ジェイレン・ウィリアムズ

自身の役割を多彩に変化させつつチームに貢献

レギュラーシーズンが60試合を超えても、若きサンダーは首位に立ち続けています。その要因は様々ありますが、ジェイレン・ウィリアムズの活躍が極めて大きいことは疑いようがありません。シェイ・ギルシャス・アレクサンダーがMVPクラスのプレーを見せる中で、セカンドエースとしての理想的なプレーは、とても2年目の若者とは思えない完成度です。

ガードポジションにエースを並べる形は、個人の力で点を取る能力は高くても2人が同時にコートに立った時に相乗効果を生み出せるとは限らず、それ以上にディフェンスに問題を抱えがちです。特にアレクサンダーほど突出した得点能力を持つエースがいればすべてを託したくなるもので、ボールを持つ機会が限定されても活躍できる選手でなければセカンドエースの役割は務まりません。

スターターユニットでのジェイレンはウイングとしてディフェンスの死角を突く見事なカットプレーで合わせることもできれば、パスの中継役としてボールムーブを生み出すこともできます。シューター役としても3ポイントシュート成功率45.1%と高確率で決め、アレクサンダーがドライブするためのスペースを生み出す仕事もこなしており、自身の役割を多彩に変化させつつチームに貢献するセカンドエースです。

ディフェンスではエースキラー役をルーゲンツ・ドートが担当する中で、ジェイレンはガードから時にはセンターまでマルチに対応します。スモールラインナップを多用するサンダーではミスマッチが多発しますが、フィジカルへの対応も上手ければ、巧みなハンドチェックでボールを奪い取るスキルにも優れています。チェット・ホルムグレンがパワーで押し込んでくる相手を苦手にしていることもあり、相手センターのマッチアップはジェイレンが担当し、高さでは負けても距離を詰めたハイプレッシャーディフェンスで動きを制限する守り方で対処できます。

オフェンスではアレクサンダーの個人能力を生かすためのサポート役をこなし、ディフェンスではマルチディフェンダーとして機能することでラインナップに柔軟性を持たせる。それは高い判断能力と多彩なプレーパターンを備えている必要があり、この役割を2年目でこなしていることは脅威的です。ただ、それだけでは優秀なロールプレイヤー止まりであり『セカンドエース』とは言えません。

イージーシュートを生み出す判断力の高さとフィニッシュ能力の高さはルーキーシーズンでも示していましたが、今シーズンのジェイレンは個人技での突破でも結果を残すように成長しました。スピードで振り切ることもあれば、パワーで押し込んでのフェイダウェイもあり、タイミングをずらしたフィニッシュパターンもありと、ここでも多彩で柔軟なプレーを見せています。

このジェイレンの個人突破への信頼が高まるに伴い、試合終盤の重要なオフェンスでアレクサンダーではなくジェイレンが選ばれることも増えてきました。現地3月8日のヒート戦でもスローインからのセットされたオフェンスを任されたジェイレンは、2人のディフェンダーの隙間を抜けるドライブからブロックのタイミングを外したレイアップで試合を決めました。今やサンダーのオフェンスはアレクサンダーだけでなく、ジェイレンも同時に止めなければいけない厄介なワンツーパンチになっています。

アレクサンダーとジェイレン、そしてホルムグレンとチームの得点トップ3が揃ってトゥルーシューティングで62%を超えているサンダーは、NBAの歴史でも超高確率のフィニッシュ能力を持つチームになっています。攻守トータルでチームを機能させているジェイレンは、プレーオフに向かうにつれ重要な存在になっていきそうです。