文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

『格上』相手の覚悟、横浜は劣勢に耐えてチャンスを待つ

13勝21敗で中地区5位の横浜ビー・コルセアーズが千葉ジェッツをホームの横浜国際プールに迎えた。千葉は年始のオールジャパンで並いる強豪を次々と撃破し日本一に輝いた。戦績を見ても22勝12敗で横浜にとっては『格上』。だがこの『格上』が相手という状況が劇的なドラマを生む要因となった。

オン・ザ・コート数は互いに「1-2-1-2」を選択。序盤は出だしからアグレッシブにプレーした横浜が先行する。先発出場のファイ・パプ月瑠がファイトし、千葉の強力インサイド陣を封じる。オフェンスではジェイソン・ウォッシュバーンがペイントエリアで力を見せ8得点を挙げ16-10とリードを奪った。

それでも千葉が阿部友和を投入すると、彼を先頭とする激しいディフェンスで勢いを止められてしまう。横浜は約6分間を無得点、この間に0-12のランを浴びて逆転を許す。それでもジェフリー・パーマーと川村卓也の3ポイントシュートなどで巻き返し、29-29で前半を終えた。

これまでの横浜であればズルズルと離されてしまうところだが、ここで踏み留まったのが一つのポイントとなった。青木勇人ヘッドコーチはこう語る。「今まではそこで下を向くことが多かった。だが日本一のチームが相手で、流れを持っていかれる時間帯があると予測していたので、何があってもポジティブにいこうと話しており、選手たちも我慢してくれました」

「全員が献身的に、助け合ったプレーがいっぱい見られた」

後半に入っても一進一退の攻防は続き、52-53と1点のビハインドで最終クォーターへ。ただ、粘り強さの中心となっていたパーマーとウォッシュバーンがともに3ファウルの状態。さらには第4クォーター開始わずか30秒でウォッシュバーンが4つ目のファウルを犯し、危機的状況を迎えた。

このピンチを救ったのが月瑠だった。ディフェンスではマイケル・パーカー、タイラー・ストーン、ヒルトン・アームストロングと三者三様のスコアラーを相手に強靭な肉体と軽快なフットワークでインサイドを死守。攻撃面では4つのオフェンスリバウンドを奪い、8得点をこのクォーターで挙げた。

ケガの功名というべきか、ウォッシュバーンとパーマーのファウルトラブルが月瑠の活躍を引き出し、横浜がわずかにリードして時間が進んでいった。

残り50秒、70-67の場面。タイムアウトで攻め方を確認した千葉は同点に追いつくために3ポイントシュートを狙う。富樫勇樹、石井講祐、ストーン、小野龍猛と3ポイントシュートを打てる選手間でパスを回してズレを作る。横浜は粘り強く対応するも、リバウンドを3度奪われる波状攻撃に。最後は残り1.7秒、富樫がチェックに手を伸ばす細谷将司の上から起死回生の3ポイントシュートを沈めて70-70と同点に。

横浜はタイムアウトを要求し、最後のオフェンスを川村卓也に託した。パスでズレを作る時間はない。大きく回り込むダッシュからウォッシュバーンのスクリーンを使ってボールを受けると、瞬時に振り向きざまのフェイダウェイシュートを放つ。スイッチしたアームストロングが狙うブロックショットを超えたボールがブザーと同時にネットに吸い込まれ、横浜の勝利が決定した。

青木ヘッドコーチは「ディフェンスで最後まで我慢した。チーム全員が献身的に、お互いを助け合ったプレーがいっぱい見られた」と勝因を語った。

敗れた千葉の大野篤史ヘッドコーチは険しい表情で試合を総括した。「ひどいゲームだったと思います。自分たちがリードした場面でターンオーバーを連発してカムバックされて、自分たちで自滅。最後のシュートは仕方がないですが、クロスゲームになったこと自体が問題です」

平均ターンオーバー数が11個台の千葉だが、今日は17個と突き放さなければならない時間帯でミスが目立ち失速してしまった。

ファウルトラブルの2人の穴を埋めた月瑠は「自分がやらなくてはいけないと思いました。4クォーターにあまり出たことがありませんでしたが、今日はそこで出てしっかり仕事ができたと思います」と満足気だった。

横浜の誰もが口を揃えたのは「自分たちはチャレンジャー」という心構えだった。青木コーチはその気持ちがあったから流れを予測できたと言い、月瑠は出だしからアグレッシブにいけたと語った。また川村はチャレンジャーという気持ちをプレーや気迫で40分間示せたことを誇った。

昨日の勝利で自信を手に入れた横浜だが2試合目の内容で真価が問われる。引き続きチャレンジャー精神で2日連続のアップセットを狙い、後半の巻き返しを誓う。