デリック・ホワイト

「これこそ子供の頃に夢見たシーンだよね」

ニックスのジョシュ・ハートは、ポッドキャスト番組『The Pivot』でNBAファイナルに進出したセルティックスについて語る際、「デリック・ホワイトが試合にもたらずインパクトはジェイソン・テイタムと同じかそれ以上かもしれない」と語った。「ビッグプレーのほぼすべてに絡み、コート上のあらゆる役割を高いレベルでこなしている」

この発言がSNSではホワイトへの称賛ではなくテイタムへの低評価と受け止められ、ハートは「JT(テイタム)が大したことのない選手だというストーリーに僕はかかわっていない。誰かを称賛することが他の誰かをけなすことには繋がらない」と釈明する羽目になった。

東カンファレンスでセルティックスが圧倒的な強さを見せているからこそ、そのエースであるテイタムとジェイレン・ブラウンが『真のスーパースター』であるかどうかが議論の対象となる。ただ、人々の関心はなかなかホワイトの正当な評価には向かない。

ホワイトはオールディフェンシブのセカンドチームに入ったが、オールNBA入りが議論されるような選手ではない。彼自身が自分を華やかなスター選手だとはとらえていない。大学はNCAAディビジョン2からのスタートで、転校してディビジョン1でプレー。2017年のNBAドラフトでスパーズに1巡目29位で指名されたが、1年目はGリーグが主戦場だった。当時のスパーズはピークは過ぎていたものの強豪の地位を保っており、カワイ・レナードはほとんどプレーしていなかったが、パウ・ガソル、マヌ・ジノビリ、トニー・パーカー、ラマーカス・オルドリッジ、ダニー・グリーンが活躍していた。『期待の若手』という立場でもなかったホワイトは、自分で役割を探し、それを必死でこなすことでNBAで生き残っていかなければならなかった。

2021-22シーズン途中にセルティックスに移籍して3年目の今、ホワイトは不動のスタメンに定着し、今回のプレーオフではゲームウィナーを決めるような派手な役割も演じた。それでも彼自身のメンタリティはロールプレーヤーのままで、自分がチームに貢献する方法は何かを探し続けている。NBAファイナルでの役割は、ルカ・ドンチッチとカイリー・アービングを抑えることだ。

「完全にタイプは違うけど、2人ともNBAで最高のガードだ。フィジカルが強みのルカと創造性のあるカイリーに対して、ウチはいろんな選手を送り込んで止めに行く。僕にとっても楽しみなマッチアップになる」とホワイトは語る。

「彼らがすごい選手なのは分かっている。そう簡単には止められないからこそ、厳しいシチュエーションを作ってタフショットを打たせなきゃいけない。タフショットでも3本、4本、5本と連続して決めてくるような相手だけど、そんな時でもゲームプランを信じ続けることで、最終的には良い結果が出ると信じている」

NBAファイナルの第1戦が行われるのは現地6月6日。まだしばらく先だからか、もともとの性格だからか、ホワイトは大一番を前にしてもプレッシャーを感じることなく、挑戦することを楽しみにしている。「難しい役割だけど、それが今のNBAでガードとしてプレーする楽しさだ。ルカとカイリーは間違いなくNBAのトップクラスで、そんな選手とNBAファイナルという大舞台で対峙する。これこそ子供の頃に夢見たシーンだよね」

「すごく重要だし、シリアスになるべき局面だけど、笑顔でいられる喜び、楽しむことのできる喜びもある。ここでバスケができるのはいつだって最高の喜びなんだ。僕はただそれを楽しみ続けたい」