プレーオフに向け「今こそ変わるべき時だ」
クリッパーズは膝に痛みを抱えるカワイ・レナードが5試合連続の欠場となり、ジェームズ・ハーデンも足のケガで欠場した。指揮官タロン・ルーはプレーオフ進出が確定するまで手を抜かないと宣言していたものの、プレーオフを見据えたこの時期にケガ人を酷使するわけにはいかない。主力2名を欠いて臨むサンズとのアウェーゲームは苦戦が予想されたが、第1クォーターを37-10と圧倒。第2クォーター序盤には51-14と予想外の大量リードを奪った。
第1クォーターのサンズは、デビン・ブッカーとケビン・デュラントがフィールドゴール10本を放って成功なし。ブラッドリー・ビールは積極性を欠き、足首のケガで欠場したユフス・ヌルキッチに代わって先発出場したドリュー・ユーバンクスはイビチャ・ズバッツにインサイドで圧倒され続けた。
サンズは間違いなく直近の数年で最悪の立ち上がりとなり、開始1分半にブッカーがパスミスを奪われてラッセル・ウェストブルックのワンマン速攻のダンクを食らって0-6となった時点でスタンドからはブーイングが起きていた。ファンは点差ではなくプレー内容のひどさに早々に気付いていた。ブッカーがフリースローで初得点を奪った第1クォーター終盤になって初めて観客席は沸いたが、その時点で30点ビハインドという状況に対するヤケクソの歓声であり、その時点で観客の中には帰り始める者までいた。
ビクター・ウェンバニャマ不在のスパーズに敗れた試合からサンズは4勝4敗と失速しており、プレーオフのストレートインとなる6位になかなか手が届かない。この試合でも後半から目を覚まして猛追を見せたが、点差を1桁に詰めるのが精いっぱい。クリッパーズは余力を残して105-92で勝利をモノにしている。
カワイとハーデン不在のクリッパーズを引っ張ったのはゲームハイの23得点を記録したポール・ジョージであり、シーズン序盤以来となる先発起用に16得点15リバウンド15アシストのトリプル・ダブルで応えたラッセル・ウェストブルックだ。
ウェストブルックはシーズン開幕後のハーデン加入によりチームのバランスが崩れた際、自分がベンチスタートに回ることでチームを上向かせた。ハーデンに続く2番手のポイントガードでプレータイムが安定せず、その時その時の試合展開に合わせたプレーを強いられるのは大変だろうが、その役割を引き受けて奮闘している。ここ数試合は疲労が溜まったのかパフォーマンスを落としていたが、ハーデン欠場の試合で彼本来の爆発力が出た。
ウェストブルックにとってキャリアで198回目の、それでも昨年1月以来と久々のトリプル・ダブル。かつて『ミスター・トリプル・ダブル』と呼ばれた彼は「チームメートのみんなが良いプレーをしてくれたおかげだよ。そして僕を信じてくれたタロン・ルーのおかげだ。明日の試合も気を抜かずに戦いたい」と語った。
試合後のロッカールームで彼は「しっかり準備した成果だと思う」と落ち着いた表情で語る。「自分の心と身体を毎日ケアしているんだ。それだけ準備に時間を費やしているから、試合で活躍しても驚きはしない。試合で何分プレーするかは気にしていないし、自信を持って、良い結果が出ると期待してコートに立つようにしている」
これまでクリッパーズの面々は「プレーオフ進出だけにフォーカスする」と語ってきたが、その目標は果たせた。ここからプレーオフに向けて意識をどう変えていくかと問われたウェストブルックは「このチームはプレーオフであまり勝っていないけど、今こそ変わるべき時だ」と答えた。「勝つためにどんなプレーをすべきかを探りながら、正直ここまでは良い仕事をしてきたと思っている。肝心な場面で勝利をつかむために、今まで以上にチームとしてまとまり、安定した強さを発揮しなきゃならないんだ」