セミファイナル第3戦の勝因「ディフェンスがもたらした勝利でしかない」
富士通レッドウェーブはWリーグのプレーオフセミファイナルで、シャンソン化粧品シャンソンVマジックとの第3戦までもつれる激闘を制してファイナル進出を果たした。
2戦先勝方式のセミファイナル、富士通は初戦を73-59で快勝すると、第2戦も第1クォーターで23-6と大量リードを奪いながら痛恨の逆転負けを喫した。しかし、第3戦は出だしから町田瑠唯を起点としたオフェンスが爆発。第1クォーターだけで町田が7アシストと、トランジションから次々とイージーシュートのチャンスを作り出し34-14といきなりのビッグクォーターを作ると、第2戦と違ってその後も強度の高いディフェンスを維持したことで93-72と圧勝した。
93点という数字を見ると富士通の勝因はオフェンスと考えてしまいそうになるが、攻守の要である宮澤夕貴は、「ディフェンスがもたらした勝利でしかないと思います」と語る。「昨日、(イゾジェ)ウチェ選手のところでやられてしまいましたが、今日は中を締めて堅いディフェンスができました。オフェンスリバウンドを14本取られましたけど、それでもしっかり我慢して自分たちのボールにできました。(守備面で)昨日できなかったことを今日はできたので、ブレイクに繋げることができました。それにプラスしてベンチメンバーが出た時もしっかりと富士通のオフェンスとディフェンスをやってくれて、良い流れで最後まで行くことができました」
宮澤個人でいうと、第3戦では16得点4リバウンド3アシストを記録し、いつもの通りの高値安定のプレーを見せた。特にこの試合ではゴール下へのアタックが目立ったが、それは第2戦の反省を踏まえた上でのプレー選択だったという。
「3ポイントシュートが打てない時、相手がスイッチした時に自分がしっかり攻める意識でした。昨日はそこで少し他人任せになったところがあり、もう少し自分がフェイスアップ(ゴールに正対してプレー)できたなとビデオを見て思いました。今日はまずフェイスアップして、ミスマッチになった時はどんどん中で面を取っていこうと思っていました。そこの修正はできましたが、狙いすぎたり、ボールを持ちすぎたりしてターンオーバーも多かったです」
ファイナルに向けて「ディフェンスでしっかり我慢することにフォーカス」
富士通にとって、ファイナルは2シーズンぶりとなり「やっとだな、という思いです。そして優勝することが目標で、戻ってきたなという気持ちです」と宮澤は語る。
わずか1年のブランクでしかないのに宮澤が「やっと」と感じたのは、昨シーズンはクォーターファイナル敗退に終わり、故障のためレギュラーシーズンを10試合出場に終わるなど、自身本来のプレーができていなかったことも大きく影響している。
「1年がすごく長かったです。去年は全然試合に出ていなかったですし、パフォーマンスも良くなかったです。戦ってはいましたが、チームを導くことができなかった。プレーでみんなを引っ張っていくことができずに歯痒かったです。それができている手応えがあるので、今年は充実感があります」
今シーズンの宮澤が得ている充実感は、しっかりと数字にも出ており、レギュラーシーズンでは26試合にフル出場し平均13.7得点、6.8リバウンドを記録。また、フィールドゴール成功率50%、3ポイントシュート成功率40%、フリースロー90%以上の『50-40-90』を同一シーズンに記録するのはシュート力に優れたトップ選手の証と言われているが、宮澤はフィールドゴール成功率45.6%、3ポイント成功率41.8%、フリースロー成功率87.2%と、この偉業まであとわずかの傑出したスタッツを残した。
ファイナルで激突するデンソーアイリスは攻守ともに隙のない相手だ。宮澤は「デンソーさんのディフェンスはピックをさせないようにすごいプレッシャーをかけてきて、町田選手のところでディナイもしてきます」とインテンシティの高いデンソー守備について語る。
だが、何よりも勝敗を分ける鍵となるのは「やっぱりリバウンド、ディフェンスです」と強調する。「デンソーさんもこの部分は強いですが、そこで負けると相手の波にのまれてしまいます。3番、4番、5番と身長がありますが、まずはリバウンドを取らせない。ディフェンスでしっかり我慢することにフォーカスしていきたいです」
宮澤は2012-13年から2020-21年まで在籍したENEOSで主力の一員として数々のタイトルを獲得してきたが、富士通では大黒柱として、自分がチームを背負って立つ覚悟を持っている。「ENEOSの時は確かに自分があまりしっかりしていなくても勝てたかもしれないです。でも富士通に来て、自分がしっかりしないと負けるというのは分かっています。今年は特にそれをすごく感じました。今まで以上に責任感を持ち、自分がやらないといけない気持ちは強いです」
文字通り替えのきかない存在として、宮澤は富士通に悲願のリーグ優勝をもたらすことができるのか。注目の頂上決戦はいよいよ明日から始まる。