契約交渉の時期「全く考えずにいるというのは難しい」
ケンテイビアス・コールドウェル・ポープはナゲッツのエースキラーとして自身の評価を確立している。現地3月21日のニックス戦ではジェイレン・ブランソン、その前のティンバーウルブズ戦ではアンソニー・エドワーズ、さらにその前のマーベリックス戦ではルカ・ドンチッチのマークを担当。粘り強く、しつこく、足も手も動かし、頭はそれ以上に回転させて、時間もスペースも相手に与えない。
オールスター以降のナゲッツは13勝2敗と絶好調で、ニコラ・ヨキッチとジャマール・マレーの2枚看板の活躍が目立つものの、コールドウェル・ポープがどんな試合でも相手のエースにへばりつき、プレッシャーを掛けているのも大きい。
「ブランソンのような選手が相手だと、心身ともに疲れるよ」とニックス戦を終えたコールドウェル・ポープは言う。「得点能力の高い選手が相手だから、僕としてはできるだけ彼と距離を空けずにリズムを少しでも狂わせようとする。常に集中して、相手がどこに行こうともついていくんだ」
彼が素晴らしいのは、その仕事をシーズンを通じて高いレベルでやり続けていることだ。試合後にこそ「疲れる」と言うが、試合中の彼は恐ろしいスタミナで相手を追い込む。超人的な身体能力があるわけではないし、サイズもガードとしては標準だ。時に相手のフィジカルに押し込まれることもあるが、それでも彼は精力的に足を動かし続け、相手にストレスを与えて体力と集中力を削り、勝負どころで抑え込む。
「映像をチェックして、ジムで鍛えて、氷の風呂に入って治療を受け、あとはゆっくり休む。そのルーティーンを守っていれば、あとは自然とエネルギーが沸いてくる。チームメートには冗談で言っているんだけど、もし2日間を何もせず休養に使うことができたら、コンディションは100%に戻ると思うよ」
ナゲッツは昨シーズンに優勝した主力を欠くことなく、今シーズンも良い雰囲気でこの時期を迎えている。ヨキッチとマレーのピック&ロールから生まれる多彩な攻めは、いまだにどのチームからも攻略されておらず、コールドウェル・ポープが相手のキーマンを抑えるところから始まるディフェンスとリバウンドの強さも相変わらず。このチームにとって怖いのはケガだけだが、それも今のところ兆候はない。
しかし、そんなコールドウェル・ポープはフロントの悩みの種でもある。彼は来シーズンに契約最終年を迎え、プレーヤーオプションを破棄すれば今シーズン終了後にフリーエージェントとなる。ナゲッツとしては絶対に逃したくないタレントだが、2025年にはマレーとアーロン・ゴードンとの新契約を結ばなければならない。サラリーキャップの縛りが今後非常に厳しくなることを考えると、チームが好調だからと言って安易に大きな契約は提示できない。
昨年オフにはシックスマンのブルース・ブラウンが同じような形でチームを去った。2年目のクリスチャン・ブラウンの成長で、その穴はなんとか埋まろうとしているが、コールドウェル・ポープが去った時に同じことができるのか──。
マレーやゴードンに比べれば、ディフェンスのスペシャリストは『替えが利く』のかもしれない。コールドウェル・ポープが退団すれば、クリスチャン・ブラウンはプレータイムと責任が増してさらなる成長を遂げるかもしれない。他の強豪に比べると、ナゲッツのロスターはこの先まで見据えて考えた編成になっているのだが、それでも毎年何らかの課題は出てくる。
コールドウェル・ポープの来シーズンの年俸は1540万ドル(約23億円)だが、それ以上の価値があるのは間違いない。31歳という年齢を考えると、年俸は少々抑えてでも長期契約を望むと考えられる。ナゲッツがそれに応えられない時には、両者の関係は終わるかもしれない。
ただ、今の彼は次々とやって来る相手のエースにどう対応するかに集中している。契約問題について問われた彼は「全く考えずにいるというのは難しい」と認めた上で、「でも、今の僕はプレーヤーオプションには関係なく、プレーオフに進出し、勝ち進み、また優勝することに気を配っている。結局のところ僕が考えるのは誰とやるかじゃなく、どうやってハイレベルなバスケをプレーするかなんだ」