チャールズ・リー

バックスとセルティックスで2度のNBA優勝を経験

チャールズ・リーがホーネッツの新たなヘッドコーチに決まってから就任会見が行われるまで、1カ月半を要した。それはセルティックスのアシスタントコーチという仕事が、シーズンの最後の最後まで続いたからだ。

ジョー・マズーラのアシスタントコーチという職務を全うしつつ、リーには「ホーネッツに申し訳ない」という意識があった。ホーネッツのフロント陣は、プレーオフを戦うリーに配慮して、来シーズンのヘッドコーチへの問い合わせを必要最小限で済ませようとしたが、リーはオンラインミーティングとチャットを駆使して、ホーネッツ指揮官としての仕事をいくつもこなし、ホーネッツの選手たちともコミュニケーションを取った。テキストメッセージが中心ではあったが質問には丁寧に返事をし、選手の何人かはリーの仕事ぶりを見るためにセルティックスのプレーオフの試合に足を運んだ。

就任会見には、ラメロ・ボールにブランドン・ミラー、グラント・ウィリアムズといった選手たちが立ち会っていた。「彼らの存在が私のモチベーションを高めてくれる」とリーは言う。「私はチームには仲間意識が必要だと考えていて、そういう意味で彼らがあそこに座っていることに感謝している」

選手としてのリーは2006年のNBAドラフトにエントリーしたが指名を受けられず、スパーズでサマーリーグに参加したもののNBAのコートに立つことはできなかった。ヨーロッパで数年プレーした後、大学で得た経営学の学位を生かしてメリルリンチの株式トレーダーとして働くも、バスケへの情熱を捨てきれずに大学バスケ部に戻り、ほどなくしてマイク・ブーデンフォルツァーのアシスタントコーチとしてホークスに加わった。

ブーデンフォルツァーがグレッグ・ポポビッチのアシスタントコーチとして働いていた時期に2人は知り合い、当時からブーデンフォルツァーはリーの賢さと勤勉さ、コミュニケーション能力を評価していたという。2人はバックスに移ってNBA優勝を勝ち取り、ブーデンフォルツァーが解任された昨年オフにリーはセルティックスへと移り、そこで彼にとって2度目のNBA優勝を勝ち取った。

テリー・ストッツ解任でトレイルブレイザーズ指揮官が空席になった2021年オフから、多くのチームでヘッドコーチ交代の際に『有力候補』としてリーの名前が挙がった。「何度もノーと言われてガッカリしたのは確かだが、アシスタントコーチとしての経験が私を成長させてくれた。そこで学んだのは、成功するには互いに高め合うような人間関係とチームワーク、明確な目標を定めて日々努力する姿勢が不可欠だということだ」とリーは語る。

新たな指揮官を見つめる若い選手たちの目を見れば、人間関係とチームワークはすでに出来上がりつつあるようだ。では『明確な目標』はどう定めるのだろうか。「すべての試合を全力で戦うことだ」とリーは言う。「しっかりとした準備をして試合に臨み、正しいプレーをし、必要なプレーを行う。勝敗にかかわらず、学ぶ機会を活用し、成長する」

2021年のバックスと今年のセルティックス。優勝したチームに共通するのは「チームがどんな状況にあれ、選手たちが前向きに仕事に来て楽しく過ごす雰囲気があったこと。スタッフも選手も一緒に戦う一体感があった」と言い、「それをホーネッツにも持ち込みたい」と語る。

『勝敗よりも正しいプレーを行うこと』と『成長すること』をテーマに掲げるが、最終目標はホーネッツを強豪へと引き上げることだ。「フロントの誰もがこのチームを強くしたいと本気で考えている。そしてノースカロライナ州には熱狂的なファンがいる。その2つが私の覚悟を作ってくれた。私はヘッドコーチとして、このチームが高い競争力を持つと約束する。一体感があり、日々努力を欠かさないチームになってみせるよ」

ホーネッツは2015-16シーズンを最後にプレーオフから遠ざかっている。その後の8シーズン、勝率5割を超えたのは1回のみ。毎年のように大量のケガ人を出し、シーズン途中には戦うのをやめてしまう悪い流れを、若き指揮官リーは断ち切ることができるだろうか。