伊藤達哉

文=鈴木健一郎 写真=幡原裕治、B.LEAGUE、古後登志夫

連勝ストップも指揮官は「そんな簡単なものじゃない」

京都ハンナリーズはシーズンここまで40試合を消化して22勝18敗。天皇杯明けの9試合で7勝と大きく勝ち越して貯金を作り、この間には琉球ゴールデンキングス、川崎ブレイブサンダースと上位チームを破り勢いに乗ってもいた。

それだけに中断期間前、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの第2戦を落とし、連勝が6で途切れてしまったのは残念だ。西地区では琉球が25勝15敗で1位、名古屋Dと京都はともに22勝18敗で2位に並んでいる。直接対決で連勝できていれば大きかったが、浜口炎ヘッドコーチは苦笑とともに「2位と3位の直接対決、そんなに簡単なものじゃありません。アウェーで1勝1敗なら十分です」とまとめた。

3月には名古屋Dとの対戦が3度組まれている。チーム力の向上が感じられているのであれば、そこで勝ち越せばいい、ということだろう。ポイントガードの伊藤達哉もチームの手応えを感じている。「ほぼ同じメンバーで2年目をやっているので、コミュニケーションは取りやすくなっています。IQの高さでは他に負けないチームになっていると思います」

伊藤は東海大を卒業してプロ2年目、昨シーズンはルーキーながら56試合に先発し、ポイントガードとしてチームを引っ張った。2年目になっての変化を「我慢ができるようになりました」と語る。「1年目はがむしゃらにプレーして、うまく行かないこと、思い通りにならないことがあったら態度にも出してしまっていました。今シーズンになって、態度に出したら他の選手にも悪い影響を与えてしまうと、そこは我慢するようにしています」

伊藤達哉

チームを勢いに乗せ「身体が勝手に動きました」

京都は1試合平均24.1得点のデイヴィッド・サイモン。20.7得点に8.4リバウンド、8.7アシストのオールラウンダーのジュリアン・マブンガ。京都にとってはこのリーグ最強クラスの外国籍コンビが大きな強み。ただ、彼ら2人に依存するのは負けパターンだ。ポイントガードの伊藤がコントロールし、バランスの良いバスケットを展開できた時こそ、チームの真価が発揮される。

「あの2人は他のチームの外国籍選手と比べてアドバンテージになるので、そこを中心に攻めていますが、他の3人のプレースタイルが昨シーズンとは違ったものになっているので、そこがうまく噛み合うように、自分に与えられた役割を果たしたいです。それがチームとしてうまくできたことが6連勝に繋がったので、状況としては悪くないです」

昨シーズンはゴール下にどっしり構えた重量級センターのジョシュア・スミスを軸としたバスケだった。それが同じセンターでもプレーエリアが広く、多彩なオフェンスに対応できるサイモンに代わったことで、より多彩なバスケットを志向するようになっている。「難しいですけど、みんなで考えて残り20試合を頑張っていきます」と伊藤は言う。

京都のポイントガードは伊藤、ベテランの綿貫瞬、ルーキーの岸田篤生の3人体制。綿貫がケガから復帰して安定感が増したが、やはり先発ポイントガードの伊藤次第でチームの出来は大きく変わる。名古屋Dとの第2戦、伊藤は第1クォーター半ばにコートを離れ、前半はそのまま出場しなかった。「最近ふくらはぎに痛みがあって、かばっていたらアキレス腱に痛みが出ました」と、伊藤は自らプレーを続行できないと伝えてベンチに下がっていたが、サブアリーナで調整して後半からコートに戻って来た。

伊藤が下がった時点で3点だったビハインドは16点へと広がっていたが「16点なら追い付けないことはない」と、自らがアグレッシブに攻めることで反撃ムードを作り出した。「身体が勝手に動きました。あそこは自分の持ち味でもあるので、今日だけではなく残り20試合続けられるようにしたいです」

伊藤達哉

日本代表は「そこは自分に足りないものがある」

伊藤が起点となってズレを作り出すことで、マブンガとサイモンの脅威は何倍にも増す。後半に京都はペースをつかみ、終盤に点差を詰めるも、追い付くには至らず。それでも内容はネガティブなものではなく、だからこそヘッドコーチも「アウェーで1勝1敗なら十分です」と言えた。

中断期間でさらにチームとして進化すれば、チャンピオンシップに間に合うという認識がチームにある。「シーズンを通して戦うためにも、チャンピオンシップで勝つためにも、頭を使ったバスケット、外も中も両方あるバランスの良いバスケットの強みを生かしていきたいです」と伊藤は言う。

「僕は目標を持たずに無心でやるタイプですが、チームとしては昨シーズンのチャンピオンシップベスト8を超えたい。個人としてはBリーグで活躍することで日本代表に選ばれたいです」

日本代表には選ばれなかったが、そこは「いや、そこは自分に足りないものがあるから今ではないですね」とのこと。取り組むべき課題は見えている。今シーズンはケガを抱えながらのプレーを強いられているため、この中断期間はまずはコンディションを取り戻すことが優先。あとは自らの課題に取り組み、チームとしての向上を進めていく。伊藤の目はチャンピオンシップに向けられている。