アメン・トンプソン

バンブリートが復帰、ブレイク明けの巻き返しを図る

ジェームズ・ハーデンの退団を機にロケッツは再建へと舵を切ったが、3シーズン続けてリーグ下位に沈んだ。そして昨年オフ、フロントは方針転換を決断。この3年間で59勝177敗に終わったスティーブン・サイラスを解任し、イメイ・ユドカを新たな指揮官に据えるとともに、ドラフトで指名した若手の成長を待つだけでなく、フレッド・バンブリートやディロン・ブルックスといった実績ある選手を獲得し、彼らを軸に若手を組み合わせるチームで今シーズンに乗り出した。

これまでとは違いプレーオフ進出がノルマとなるが、ここまで24勝30敗で西カンファレンス12位。プレーイン圏内までは3.5ゲーム差と状況は厳しい。オールスターブレイク明けにはペリカンズ、サンズ、サンダーとの連戦、再びサンズと2試合と、上位チームとの対戦が続く。ここで負け続けるようだと下位集団に飲み込まれ、プレーオフ進出の可能性が潰えてしまう。ロケッツの下にいるのはジャ・モラントのケガでシーズンをあきらめたグリズリーズ、再建中のトレイルブレイザーズとスパーズ。結果を求められるシーズンで、このグループに飲み込まれるわけにはいかない。

しかし、オールスター前にはそのグリズリーズに113-121と完敗を喫している。指揮官ユドカはこの時、「シーズン中断期間に先発もローテーションも、私自身の采配も含めてすべてを見直し、再スタートに向けて最善の方法を探りたい」と語っている。ブレイク前にはバンブリートが5試合連続で欠場し、その影響は深刻だった。開幕直後にケビン・ポーターJr.が恋人に対する暴行罪で起訴されてチームを去ることになり、その後もケガ人が続出して思い通りの戦いができずにいるが、バンブリート不在の影響は他の選手の比ではなかった。その彼はオールスター休暇明けに復帰する。ディフェンスを支えるタリ・イーソンのケガが長引いているのは心配だが、戦えるだけの戦力は整う。

ここでユドカがどんな変化をチームに施すのか。チームに大ナタを振るうとすれば、ここまで54試合すべてに先発出場しているジェイレン・グリーンをベンチに回すことだろう。2021年のNBAドラフト全体2位指名のグリーンは、ハーデン退団後のエースの役割を担ってきた。ところが3年目の今シーズンは調子が上がらない。これまでの彼はオフェンスの中心だった。今は司令塔の役割はバンブリートのもので、チームオフェンスの一部として動かなければならないのだが、それでリズムをつかめず苦戦している。セカンドユニットを引っ張るシックスマンの方が今の彼には合っているのかもしれない。

グリーンがベンチに回るとしたら、シューティングガードの2番手を務めるルーキーのアメン・トンプソンが先発に繰り上がる。ケガで出遅れたことで1巡目4位指名のポテンシャルを発揮しきれずにいるが、トンプソンはグリーンとは逆のタイプで、ジャンプシュートの精度に難はあるが恵まれた体格とバスケIQを兼ね備え、自分の個性を主張するよりも落ち着いて周囲と合わせていくタイプ。ここまで限られた出場時間で結果を出しており、そろそろ大きなチャンスを得てもいい頃だ。

トンプソンが先発になってプレーメークをする機会が増えれば、注目したいのはアルペラン・シェングンとの連携だ。グリーンは個人での突破と得点能力ではトンプソンを上回るが、ピック&ロールの使い手としてはトンプソンが上。シェングンは器用なセンターで、チームオフェンスに組み込むことで多彩な働きができる。相性の良いトンプソンと連携する機会が増えることで、シェングンのプレーも良くなると期待できる。

ただ、それだけの手を打ち、すべてが成功したとしても、ここからしばらく続く厳しいスケジュールを勝ち越して乗り切るのは相当に難しいと言わざるを得ない。ただ、フロントは今回のトレードデッドラインでの補強を見送ったが、今シーズン終了後にはまたフリーエージェント市場に打って出るつもりだ。その際に大事なのは、「ロケッツにはプレーオフを戦える力がある」とのイメージを作っておくこと。たとえ今シーズンにプレーオフ進出を果たせないとしても、ポテンシャルを感じさせる戦いぶりは見せなければならない。ユドカがどんな手を打つか、選手たちがそれにどう応えるか。シーズン再開からしばらくはロケッツに注目したい。