岸本隆一

文・写真=鈴木栄一

勝負どころで岸本隆一が期待に応える活躍

3月9日、琉球ゴールデンキングスがホームで富山グラウジーズと対戦。序盤から一進一退の競り合いとなったが、最後までディフェンスで崩れなかった琉球が72-69で激闘を制した。

琉球は富山のインサイドの要ジョシュア・スミスに対し、ケビン・ジョーンズが「できるだけ早くトラップに行き、彼がボールを離すようにさせることを意識した」と語ったように徹底マーク。ゴール下でスミスにパスが入ったらダブルチームを積極的に仕掛け、彼がシュートを試みる回数自体を少なくさせた。

この作戦がうまく行きスミスを10得点に封じるが、一方で富山はスミスに寄ることで生まれたスペースをもう一人の得点源であるレオ・ライオンズが突き、ゴール下への鋭いアタックで得点を重ねていく。ただ、前半は3ポイントシュートを筆頭に外角シュートを効果的に沈めた琉球が40-34とリードを奪った。

しかし、第3クォーター開始から、富山がライオンズの3ポイントシュート、宇都直輝の速攻から得たフリースローなど怒涛の10連続得点を記録。逆に琉球は、「オフェンスは前半ゲームプラン通りでしたが、第3クォーターになってガードがうまくコントロールできなくなった」と佐々宜央ヘッドコーチが振り返るチグハグさが出て、後半開始4分半は無得点と失速。流れに乗った富山に逆転を許す。

それでも琉球は残り4分、須田侑太郎がシュートファウルを受けながら3ポイントシュートを沈める4ポイントプレーを成立させる。この会場が大きく沸くビッグプレーで雰囲気を変ると、オフェンスリバウンドからのセカンドチャンスで得点を奪うなど攻勢に出るが、富山もベテランの山田大治の外角シュートなど踏ん張りを見せた。

富山の1点リードで突入した第4クォーターは互いに決め手を欠き、残り2分20秒で67-67とともに譲らない。しかし残り1分、タイムアウト明けのオフェンスで琉球は「今日の彼はやってやろうという気持ちが顔に出ていました」と指揮官がシュートを託した岸本隆一が期待に応えてこの勝負どころで得意の3ポイントシュートを決める。

その後、富山も大塚裕土のフリースローで1点差に詰め寄るが、直後のプレーで琉球は岸本が今度はゴール下に切れ込んでファウルを獲得。これを2本しっかり決めると、3点を追う富山はこの日24得点のライオンズが3ポイントシュートを放つが決まらず。そのまま試合終了のブザーがなった。

橋本竜馬

「我慢比べに勝つには、最後のところでミスをしないこと」

琉球は、中心選手の古川孝敏が練習中の負傷により欠場。さらに故障中の並里成も約6分の出場とプレータイムを制限せざるを得ない苦しい状況だった。佐々ヘッドコーチは「負けてもおかしくないゲームでしたが、1試合を通して見ると僕らのディフェンスが相手に勝った」と守備での勝利を総括した。

2019年となってから琉球は、外国籍選手が故障で揃わないマイナス面を抱え、ここ一番で失速して接戦を落とす試合を続けていた。それだけに、こうやって競り合いを制したことの意味は大きい。その理由を橋本竜馬は次のように語る。

「我慢比べに勝つには、最後のところでミスをしないこと。オフェンスでは自分たちのプレーで終わって、ディフェンスをしっかり締めることです。強いチームはそれができています。今日の試合は最後に、全員が何をしないといけないか、何をしてはいけないか分かっていた。こういう僅差の試合を勝っていくことはチャンピオンシップに繋がっていくと思います」

この勝利の価値は、連勝することでより大きなものとなる。そのためには「あともう少しのところでミスが出てしまう。今日は30分くらい良いバスケットをしましたが、試合は40分です。負けたゲームの後、相手はさらに燃えてくるので、僕らもさらにエナジーを出していかないといけない」と佐々ヘッドコーチが語るように、40分間を通して自分たちの激しいバスケットボールを貫くことが何よりも大切となってくる。