篠山竜青

文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、野口岳彦

「今はとにかく一つ大きな仕事をしたい思いです」

2月15日、男子日本代表はアウェーのイラン、カタールで開催されるワールドカップ予選に向けて日本を発った。まずは21日のイラン戦に向け、トルコで調整を行うことになる。日本代表のキャプテンを務める篠山竜青は、「イラン戦に向けて、時差調整もありますし、しっかりと良い準備をしていく段階」と、空港でのメディア取材で答える。

今回、日本がワールドカップ出場を果たすとなると、自国開催の2006年以来の出場、自力での予選突破となれば実に1998年以来の快挙となる。また、東京オリンピックへの出場権を得るための実績として、今回のワールドカップ出場を何としても達成しなければならないと言われるなど、選手には様々なプレッシャーがかかる状況となっている。

しかし篠山は、そういった状況を理解しつつ今はコートの中のことに集中すると冷静だ。「いろいろなことは外からも言われていますし、実際にそうなんでしょうけど、自分たちでできることはコートの中で40分間どう戦うかに向けて良い準備を続けることです。そして、トルコやイランに入ってから現地にしっかりアジャストして、コンディションをより良いものにして試合に臨む。そこだけにフォーカスしています」

1年以上に渡る長丁場のワールドカップ予選も、あと約1週間で終わる。「過ぎてしまえばあっという間という気はします。苦しい思いもしましたし、その分オーストラリア戦など自信を手に入れられる良いきっかけもありました。今はとにかく一つ大きな仕事をしたい思いです」

篠山竜青

代表定着までの苦労は「自分の中で良い栄養に」

篠山はここまで全10試合に出場している数少ないメンバーの一人であり、それは彼が代表の常連メンバーであることの象徴だ。ただ、これまでの代表キャリアは順風満帆ではなかった。日本大学では3年生でインカレを制覇、東芝でも不動の先発ポイントガードとして数々のタイトルを獲得してきたが、代表にはなかなか招集されずにいた。

「代表のメンバーを見渡しても、僕は招集されるようになったのが遅い人間だと思います」と本人が語るように、今のチームには大学もしくは20代前半から代表での経験を積んでいる選手ばかり。篠山のように20代後半になってから代表に定着したメンバーは他にいない。

「もう少し、若い時はスムーズに20代前半から代表に呼ばれて、というイメージがありました。招集されずに悔しい思いもしました。また、候補として呼ばれても最後の12名の直前で残れない悔しさはひとしおのものがありました」

そう語る篠山だが、この苦しさと悔しさがあったからこそ今の自分があることを理解している。「この経験が自分の中で良い栄養、モチベーションとなりました。悔しさをエネルギーに変えることで、ステップアップできました。そして今回、この大きなチャンスをモノにできる舞台へ、30歳になって臨めることは誇らしいです。家族も喜んでくれています」

篠山竜青

「日本代表はカッコいいと思ってもらえるように」

大一番を前に「うまく行かない時も毎日コツコツやり続けてきて良かったなと、ワールドカップ出場権を決めた後、あらためて振り返れればいいと思います」と言い、そのために自身のやるべきことを次のように強調する。

「結果は大事です。その中で自分にできることは、コートの中でも外でもハードワークをしてチームのためにやれるというところをいかに見せられるか。そういう部分を見せて、男子の日本代表はカッコいいと思ってもらえるようなプレーを体現したいです」

司令塔としてのゲームメーク、タフなディフェンスに加え、篠山だからこそ発することのできる情熱も代表にとって大きな助けとなる。篠山が語るように、試合を見るバスケファン、そしてスポーツファンを『代表はカッコいい』を感じさせることができたとき、結果は自然とついてくるはずだ。