ミケル・ブリッジス

チームオフェンスの中で生きるブリッジズを生かせず

昨シーズンにトレードでネッツへと加入したミケル・ブリッジスは、27試合で26.1得点を奪う活躍で『ロールプレイヤーから主役へ』というステップアップの可能性を見せました。今シーズンはオールスターへの飛躍も期待されて臨みましたが平均20.5得点に留まり、ネッツも26勝43敗と光明を見いだせない状況です。

今シーズンのミケルのトゥルーシューティングは56.0%で、これはルーキーシーズン以来の低い数字であり、当たり前のように60%を超えていた高確率フィニッシャーとしての特徴を失ってしまいました。エースとしてプレーすれば相手のマークも厳しくなり、精神的にもプレッシャーがかかります。今のミケルはその壁にぶち当たっているともいえますが、そもそも個人技で打開するタイプではなく、チームオフェンスの中でこそ生きるタイプであり、彼自身の問題というよりはミケル中心の戦術が構築されなかったことが響いています。

ミケルの3ポイントシュートアテンプトはサンズ時代よりも2本以上増えていますが、ワイドオープンのアテンプト数にはほとんど変化がありません。ミケルに打たせたい気持ちはあっても適切なプレーを構築できておらず、実際にネッツはチームとしてのオフボールスクリーンでの得点が2.9と少なく、そのうちの半分以上をミケルとキャメロン・ジョンソンの2人が奪っており、ネッツというよりはサンズのプレーパターンで得点しています。

またポイントガードにはドライブで仕掛けるタイプが多く、オフボールで動いてフリーになってもパスが出て来るタイミングが遅く、チャンスを得点に繋げられていません。スペンサー・ディンウィディーがトレードで放出されてからはその傾向が強まり、ミケルのフィールドゴール成功率は7ポイント近く下がり、平均得点は5も減りました。エースの脅威が減ったことでネッツはチームとしても10点近く平均得点を下げ、シーズン後半になって完全に勢いを失っています。

スーパースター軍団が不協和音を引き起こしたことで再出発を余儀なくされ、優れたチームプレーヤーを集めたネッツにおいて、ミケルは攻守に高精度のプレーが期待できる最重要プレーヤーでしたが、その特徴を生かせないままシーズンも終わりを迎えています。デッドラインのトレードやヘッドコーチの解任など、様々な手段を講じても前を向けないのは厳しいものがあります。

スーパースター軍団を作った時のトレードにより、今オフはドラフト指名権がなく、若手有望株の獲得は期待できません。今のロスターで最も良いタレントであるミケルを生かすことができなければ、ネッツの未来は開けません。それはつまり、個人能力で勝ちきれるロスターではないだけに、チーム戦術を見直す必要があることを意味します。

10位のホークスまで3.5ゲーム差とプレーイン・トーナメントの可能性はまだ残っていますが、それを追い掛けるにしても来シーズンへと切り替えるにしても、個人能力で勝ちきれるロスターではないだけに、抜本的にチーム戦術を見直す必要があります。