ダンテ・エクサム

「僕が最も大事にしているのはチームの勢い」

スウィープ負けの危機に瀕したマーベリックスは、NBAファイナル第4戦にして122-84の快勝を収めた。これまでルカ・ドンチッチの負担が高く、彼がトリプル・ダブルを記録してもチームの勢いに繋がらない苦しい展開が続いていたが、この試合ではロールプレーヤーの活躍が目立った。

ドンチッチの負担を減らす意味で最も大きかったのが、ダンテ・エクサムの活躍だ。ヨーロッパで2年間を過ごした後、マブスと契約してNBA復帰を果たした彼は、ドンチッチとカイリー・アービングに続く第3のプレーメーカーとなった。

ドンチッチもカイリーも速いテンポを作り出すポイントガードではない。エクサムのボールプッシュはマブスの攻撃に良質なアクセントをもたらした。ただ、守備が強調されてテンポの落ちるプレーオフではドンチッチとカイリーの個人技がフォーカスされ、2人以上にサイズがなくて守れないエクサムの出番は激減してしまった。

だが、NBAファイナルで敗退の危機に瀕した時に、他の多くのロールプレーヤーとともにエクサムも出場機会を取り戻し、気合いのこもったプレーでマブスを救った。14分の出場で10得点2リバウンド。決して長いプレータイムを得たわけではないが、限られた時間でチームに+15のリードをもたらした。

プレーメーカーが選択するプレーが文字通りチームのプレーを作り出す。「それは伝染するんだ。僕がコートに入ってテンポを押し上げれば、みんなそれに乗って自分のレーンを走り始める。ディフェンスで相手を止めれば、それもまた自分たちの勢いになる」とエクサムは言う。「僕が最も大事にしているのはチームの勢いで、得点が決まれば大きな声を出して『よし、行こう』と仲間たちを鼓舞し、その時間帯をもっと盛り上げようとする。シーズンを通して物事が上手くいかない時期も、下を向くことなく『さあ次だ』と切り替えてきた。今回はそれを取り戻せたと思う」

出番がなくともエクサムは腐ることなく、いずれ来るであろうチャンスに備えた。「それは僕だけじゃなく、このチーム全員に言えることだ」と彼は言う。「良い時期もあれば悪い時期もあるけど、僕ら全員が練習場で自分たちのスキルを磨き、身体を鍛えてシューティングをしてきた。出場機会が少なければ練習量を増やす。みんなそうやっているんだ」

チームを引っ張るドンチッチとカイリーがギリギリまで自分を追い込み、重圧に耐えてプレーしているからこそ、ロールプレーヤーの彼らも準備を怠らない。「僕が投入されてすぐ、(ジェイソン)テイタムか(ジェイレン)ブラウンのどちらかをマークしなきゃいけないと思っていたら、カイリーが来て『それは俺がやるから大丈夫』と言ってくれた。それで僕は前からプレッシャーを掛けた。カイリーが自分から困難なチャレンジを受け入れることは、僕らにとって非常に大きな意味のあることなんだ」

エクサムは優れたプレーメーカーだが、オールラウンダーではない。必要ならどんな役割もこなす覚悟があるが、得意なことをするべきだ。カイリーはそう考えてブラウンのマークを買って出て、エクサムにペースを上げる役割に集中させた。それがエクサムの活躍を引き出し、マブスの勢いに繋がった。

「ずっと良い時期なんてあり得ない。常に浮き沈みはあるけど、自分たちに何ができて、どうすべきかは分かっている」とエクサムは語る。「自分たちに忠実で、前向きな姿勢を貫く。そうやって1試合ずつ戦っていくだけさ」