クリスチャン・ブラウン

2年目のブラウン「持てる限りの力でダンクを狙った」

現地4月10日、ナゲッツは西カンファレンスの首位に並ぶティンバーウルブズとの直接対決を116-107で制した。点差の離れない大接戦で、第4クォーターに抜け出したのはホームの大歓声に後押しされたナゲッツだった。

ナゲッツは第4クォーター途中にベンチで一息入れた主力がコートに戻ってベストメンバーが揃った時に最高の力を発揮する。ヨキッチとジャマール・マレーの連携を中心とするクラッチタイムの勝負強さこそナゲッツが『王者』たる所以だ。残り7分半でヨキッチとマレーがコートに戻った時点で91-87と4点リード。ここからナゲッツは約5分間で19-7のランで接戦を圧勝へと変えた。

『王者』として迎えた今シーズンはホーム全試合がチケット完売。そのレギュラーシーズン最後の試合がウルブズとの首位対決、そこで『ナゲッツらしい強さ』を発揮した勝利にデンバーのファンは大いに盛り上がった。彼らにとって勝利と同じぐらいうれしかったのは、試合の決定打となるプレーがヨキッチとマレーではなくクリスチャン・ブラウンとペイトン・ワトソン、2年目の若手コンビによって生まれたことだ。

ブラウンは2022年の1巡目21位指名、ワトソンは同じく2022年の1巡目30位指名の若手。優勝した昨シーズン、ブラウンはルーキーながらローテーションに食い込んで存在感を見せたが、主力と呼ぶにはまだ物足りないもので、ワトソンは多少のプレータイムは得ていたもののプレーオフでの存在感はなかった。その2人は2年目の今シーズンに大きく成長した。ブラウンは80試合出場、平均20.1分の出場で7.1得点、3.7リバウンド、1.6アシストを記録。ワトソンは78試合出場、平均18.6分の出場で6.6得点、3.2リバウンド、1.1アシストを記録と、2人ともナゲッツのローテーションで重要な一角を占めるに至った。

再建中のチームで優先して起用されるならともかく、勝っているチームで実力あるベテランからプレータイムを奪うのは簡単ではない。それでも彼らはそれをやり遂げ、ナゲッツ唯一の弱点だったセカンドユニットを分厚いものへと変えた。

第4クォーター残り3分半、ブラウンはカウンターから一気に仕掛けて、ルディ・ゴベアの上からダンクを叩き込んだ。その直後、ウルブズのシュートが外れると、リバウンドから素早くトランジションに持ち込んだマイケル・ポーターJr.の上げたロブをブラウンが今度はアリウープで決める。ウルブズはタイムアウトで流れを切ろうとするが、その直後にワトソンがナズ・リードの3ポイントシュートをブロック。そのままリムへと突進したワトソンがダンクを決めている。

ここでもウルブズはタイムアウトを取るしかなかった。2年目の若手コンビによるダンク3連発で、第1シードを大きく引き寄せる勝利が決まるのだから、スタンドが盛り上がらないはずはない。この日ばかりは、ヨキッチとマレーではなくブラウンとワトソンがナゲッツの主役だった。

ゴベアを相手に決めたダンクについてブラウンは「あれはワトソンのおかげでもある。彼も反対側からリムに走っていて、ゴベアは左右どちらもケアしなきゃいけなかった。そうじゃなかったらブロックされていたかもしれない」と語る。

「相手がリーグ最高のディフェンダーだと分かっていたけど、レイアップじゃなくダンクで決めたかった。左手でのダンクは得意な形だし、持てる限りの力でダンクを狙ったんだ。うれしかったのはベンチのみんなのリアクションだった。絶叫しながら飛んだり跳ねたり。試合を決める重要なプレーで、みんなが僕を乗せてくれた」

ワトソンも「CB(ブラウン)の2本のダンクと僕のダンク。あの一連の流れは今シーズンのホームゲームを締めくくるのに最高だったと思う」と喜びを語る。「ファンが大喜びしている姿を見るのが好きなんだ。NBAはすごく大変な環境だけど、どの試合でもファンが支えてくれるから戦える。今日みたいな試合に勝つにはエネルギーが必要で、それはファンのおかげなんだ。だから感謝しているし、プレーオフでも僕らに力を貸してほしい」

『王者』のチームで若手が居場所を得るのは非常に難しいものだが、ワトソンの考え方はシンプルだ。「最高のお手本と毎日行動をともにできるメリットが僕らにはある。できる限りのことを吸収しようとするのが当たり前だし、そうじゃなかったらバカだよね。僕はすべてを見て学ぼうとしているんだ」

彼らの台頭は、若手を我慢強く起用し続けた指揮官マイケル・マローンの、そして若手をサポートしてきたベテランたちの勝利でもある。ビッグゲームで勝利を引き寄せた若手のダンク3連発についてマローンはこう語った。「正直に言えば『もうちょっと時間を使って攻めてくれ』と思ったよ。だけど、素晴らしいダンク・ショーだった!」