文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

ピットマンがゴール下を制し、富山が主導権を握る

5連敗中でリーグ最下位に沈む富山グラウジーズが、前節アルバルク東京との地区首位決戦を制し7連勝と波に乗る栃木ブレックスと対戦した。

立ち上がりにペースをつかんだのは外国籍選手オン・ザ・コート数で上回る富山だった。デクスター・ピットマンを使ったインサイド攻めを徹底。ライアン・ロシターをパワーで圧倒するピットマンは先制点を奪い、次の攻めではダブルチームで止められたが、その次はバスケット・カウントをもぎ取った。こうしてピットマンに相手の意識を集めたところでドリュー・ヴァイニーがドライブレイアップを決めて7-2。試合開始から3分を待たずして栃木にタイムアウトを使わせた。

タイムアウト後もヴァイニーが3ポイントシュートとミドルシュートを立て続けに決め、富山の勢いはさらに増す。一方、後手に回った栃木は田臥勇太から渡邉裕規へと司令塔を交代させるも、悪い流れを変えられない。

ピットマンは決して得意ではないペイント外のジャンプシュートも含め、決めれば決めるほど調子を上げ、守備でもリバウンドで存在感を発揮する。第1クォーターを終えて25-15と富山がリード。栃木はエースのロシターが無得点と抑えられる中、遠藤祐亮が粘り強く8得点を挙げて何とか食らい付いた。

外国籍選手オン・ザ・コートで栃木が「2」、富山が「1」となる第2クォーター、パワーではピットマンにも負けないジェフ・ギブスのインサイドを軸に今度は栃木の時間帯に。富山は激しい守備で抵抗するも、5分以上を残してチームファウルが5に。残り3分39秒、遠藤に3ポイントシュートを決められ33-35と逆転を許した。

だが、この第2クォーター終盤に富山は反攻に出る。ピットマン主体の攻めから一転、素早いトランジションで栃木を飲み込んだ。10-0のランで一気に試合をひっくり返す。栃木は序盤の激しいぶつかり合いですっかりリズムの狂ったロシターが前半を終えて無得点。これでは栃木に勢いは出ない。

リズムに乗れない栃木、ゾーンディフェンスを攻略できず

第3クォーター、立ち上がりこそゾーンディフェンスからの速攻でイージーシュートを決める富山が栃木を上回るが、それでも緩急のメリハリが効いた田臥のプレーメークから栃木が本来のバスケを取り戻すと、一気の猛反撃を浴びて逆転を許した。

栃木が立ち直った以上、このまま一気に流れを持っていかれてもおかしくなかったが、富山は集中を切らすことなく一進一退の攻防に持ち込む。そして第4クォーター中盤、富山が抜け出す。ここで大きな働きをしたのはヴァイニーだった。

ヴァイニーはスピーディーな攻防にしっかりと足をつかって対応し、スティールから城宝匡史の速攻を演出。第3クォーター残り6分9秒にはファウルを受けつつ3ポイントシュートを沈め、フリースローも決める4点プレーで72-66と突き放す。さらには宇都直輝が落としたレイアップをフォローして得点につなげるなど、勝負どころで存在感を見せた。

そしてケガで3試合の欠場から戦線復帰を果たした城宝匡史も、要所でビッグショットを沈めていく。栃木に流れが行きそうな場面も何度かあったが、そのたびにヴァイニーや城宝が重みのある得点を挙げて、主導権を渡さなかった。

栃木は第4クォーターになって、頼みのロシターが当たりを取り戻すが、富山のゾーンディフェンスを最後まで攻略できず、インサイドを使った攻めがなかなか形にならない。

逆に富山は終盤になってもスピードの落ちない宇都がオフェンスを引っ張り、ヴァイニーが自らのシュートミスを拾って押し込めば、宇都のシュートがこぼれたところをピットマンが押し込むなど、最後まで勢いが持続。もはや栃木に押し返す力は残っておらず、91-81で富山が勝利した。

35分の出場で1本もシュートのない小原を指揮官が称賛

富山の第一の勝因は、ピットマンがロシターとのマッチアップで圧倒し、一番の脅威を封じたこと。もちろん、要所で効果的な働きを見せたヴァイニー、トランジションバスケットを引っ張った宇都、ビッグショットを決め続け復帰戦で25得点を挙げた城宝の働きも見逃せない。

だが、ヘッドコーチのボブ・ナッシュがわざわざ名前を挙げて称賛したのは特別指定選手の小原翼だった。「数字にはそれほど表れていないが、大きな身体を有効に使った守りで、チームのディフェンスをより有力なものにしてくれた」

富山で3試合目の出場となった小原は、31分半のプレータイムを得た。そのすべてが我慢の時間帯だったと言っていい。これだけコートに立って得点はゼロ、それどころかシュート試投数もゼロ。それでも今日のポイントとなったゾーンディフェンスを忠実に遂行し続けた。守備に重点を置く小原のプレーによりヴァイニーが自由に動くことができた点も大きく、身体を張ってチームに貢献したと言える。

敗れた栃木としては、収穫を見つけるのが難しい試合となった。遠藤は序盤こそ突出したパフォーマンスを見せたが、それも後半には尻すぼみに。攻めも守りも全体的にソフトで、いつものエネルギーが見られなかった。また、何度かリードを奪ったが、そのリードを保つことができず。この点も、いつもの試合巧者の姿ではなかった。

指揮官のトーマス・ウィスマンは「屈辱的な敗戦になった。優勝を目指すチームがカンファレンス最下位のチームに負けることは許されない」と語る。「今日の敗戦は、このチームで戦ってきて最もひどい敗戦。これを明日の試合に生かし、明日は良いパフォーマンスをしなければならない」

明日も鹿沼総合体育館フォレストアリーナにて、16時より試合が行われる。