デレック・ライブリー二世

母の死を乗り越え「母さんが望むならそうする」

試合後の会見でルカ・ドンチッチはデレック・ライブリー二世について、こうジョークを飛ばした。「2本中1本だから50%だよね。もっともっと打ってもらわないと」

ここまでセルティックスが3連勝と優位にあったNBAファイナル、第4戦でゲームチェンジャーとなったのはルーキーのセンター、ライブリー二世だった。ベンチから出るとタフに身体を張ってリムを守り、バネのある動きでリバウンドを確保し、鮮やかなアリウープのフィニッシャーと『らしい』プレーを連発。ただ、3ポイントシュートは誰も予想していなかった。

第1クォーター残り6分、ドンチッチはゼイビアー・ティルマンSr.をドライブで攻め、ライブリー二世を守っていたジェイソン・テイタムがヘルプに寄ると右のコーナーへとボールを送った。ライブリー二世は迷わずキャッチ&シュートを放ち、これを沈める。驚くべきことに、これは彼にとってNBAで初めて成功させた3ポイントシュートだった。しかも、プレーオフ20試合目にして初めて放った3ポイントシュート。レギュラーシーズンを通しても2本しか放っていない。ドンチッチはこれを間違えて「2本中1本だから50%」と話したのだが、ともかく予想外のところからビッグショットが生まれた。

それだけではない。その直後のディフェンスではティルマンSr.のシュートをブロックし、そこから反撃に転じてカイリー・アービングのロブを空中でつかんでアリウープを叩き込んだ。マブスの勢いをどんどん加速させる彼のハッスルはその後も止まらない。攻守に暴れまくって11得点12リバウンドのダブル・ダブルを記録。圧勝の展開だったため22分しか出場する必要がなく、第3クォーター終盤にドンチッチとカイリーとともにベンチに下がった。

試合後の会見でライブリー二世は、この素晴らしいパフォーマンスを「母さんのためにやったことだ」と語る。「僕がここまで来れたのは母さんのおかげ。これからもっと多くのことを成し遂げるつもりだ」

20歳のライブリー二世は、プレーオフが始まる直前に最愛の母を癌で亡くしている。メディアで発言するたびに、彼は母の死に触れ、まだ寂しさから抜け出せないと繰り返してきた。「最期の時まで母さんは気丈に振る舞い、『私は大丈夫だから頑張れ』と言ってくれた。だから僕は前に進まなきゃいけない。気持ちはぐちゃぐちゃで、何もなかったように振る舞うことはできないけど、母さんが望むならそうするんだ」

そして周囲を驚かせた3ポイントシュートについて「ルカがあそこでパスを出してくれたのがとにかくうれしい」と言う。「ちゃんと決められて良かった。相手は僕がコーナーにいても警戒しないけど、目を覚まさせてやらないと。次も決められるよう頑張るよ」

0勝3敗と土壇場からの1勝に「死ぬこと以外、何があっても強くなれる。何度殴られ、何度倒されてもいい。倒された時より強くなって起き上がり、殴られた時より強い力で殴り返す。先手を取るのは大事だといつも言うけど、本当に大事なのは殴られた時に屈してしまうか、殴り返すかだ」

コート上での彼らはNBAファイナルでの勝利を大いに喜んだが、ロッカールームの雰囲気はそうではなかったとライブリー二世は言う。「さほど喜んではいなかったよ。もちろん勝ててうれしいけど、飛び跳ねて喜ぶほどじゃなかった。僕らは優勝するために戦っている。そのために必要なことをしただけだ。次はまた敵地での試合だ。また今日みたいな戦いができるようアジャストしていくよ」