2月3日以来の試合でダンク5本を含む16得点8リバウンドを記録
川崎ブレイブサンダースは3月20日、ホームで三遠ネオフェニックスと対戦。40分間を通したハードワークで流れを引き寄せ、3ポイントシュートを中心に高確率でシュートを決め続けた川崎が101-78と快勝した。
試合の立ち上がり、川崎はこのクォーターだけで7アシスト、4スティールが示すように激しい守備からターンオーバーを奪うと、トランジションからの素早いパス回しでオープンシュートの機会を多く作り出して得点を量産。第1クォーターで29-20と先手を取ると、そのまま流れをキープし12点リードで前半を終える。
後半に入ると、三遠は持ち味であるアップテンポな展開からのリズムの良いボールムーブによってゴール下で着実に加点し、第3クォーター残り3分には3点差に迫った。しかし、ここで川崎は、この日22得点を挙げた藤井祐眞の3ポイントシュートで悪い流れを断ち切ると、その後は堅いディフェンスからの攻守の素早い切り替えによる怒涛の連続得点で、リードを再び2桁に戻す。そして、第4クォーターも29-19と大きく上回り、逃げ切った。
この試合、川崎は3ポイントシュートを31本中14本成功と高確率で沈めたのが光ったが、それ以上に攻守に渡ってゴール下で主導権を握ったことが快勝をもたらす要因となった。中でもジョーダン・ヒースは次々とダンクを叩き込んで、フィールドゴール8本中7本成功の16得点8リバウンドと抜群のインパクトを与えた。
ヒースといえば右足関節外側靱帯損傷によって、2月3日の京都ハンナリーズ戦の出場を最後にインジュアリーリスト入りして戦線離脱。この試合が待望の復帰戦だったが、ブランクを全く感じさせない活躍ぶりだった。
「気分は良いよ。身体を万全な状態にするためトレーナーたちとはこの1カ月半くらい長い時間を一緒に過ごし、ハードワークを重ねてきた。チームのために戦えることは本当に素晴らしいね。試合に出ることができず、チームを助けることができないことに、とてもフラストレーションを感じていたよ。選手は常にプレーしたいモノで、だからこそプロバスケットボール選手を仕事に選んでいるんだ」
このようにヒースは、久しぶりの実戦復帰を勝利で飾ったことを喜んだ。また、故障明けながら30分58秒といきなりのフル稼働も「これまでも長い時間プレーしてきたので、慣れているよ。そのための準備もしっかりやってきた」と問題ないことを強調する。
「ニックと一緒にプレーできるのがあとわずかというのは考えないようにしている」
これで川崎は24勝19敗。ヒースが復帰し久しぶりにフルメンバーで戦い、地区首位の三遠相手に快勝したことは弾みがつく。ただ、中地区では2位のシーホース三河とは3ゲーム差の3位、チャンピオンシップ(CS)最後の枠となるワイルドカード2位争いでも島根スサノオマジックに1ゲーム差の3位と、現時点ではCS圏外だ。
Bリーグ誕生からポストシーズンの常連である川崎にとっては苦しい状況が続いており、これから選手たちは今まで以上に負けられないプレッシャーと向き合うことになる。だが、ヒースは「プロアスリートは常にプレッシャーを受けるものだ」と、いつも通りのメンタルだ。「今の僕たちは目の前の試合にフォーカスし、勝ちを積み重ねていくだけ。試合への準備をし、試合ではやるべきことを遂行するためにベストを尽くす。あとは結果を受け入れるだけさ」
このように冷静沈着なヒースだが、リーグ随一のツインタワーの相棒であるニック・ファジーカスの今シーズン限りでの引退には、少なからず感情を揺さぶられている。ファジーカスが「僕とJ(ヒース)は、バットマンとロビンのような関係」と語るように、2人は堅い絆で結ばれている。だからこそ、ヒースはファジーカスの引退について次のような思いで今シーズンを戦っている。
「ニックと一緒にプレーできるのがあとわずかというのは考えないようにしている。なぜなら、悲しい気持ちになってしまうからね。ニックが引退してコートから去る姿を見るのは寂しいけど、彼が選んだ次の道で幸あることを祈っているよ」
そして当然のように、ファジーカスとできるだけ多くの試合を戦いたいと願っており、ポストシーズン出場を逃してシーズンを終えることは絶対に避けたいと言う。ここからの巻き返しで必要なことについて、ヒースはこう締めくくっている。「鍵となるのはチーム一体となってプレーすること。僕のコンディションは100%で心配ないよ。残りのシーズン、僕はもちろんチーム全員が故障なく過ごすことが重要だ」
ヒースの復帰によって、川崎は逆襲に向けてようやく役者が揃った。今回の一戦はヒースの存在の大きさ、フルメンバーが揃った時の川崎の爆発力を証明する価値ある勝利となった。