バディ・ヒールド

ラウリ・マルカネン獲得を目指してジャズと交渉中?

ウォリアーズはセブンティシクサーズとのサイン&トレードでバディ・ヒールドを獲得した。契約は4年3740万ドル(約56億円)となるが、保証されているのは2年間1800万ドル(約27億円)と3年目の300万ドルのみで、3年目の契約をウォリアーズが破棄しなかった場合のみプレーヤーオプションの4年目が付く。ウォリアーズからシクサーズへは2031年の2巡目指名権が譲渡される。

ウォリアーズではクレイ・トンプソンがフリーエージェントとなって退団し、ステフィン・カリーとの『スプラッシュ・ブラザーズ』が解散となったが、新たにカリートヒールドの3ポイントシュート・コンビが誕生する。

ウォリアーズのバスケは今も3ポイントシュートが主体であり、チームオフェンスの中でシューターを生かす術は心得ている。またクレイが抜けたシューターの穴を埋めなければ、カリーの受けるマークは今までとは数段厳しくなっていたはずで、ヒールドのような実績ある選手の獲得が必要だった。

ヒールドはキャリア2年目の2017-18シーズンから常に3ポイントシュート成功率でリーグのトップ10をキープしている。昨シーズンは2月のトレードデッドラインでペイサーズからシクサーズにトレードされ、チームのバスケスタイルがガラリと変わる状況でも568本中219本成功(38.6%)と、3ポイントシュートを打ち、決めるという自分の仕事はブレなかった。

それでも、3ポイントシュートは補えるが、他までは補えない。ヒールドはディフェンスを苦手としており、全盛期はもちろん足をケガした近年のクレイよりもディフェンス力は落ちる。シクサーズ加入当初は先発だったがシーズンが進むにつれて出場機会を失ったのも、ディフェンスの弱さをニック・ナースが嫌ったからだ。シクサーズはプレーオフのファーストラウンドでニックスに2勝4敗で敗れたが、ヒールドは最終戦でこそ20得点と気を吐いたものの、それまでの5試合では3試合のみの起用で、プレータイムは合計でも30分しかなかった。

クレイはその優れたシュート力でカリーの相棒となったが、カリーの分までディフェンスを負担できた。ヒールドをスタメンで使うなら、36歳のカリーがディフェンスの負担増で消耗することになる。ディアンソニー・メルトンとカイル・アンダーソンという新戦力も含め、カリーと他の選手をどう組み合わせてチームのパフォーマンスを最大化するかは、これから試行錯誤の中で築いていかなければならない。

ウォリアーズはラウリ・マルカネンの獲得も狙っているようだが、こちらは相当な条件を提示しない限りジャズはエースの放出に応じないだろう。再建中のジャズを納得させるにはジョナサン・クミンガやブランディン・ポジェムスキーといった若手のトップクラスを譲渡する必要があり、その場合もチームの最適なバランスを見いだす作業は極めて難しいものになる。

いずれにしても『王朝』は傾き、クレイにはほとんど見返りがないまま出て行かれ、ポール・ジョージも獲得できずにフリーエージェント市場での収穫がなかった以上、優勝争いのできるチームを作るには難しい課題をいくつも越えなければいけない。ヒールドはチームの課題をすべて解決するわけではないが、手頃な契約で実績ある選手を獲得できたのは間違いない。マルカネン獲得がどうなるか、他の補強の動きも含め、一つひとつ解決していくしかない。