テーブス海

「この1年間の経験は自分にとって本当に大きいです」

アルバルク東京は、チャンピオンシップ(CS)クォーターファイナルで琉球ゴールデンキングスと対戦。勝者がセミファイナル進出となる第3戦は一進一退の攻防を繰り返す激闘となったが、57-58で敗れてシーズンが終了した。

今シーズンのA東京は、4812敗とレギュラーシーズンでのBリーグチーム最多勝利を記録。2年目となるデイニアス・アドマイティスヘッドコーチ体制で戦術がより浸透したことに加え、ブラジル代表のレオナルド・メインデル、日本代表のテーブス海ら新戦力もフィットして順調に白星を重ねた。優勝しても驚きのない戦力と充実した戦いを見せていたが、CSは敗れた2試合はともに1点差と、文字通り紙一重の差で散ってしまった。

テーブスはレギュラーシーズン60試合、CS3試合すべてに先発出場と、中心メンバーとして奮闘した。CS第3戦でも3311秒とフル稼働した司令塔は終了後、次のようにシーズンを振り返った。

「ものすごくタフな3試合で、チームとして最後の最後まで全力で戦いました。自分たちの目指しているところには届かなかったですが、昨シーズンの王者と第3戦の最後までわからない状況に持ち込むところまで戦えたのは、間違いなくチームの成長です。本当に悔しいです。ありきたりな言葉ですけど、次につなげていきたいです」

滋賀レイクスから移籍したテーブスは今シーズン、リーグ屈指の強豪・A東京の不動の司令塔として大きなステップアップを遂げた。

「このチームでスタートをやらせていただいて、シュート成功率、アシストとターンオーバーの比率、ゲームコントロール、ディフェンスとすべてで成長することができました。この1年間の経験は自分にとって本当に大きいです」。テーブスはこのように自身の成長に手応えを感じるが、一方で頂点にチームを導くことができなかった悔しさは大きい。

CSの大舞台でチームに勝利を届けられる選手になるには、何が足りなかったのかとの問いに対し、テーブスは「多分、進んでいる方向性は間違っていないですけど、やっぱり経験は本当に大きいと思います」と語り、自身が歩んでいくべき成長へのロードマップを次のように考えていると明かした。

「『何かこれをもっと良くしたら勝てる』というのは正直ないです。すべての試合で状況は違ってくるものです。その中で、ポイントガードとして、ここ一番では自分でシュートを決める、アシストをする、プレーコールをするなどいろいろな選択肢があります。自分はどの選択肢が必要になってもしっかりと応えられるガードになりたい。それが僕のスタイルで、一番合っていると思います」

テーブス海

「必ずステップアップして次は優勝できるように」

勝負どころにおいて、適切なプレー選択をすることを大切にするテーブスが、第3戦の最も重要な場面で選んだのはパスだった。1点を追う残り22秒からのオフェンスにおいて、テーブスはライアン・ロシターとのピック&ロールからロシターにパス。ロシターは彼の十八番であるミドルレンジからのフローターを放ったが、惜しくも外れた。テーブスはこのプレーについて、「チームとして1番打ちたいシュートでした」と後悔はまったくなかったと強調する。

「僕はライアンがあのシュートを決めているのを何千回も見ているので、絶対に入ると思っていました。あのシュートが外れて、何1つ思うことはないです。もし、来シーズンも同じ場面になって、何を選ぶかといったらライアンとのピック&ロールです。このプレーをもっと極めていきたいです」

A東京での1年目でテーブスは収穫も課題も様々なモノを得た。この充実したシーズンを最後に総括してもらうと、彼から真っ先に出てきた言葉は「感謝」だった。

「自分は(2シーズン前まで所属した)宇都宮ブレックスではメインのガードではなく、滋賀では結果を残せていなかった。なんなら『何もしていない選手』に先発ポイントガードを託してくれた感謝の気持ちをずっと持っていました。だからこそ全試合に出て全力でやりたいと思いました。楽しくチャレンジもできてファンの方々、クラブ側、コーチ、スタッフみんなに感謝しています。残念ながら優勝できなかったので本当に責任も感じています。必ずステップアップして次は優勝できるように頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いします」

この取材中、テーブスは何度も「この経験を次につなげなければ」と語っていた。気持ちを整理するのも難しい激闘に敗れた直後にもかかわらず、彼のリベンジへの熱い炎はすでに燃え始めていた。