新しい三河を作る鈴木貴美一の苦しみと喜び(後編)「今のチームには練習が必要」

2019/03/02
Bリーグ&国内
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鈴木貴美一

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE、黒川真衣

シーホース三河は22勝18敗で代表ウィークによる中断期間を迎えている。ポイントガードの橋本竜馬、エースの比江島慎がチームを去り、大幅な変更を強いられたシーズンは開幕5連敗と波乱のスタート。地区トップに立つことが当たり前の三河にとっては、初めてとも言える苦しい展開となった。それでもレギュラーシーズンの3分の2を消化した時点で、チームは勝ったり負けたりを繰り返しながらも、新しい『常勝チーム』の形を見せつつある。鈴木貴美一ヘッドコーチに、今シーズンのここまでと、これからを語ってもらった。

「僕は能代出身、走るバスケットは得意分野です」

──ここに来て新しいチームの輪郭が見えてきた印象があります。手応えは感じますか?

これだけ早い時期に機動力のあるバスケットに変わるとは思っていませんでした。今まではポイントガードの橋本くんがスピードのあるタイプではなかったし、ジェイアールもベテランで、どちらかと言えばハーフコートに頼らなきゃいけないバスケットでした。それが生原くんが元気で熊谷くんは速いし、岡田くんも走るチャンスがあれば行きます。機動力のある、動きのあるバスケットに変化しつつあります。

三河はハーフコートのバスケットだというイメージがあると思いますが、僕はもともと能代工業の出身で、走るバスケットは得意分野です。秋田経法大ではフルコートプレスのバスケットだったんですよ。チームにいる選手に合わせたバスケットをやりますが、今はそれが機動力のあるバスケットになってきた。うまく行かない時はジェイアールに頼るけれど、ハイピックを使って攻められる選手が入ってきた。練習でやらなければいけないことがたくさんあって大変ですが、非常に楽しみなチームだと僕も思っています。

──このシーズン中断期間もオフではなく練習ですか?

若手は一日も休みなしで、秋田戦の翌日から自主トレをやっています。外国籍選手はホームシックになってしまうといけないので一度帰らせて、チームのことはできなくなりますが、休みにはしていなくて自主トレで毎日練習です。

今シーズンに伸びるところまで伸ばしたいから、一日も無駄にできません。だから遠征の時も休みなしです。強いチームは遊びません。今シーズンも土日に試合をしたら月火と練習、水曜に試合をやって木金が練習です。練習を軽くする日はありますが、今のチームには何にしても練習が絶対に必要だと思っています。ちょっとジェイアールは大変でしょうけど、ゲームで調整します。大変ですが、楽しみ。それは実はファンの人たちと同じように僕にもあるんです。

つらいことも多いですよ。今までは長年やった経験があるので、簡単な指示を出せば思い通りのバスケットをやってくれました。それを一つひとつやらなきゃいけない。だけど楽しみです。このブレイクにどういう練習をするか計画を立てて、どう伸ばしていくか。できる限り伸ばせるように努力する。大変ですけど、非常にやりがいがあります。

鈴木貴美一

「今このメンバーが育っていることがうれしい」

──来シーズンのチーム構想も、今のチーム作りと並行して進めているわけですね。

今シーズンとは全く違ったものに変わると思います。ただ、まだ何も決まっていなくて、構想を練っているだけですね。橋本くんと比江島くんについては、2人とも本当に悩んだ末の決断だと思います。噂には聞いていましたが、僕としてはこうなるとは思っておらず、何の準備もしていませんでした。普通は先発のガードを引き抜かれて、すぐに代わりのガードは取れません。たまたま生原くんが加入することになり、岡田くん、熊谷くんも来てくれました。

このメンバーで足りないところを1ピースか2ピース加えたいです。3位とか4位争いをしている現状は、正直に言って「嘘でしょ、うーん」という感じです。これまでは選手補強にしても、ウチに来たいと言ってくれる選手をうまく取っていただけで、ちょっと勝負に対してのこだわりが足りないんじゃないかと自分自身に問いかけました。

勝負にこだわってさらに上を目指すには何が必要なのか。これまでレギュラーシーズンはずっと1位で来たので、あまりキツいことはやってきませんでしたが、勝負ですから今年は動いてみたいと思います。

そういった先のことも考えながら指導していますが、とにかく今このメンバーが育っていることがうれしいです。

鈴木貴美一

「地区3位ですが、優勝しか狙っていません」

──日々の練習を重視してチームを作っているのは分かりました。順調に伸びて来てはいますが、あとは時間との戦いですね。

ハーフコートに磨きをかけたバスケットから、走ってハイスコアのバスケットに変わろうとしているのが今で、まだミスしてやられることもあります。でも、乗っている時は機動力のあるバスケットができます。

──チームを作り返るシーズンではあっても、目標はあくまで優勝ですか?

もちろんです。僕は優勝できなかったら2位でも8位でも同じ、という考えです。例えばギリギリでチャンピオンシップに進出することになっても、本当に優勝できる力があればレギュラーシーズン勝率1位のチームに勝てるはずです。

逆に勝率1位でも、チャンピオンシップで勝てなければ優勝できる力がなかったということ。昨シーズンは延長で2回負けて、一昨年は勝てる場面でターンオーバーをやってしまい負けました。その前はジェイアールが肩を痛めて崩れてしまった。3年も連続で運がない負け方を経験しましたが、やっぱり力が足りなかったということ。

今シーズンもここまで地区3位ですが、優勝しか狙っていません。ギリギリでチャンピオンシップに入ったとしても、そこから先は一発勝負です。勝率が上のチームが相手でも、最高のパフォーマンスを出して自分たちがモノにしていくんです。あんまり選手に言うとプレッシャーになるので、僕が自分にプレッシャーをかけてやっています。選手は思い切ってプレーしてくれればいい。皆さんにはそこも楽しみに応援していただければと思います。