野本建吾

4連敗を喫しチャンピオンシップ争いで大きく後退

前節までの宇都宮ブレックス、千葉ジェッツとの対戦を3連敗で終えた群馬クレインサンダーズはチャンピオンシップ戦線に踏みとどまるためにも、今節のレバンガ北海道戦は重要な一戦だった。しかし、90-98で敗れ、レギュラーシーズン6試合を残してワイルドカード下位にいる島根スサノオマジックとのゲーム差が4に開く厳しい状況となってしまった。

1月末から9連勝を挙げ、リーグの中でも一躍注目の的となった群馬だったが、3月31日の広島ドラゴンフライズ戦でマイケル・パーカーとケーレブ・ターズースキーが負傷し戦線離脱。2人はシーズン序盤から不動の先発選手であり、現在はインサイドの要を失った状態で戦い抜くことを強いられている。

2人が離脱直後の信州ブレイブウォリアーズ戦こそ、機動力を生かしたオフェンスやゾーンディフェンスなどを駆使して、かろうじて連勝したものの、以降は連敗を喫している。この試合も北海道に執拗なインサイドアタックを食らったことが一番の敗因となった。ただ、第1クォーターはシュート成功率も高く、ディフェンスも目論見通りで11点のリードを奪った。また、最大で13点のビハインドを背負ったものの、最終盤には2点差まで詰め寄る粘り強さも見せた。

水野宏太ヘッドコーチは「出だしは良い形で入っていったものの、ゾーンディフェンスをやっている中で相手にとって良いタイミングでシュートを決められてしまったり、マンツーマンにした時にインサイドを狙われてしまったり、そこでやられる可能性があることを分かった上で遂行したものの、簡単にやられすぎてしまった部分がありました」と悔しさを噛み締めて試合を振り返った。

ただ、オフェンスに関しては「前節の千葉ジェッツ戦との第2戦を踏まえた上で、よりチームとしてどのように作っていけるか向き合おうと話していました。辻(直人)が良い形でオフェンスに参加できる状況が作れたり、トレイ・ジョーンズのところでも効率的に得点できましたし、個の打開だけでなくチームとしてのプレーができていました」と評価できる部分もあった。

インサイドの選手が欠けたことで、戦術的に大きく変化したのはもちろんだが、選手の起用についてもより精度が求められる戦いが続いている。その中でも特に日本人ビッグマンの野本建吾に対する期待は大きい。パーカーとターズースキーの離脱以降、先発は八村阿蓮が務めていたが、今節は野本が務めた。「(デモン)ブルックス選手がインサイドのポストアップなどフィジカルにプレーすることがあったので、サイズ感を考えて建吾をマッチアップさせました。序盤に関しては、そこがしっかりできたと思います」と、水野ヘッドコーチは起用の意図を明かした。

野本建吾

水野HC「誰一人も言い訳することなく、戦い続けている」

大きな期待を寄せられながらも結果が伴わなかったことに対して、野本は厳しい表情で振り返る。「今日もマイクとケーレブが出れない状況で自分の出場時間が長かったですが、勝ちに結びつけられなかったことが悔しいです。個人的には終盤の大事な場面でディフェンスで仕掛けられなかったことがあったので、反省しています」

野本はシーズン序盤から出場なしや10分以下のプレータイムに終わる試合が多かったが、直近の6試合は20分以上の出場が続いている。急激な変化ではあるが、出場機会に恵まれない時からも準備を怠らなかったからこそ、自分の役割を見失っていない。「自分がチームに貢献できるのはディフェンスだと思っています。リバウンドでも相手の外国籍選手に簡単にやらせないように意識しています。スクリーンをかけてシューターに良い形を作ったり、ボールムーブが良くなるように場面に応じて良いオフェンスができるようにしています」と話す通り、要所で身体を張った良いプレーを見せていた。

しかし、これまで以上の力を求められていることも痛感している。「今の状況ですと、これまで求められていた以上のプレーが必要になります。出場時間が長いので、プラスアルファで自分ができることを見つけて発揮していかないといけないと思います」

下を向いているわけにはいかないことも理解している野本は言葉を続ける。「自分が出ていることで強みになる部分もあります。機動力を生かしてボールムーブをよくして、良い形でシューターが打てることが今日もありました。チームのみんなでボールをシェアしながら、アタックしてキックアウトしたり、良いオフェンスができていることもあるので、次の秋田戦も継続してやっていけたらと思います」

『勝てば官軍』という言葉があるように、勝ち負けで評価する節があるのは事実だ。もちろん勝負の世界である以上、勝利を目指すことは圧倒的な正解であり重要視されることには違いない。しかし、その勝敗だけでチームや選手を評価するのは短絡的と言わざるを得ない。水野ヘッドコーチは言う。「誰一人も言い訳することなく、戦い続けています。チームとしての我慢強さに関しては、間違いなく成長しています。結果が出ていない以上、この成長を納得してもらえるかは分かりませんが、選手の奮闘に対して感謝していますし、尊敬の念を持っています」

彼が話す通り、この厳しい状況になったからこそ、チームの底力が見え出しているのは事実。そして、フィジカルで上回る相手に無骨ながらぶつかっていく野本のハッスルプレーには心を打つものがあった。

群馬は残り6試合すべてに勝利しても、他クラブの結果によってはチャンピオンシップ進出が叶わない『他力』な状況となっている。ただ、どのような形でシーズンを終えようとも、チームとしても個人としても大きな成長を感じられる締めくくりとなることに期待したい。