根スサノオマジックは優勝候補と目されながらも、昨シーズンにチャンピオンシップ(以下、CS)進出を逃した。昨シーズンの新加入選手として奮闘を見せた晴山ケビンは、チームとしても個人としてもまだまだステップアップできる感触を得ている。そんな晴山に移籍1年目の振り返りと新シーズンに向けての意気込みを聞いた。

——昨シーズンの振り返りをお願いします。

当然、優勝を目標としていました。島根は2年連続でCSに出場していたので、3度目の正直で取り組みました。ヘッドコーチの考えるバスケットシステムやコート上以外の行動ルールも、チャンピオンチームにふさわしいものだったと思いますが、それに対して僕ら選手の話し合いが足りなかったと感じています。うまくいっていたことを「まぁ、うまくいったからこれでいいでしょ」で終わらせていたところがあり、僕も含めて全員で「どうすればこれを続けられるか?」、「どうすればもっと良くなるか?」というコミュニケーションをもっと取れたのではないかという反省があります。

——うまくいっていることに対してのコミュニケーション不足が、結果的にシーズン終盤の連敗に影響したのでしょうか?

どこのチームでもそうですが、シーズン序盤は完成度は高くありません。その序盤にうまくいっていたことを「自分たちの武器にできる」と思っていながら誰も口にせず、最後まで武器にしきれませんでした。今思えば「シーズン序盤に通用しているから終盤にも通用するだろう」とか、「試合の前半はうまくいかなくても後半はどうせ勝てるだろう」というような慢心があったと思います。

——新加入の晴山選手としては、スタイルのできあがったチームでプレーする難しさもあったでしょうか。

プレーしている感覚では「フィットしているだろう」と思っていましたが、スタッツを見ると例年よりも落ちている項目が多かったです。特にシュート成功率は目につきましたが、分かっていてもなかなか上げられない壁がありました。いろんなチームを経験していますが、できあがっているチームに加入する難しさを感じました。島根はBリーグで1番と言っていいほど細かいルールがあるチームだと思いますが、アルバルク東京や宇都宮ブレックスのような上位チームに勝った時は全員がルールを理解して、全員で遂行できていました。たとえ自分のプレータイムが短くても全員がやり切ったという顔でロッカールームに戻ってこれていたので、そういう時はチームの一員になれている実感がありました。

——11月の富山グラウジーズ戦でシーズンハイの15得点(3ポイントシュート6本中5本成功)を記録しました。早い段階から順応していた部分もありますか?

あの試合は、チャンスがきたらシュートを全部打とうという感覚で、チームシステムというよりも自分のシュートにフォーカスしていました。そこから4月の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦まで2桁得点を記録できなかったのですが、それは考えすぎてしまって、自分のシュートのタイミングよりもチームルールを優先してしまったからです。それが良いことなのか悪いことなのかは僕のこれからのバスケット人生で答えを出していくことが必要ですが、昨シーズンに関しては個人の成績に繋がりませんでした。考えることは大事ですが、考えすぎて自分の武器が発揮できなかったという感じでした。

——その経験をしたからこそ、今シーズンの晴山選手は怖い存在になりそうですね。

序盤から僕も攻めていきます。もう「誓哉(安藤誓哉)と外国籍だけのチーム」と言われたくないので(笑)。昨シーズンは津山(津山尚大)ができると証明してくれましたし、今も練習開始時からみんなで「誓哉とニック(ニック・ケイ)の力で勝つチームというのを変えていこう」という思いでバスケットしています。

「昨シーズンの悔しさは全員が心の中にあります」

――エースだったペリン・ビュフォード選手が退団しました。同ポジションの晴山選手にとってはチャンスが増えるシーズンになると思います。

もちろんチャンスだと思っています。ポール(ヘナレヘッドコーチ)のシステムも変わってくると思いますが、ウイングの選手が得点し、特に日本人のウイングが2、3倍もステップアップしていかないと優勝はできません。誓哉やニックが安心してボールを預けられるような選手にならないといけないと気を引き締めて取り組んでいるところです。

——チームの中心を担うことを期待されます。今はどのようなことを意識してトレーニングをしていますか?

僕がキーマンですね(笑)。7月からはもっと速く打つ練習をしなければと、キャッチしてからリリースまでのスピードを上げる練習に取り組んでいます。シュート精度を気にしていたら打つのが遅くなってしまうので、速さに慣れた上で精度を上げていくことを意識してやっています。

——晴山選手はムードメーカーという印象も強いです。昨シーズンの課題となったコミュニケーション不足に対して、どのようなアプローチができそうですか?

外国籍選手同士、日本人選手同士で固まることはどこのチームでもあることですが、そこの壁を乗り越えさえすれば、短期間でチームとして強く結束できると思います。英語がしゃべれなくても日本語で目を見て一生懸命話しかければ、選手はiPhoneで翻訳してくれるんです。

——31歳になり、中堅からベテランと言われるようなキャリアになってきました。若い選手が加入する中で、自身の立ち位置に変化を感じますか?

今まではどちらかというと「自分のことだけを考えていれば良い」というスタンスでしたが、後輩たちが落ち込んでいたり気にしている様子が目に入るようになってきました。そういう状況のままで練習してももったいないので、「とりあえずご飯行こう」と誘い出したりしています。どのカテゴリーでもそうですが、下の世代が育たないと上の世代は「こいつらにやられる」というような危機感が芽生えません。練習から本気で戦う。そういう姿が若手のあるべき姿だと思うので、365日全力でやってほしいですね。

——目標を達成するために何を重要視していきますか?

昨シーズンの悔しさは全員、心の中にあります。今シーズンこそはという思いが今の練習にも表れています。その思いをメンバー全員が集まった時に、どれだけ言葉にできるかがカギになると思います。優勝するために必要なことをどれだけしゃべり、取り組んでいけるかが大事です。

——最後に応援してくださっている方にメッセージをお願いします。

島根は本当に熱狂的なブースターさんが多くて「優勝してほしい」という思いで応援してくださっているのが伝わります。ブースターの皆さんのために、松江のために戦わないとなと思います。昨シーズンは悔しい思いをしてしまいましたが、今シーズンは優勝するために、もう一度みんなが進化していかないといけないと思います。選手はもちろんそうですが、ブースターのみなさんと一緒に進化して、背中を押してもらって全員で優勝をつかみにいきましょう。

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