ジェイソン・テイタム

明日の第5戦に向けて「楽しむことに立ち返ろう」

カイリー・アービングはボストンでのNBAファイナル第5戦を前に、かつて自分がセルティックスに所属していた時の立ち居振る舞いについ語った。古豪セルティックスは他のチームと違って勝利の歴史と伝統がある。彼はそれにさほど注意を払わず、その姿勢はファンから「敬意を欠いている」と見られた。

「悪意があったわけじゃなく、若かっただけ」とカイリーは言う。「ボストンには長年かけて築き上げられた勝者の血統がある。それには敬意を表さなければいけない。そうでなければチームから追い出される。僕も追い出された一人だ」

ジェイレン・ブラウンとジェイソン・テイタムは、そんなカイリーとは対照的なキャリアをセルティックスで過ごしている。いずれも1巡目3位指名でセルティックスに指名されてNBAデビューを果たし、リーグを代表するトップ選手となった。ブラウンは8年目、テイタムは7年目。彼らは若くてもセルティックスの歴史を学び、文化を尊重しながらキャリアを重ねてきた。

「セルティックスのユニフォームを着てプレーするのは間違いなく恵まれていることだ」とブラウンは言う。「これは決して軽視すべきではない名誉だ。僕は18歳か19歳の頃からここに来て、もう9年近くを過ごしている。だからボストンは特別な場所だ」

そしてテイタムは、セルティックスでプレーする意味をこう語る。「例えば自動車で出掛けてガソリンスタンドに寄った時、アイスクリームを買いに行った時、あちこちでセルティックスのグッズを目にする。誰もがこのチームに注目し、期待しているのを感じ、どれだけ愛されているのかが分かる。それはプレッシャーじゃない。ただ無条件で応援されているだけだ」

第5戦を明日に控えてテイタムは饒舌だった。「普通だとドラフトで5位以内で指名される選手は再建中のチームに行くよね。でも僕は第1シードのチームに指名された。ドラフト同期の選手から『15連敗中でさ』なんて話を聞いたけど、僕らは優勝を目指して戦っていたし、今もそうだ」

これが、テイタムがセルティックスに感じる感謝であり、誇りだ。「どのチームも同じ立場というわけじゃない。僕は幸運にも、これまで最高の選手たちがプレーした特別なチームの一員になれた。それは名誉なことだし、それが僕がこの街とチームに対して抱く気持ちなんだ」

そして彼が例として挙げたのは、セドリック・マックスウェルという名前だった。1980年代のセルティックスで2度の優勝に貢献した往年の名選手であり、セルティックスの31番は彼のために永久欠番になっている。ただ、この時期のセルティックスと言えばラリー・バードであり、ケビン・マクヘイルとロバート・パリッシュを加えた『ビッグ3』だ。

しかし、セルティックスの文化をリスペクトするのであれば、マックスウェルは『履修済み』でなければいけない。テイタムはルーキー時代を笑いながらこう振り返る。「1年目の僕はマックスウェルが誰か知らなかった。セルティックスでプレーして、ファイナルMVPを獲得したとは知らず、ラジオのMCかなんかだと思っていた。1年かけて僕はセルティックスの歴史を学び、それで初めてセルティックスがバスケ界にどれだけ影響を与えたかを理解できた」

偉大な歴史の上に立っているからこそ、彼らに慢心はない。その誇りに懸けて、セルティックスの歴史に18回目の優勝をもたらそうとしている。テイタムは「楽しむことに立ち返ろう、と今日はみんなで話し合った。ここまで来たチームとして、自分たちがどれだけ特別な存在かを感じるんだ」と言う。そしてブラウンはこう語った。「目標を成し遂げるまであと一歩だから、みんなの気持ちを一つにするのは難しくない。ただ忘れちゃいけないのは、一つひとつのポゼッションが大事だということ。みんなで力を合わせ、命懸けで戦う。きっと上手くいくと確信しているよ」