破竹の勢いのハーデンとウェストブルックがMVPの本命
例年、NBAオールスターの時期ともなればシーズンMVPレースの行方もだいたい見えてくるもの。しかし、今シーズンに限っては誰が受賞するのか予想ができない。
個人スタッツだけを見れば、平均31.1得点、10.5リバウンド、10.1アシストの『平均トリプル・ダブル』を維持しているサンダーのラッセル・ウェストブルックが最有力となるが、個人成績に加えてチームをどれだけ勝たせられるかという要素もMVP獲得には不可欠。
その点で言えば、サンダーは32勝25敗で西カンファレンス7位と苦戦しており、ウェストブルックにとっては不利。彼のキャリア初MVP受賞が実現するかどうかは、もはや『平均トリプル・ダブル』を維持できるかよりも、後半戦でどれだけ順位を上げられるかにかかっていると言えるだろう。
かと言って、必ず1位のチームからMVPが選出されるとは限らない。ここ2年連続シーズンMVPを受賞しているステフィン・カリーは、ケビン・デュラントの加入に伴いシュート数が減少。年明けからようやく共存方法を見いだし、1試合平均20点台後半という数字が出るようになった。チームはNBA最多の47勝9敗という成績を残しているものの、『自己犠牲』により今シーズンのMVPレースから一歩後退した感は否めない。
ウェストブルック、カリー、デュラント、あるいはキャバリアーズのレブロン・ジェームズもMVP候補に挙がる中、本命候補はロケッツのジェームズ・ハーデンという意見が少なくない。
今シーズンは29.2得点、8.3リバウンド、11.3アシストでキャリアハイを記録しているハーデンは、ロケッツを西カンファレンスの3位に押し上げている。本人もNBAベストプレーヤーという意識を持ち、『Time』に次のように語っている。
「自分はあらゆる面で高いレベルにあると思っている。バスケットボールIQ、バスケットボールに対する勤勉な姿勢、得点力、チームメートの力を生かす能力……」
ハーデンは続ける。「多くの選手が素晴らしい能力を備えている。身体能力が抜きん出ている選手もいれば、シュート力が桁外れな選手もいる。俺を見て、皆がこう思うだろうね。『すべてを兼ね備えた選手がいたのか!』とね」
「最高の選手は誰かと聞けば、みんな『俺だよ』と答える」
自分の能力とここまでのパフォーマンスを自画自賛するハーデンだが、ジェームズ、カリー、ウェストブルック、デュラントといった、MVPを争うライバルの力を軽視しているわけではない。
「彼らを含めてトッププレーヤーと呼ばれる選手に、『最高の選手は誰だと思う?』と聞いてみればいい。みんな『俺だよ』と答えるはずだ。誰かを軽視しているわけではない。単純に、みんな自分に自信があるからそう答えるんだよ」
2015年12月、『Time』はカリーにも同じ質問を投げかけている。その時カリーは「確かにベストプレーヤーは自分だと思っているよ。毎試合でハイレベルなパフォーマンスができるという自信があるからね」
「ただ、他の選手と自分を比較して、誰かと口論するようなことは絶対にしない。自分が考えるレベルでプレーしようと努力している選手で、コートに立っている時に自分がベストと思っていないのなら、それはダメだ。自分の努力を自分が裏切っているのと同じだからね」
もしハーデンが前半戦と同じペースで後半戦も乗り切った場合、NBA史上オスカー・ロバートソン以来2人目の年間29得点、11アシスト、8リバウンド以上という個人成績を残す可能性が高い。
個人スタッツがキャリアハイ、NBA史上に残る快挙を達成し、さらにチームの成績も伴うとなれば、ハーデンがMVPレースで頭一つ抜け出ているという意見は正しい。もし、ロバートソン以来となる『年間トリプル・ダブル』という歴史的快挙をウェストブルックが達成した場合、シーズンMVPを決める投票権を持つメディア関係者は、オールスター投票の時と同様に頭を抱えることになる。
後半戦の争いもさることながら、MVPレースからも目が離せなくなりそうだ。