ディフェンスのトーンセットと得点で連勝に貢献
2シーズン連続のチャンピオンシップ(CS)進出を目指す広島ドラゴンフライズは、4月6〜7日の川崎ブレイブサンダース戦に快勝し、連勝を4に伸ばした。
CSを争うライバルを94-60でブローアウトしたゲーム1を終え、キャプテンの朝山正悟はニコニコ顔で記者会見に登壇した。理由を聞くと「いつもこんな感じですよ」と前置きした上で「特に今日はビッグゲームだったので、そういったところの感情っていうのはプラスで出てるかもしれないんですけど」と続けた。
シーズン開幕から不動の先発司令塔としてチームを牽引してきた寺嶋良が、3月3日の千葉ジェッツ戦で全治8〜10週間程度というケガを負った。
ヘッドダウンしてもおかしくない状況で、チームは名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、群馬クレインサンダーズといった強敵を次々と撃破し、直近10試合で9勝1敗と好成績を挙げている。朝山は「最近はチームの雰囲気が本当に良い」と話し、その理由として、寺嶋に変わって先発ポイントガードを務める中村拓人の名前を挙げた。
「間違いなく1つは中村。自分の現状をしっかり受け入れた状況での彼の成長は、チームにとってかなりのプラス材料になってると思うんですね。中村の次のポイントガードとして出る船生(船生誠也)を含めて、働きが大きいです」
中村は大東文化大4年時の2022年に、特別指定選手として広島に加入した23歳。高校時代から国内外のさまざまな大舞台を経験しているエリートプレーヤーだ。
広島のカイル・ミリングヘッドコーチは今シリーズ、川崎の藤井祐眞、篠山竜青、ニック・ファジーカスへのディフェンスの圧を強め、彼らをコートの高い位置へ押し上げよと選手たちに指示。中村は184cmのサイズと、大学卒業後から6kg増量したフィジカルを生かして藤井と篠山をタフに守り、ゲーム1は11得点3アシスト、ゲーム2は9得点1アシストとオフェンスでも貢献。ゲーム1では第3クォーター、第4クォーターと連続でブザービーターを沈めた。
両試合を通じてファウルがかさんだのが玉に瑕で、中村本人も「反省です」と話していたが、ファールを犯してベンチに戻る中村もそれを迎えるチームメートも総じて、役割を遂行していることへの充実感を漂わせていた。
ミリングヘッドコーチも彼の成長を次のように称賛した。
「タクは日々、1試合ずつ成長しています。最も信頼してるのはディフェンス。かなり高い評価をしています。リョウが抜けてからもディフェンスなどでしっかりチームに貢献してくれているし、徐々にそれが自信になって、良いプレーが生まれていると思います。本当に毎試合毎試合、見ていて気持ちが良いです」
状況を受け入れ、役割を遂行しようという意志がチームの雰囲気を変えた
今シーズンのここまでを「個人としてもチームとしても、だんだん良い方向に向かっていっていると思います」と振り返る中村は、寺嶋が離脱したときの心境について「良さんを心配しつつ、『自分がやらないといけないな』っていう気持ちも強くなりました」と言った。
朝山が好調の要因として中村の名前を挙げたことを伝え、どんなことを心がけたかと尋ねると、こう答えた。「自覚はもちろん一層高まりましたけど、特に大きく何かを変えたということはないです。ただ、僕の気持ちの変化がチームが良い方向に向かうのに役立っているのであれば、そこはすごく良いことだと思います」
中村は学生時代からあまり弁が立つタイプではない。ゲーム2後の囲み取材でも、通りすぎるチームメート(ミリングヘッドコーチを含む)ほぼ全員から受け答えを茶化され、プロ2年目になっても取材は慣れないと苦笑した。というわけで、中村の貢献をより『見える化』するために再び朝山の証言を紹介しよう。
「寺嶋が怪我した直後は、正直少し嫌な雰囲気がチームに出ました。ただ、彼ら(中村や船生)はそこからしっかりと自分たちの状況を受け入れて、役割をしっかりと遂行していこうという気持ちを持っていた。それが普段の練習から表れていたから、他のメンバーが反応して、チームとして良いケミストリーが生まれてるんだと思います」
第30節の結果をもって、広島はワイルドカード順位で3位に浮上した。10日には得失点差で2位を譲った島根スサノオマジックとの直接対決も待ち受けている。1月17日の前回対戦は66-75で敗北。しかし中村にはこのときとは異なる自信と経験がある。
「CSに出るために大事なゲームが続く中で連勝を重ねて、チームとしても自分としても自信や手応えを感じています。これからも自信を持ってプレーしつつ、今日の試合であればクロージングのところがまだまだなので、そういったところをしっかり修正できればなと思います。島根さんには前回負けてしまっているので、勝てるようにしっかり準備していきたいです」