阿部諒

守備職人からボールハンドラーに転身、各種スタッツは爆増

男子日本代表は2月22日、25日に行われる『FIBAアジアカップ2025予選 Window1』に向け、12日より味の素ナショナルトレーニングセンターにて強化合宿を実施している。28歳にして初の候補入りを果たした仙台89ERS(17勝22敗、東地区6位)の阿部諒は、16日のメディアデーにて取材に応じ、率直な思いをコメントした。

初招集の喜びは、ない。あと一歩で日本代表という位置に来られたうれしさはあるかと尋ねられた阿部は、「うれしさも何も、まだ何も始まっていないと思っています。ロスターを勝ち取ることができて初めてスタートラインだと思っています」と言った。

市立船橋高校、拓殖大学、サンロッカーズ渋谷での特別指定契約を経て、2018-19シーズンに島根スサノオマジックに加入した184cmのシューティングガード。島根では主にディフェンスで力を発揮する玄人好みする選手だったが、今シーズン移籍した仙台では、シーズン平均プレータイムは約17分から約29分、平均得点は3.8得点から14.5得点、アシストは1.1本から4.8本と各種スタッツが爆増。人々に大きなサプライズを与え、とうとう日本代表候補にまで名を連ねた。

合宿に参加している20名の選手のうち、トム・ホーバスヘッドコーチのバスケットを未体験なのはジョシュ・ハレルソンと阿部の2人のみ。「プレーの約束事や合宿の雰囲気など、いろいろと覚えないといけないことがあるので必死です」と語りつつも「こういう厳しい環境でどれだけ自分のプレーを出せるか、チャレンジしたいという気持ちでいっぱいです」と、厳しい選考レースにポジティブに向き合っている様子を感じさせた。

阿部諒

躍進については謙虚な受け止め「まだ対策されていないところもある」

阿部が担うシューティンガード、あるいはボールハンドラーのポジションは、代表候補における最激戦区。比江島慎を筆頭とした190cm超のプレーヤーが揃う中、阿部は自身がアピールしたいもののとして突破力を挙げた。

独特のリズムを持つペイントアタックは、阿部がかねてから持ち味の一つとしてきたものだった。しかし、(安藤誓哉という)日本人エースがいて外国人も良い選手が揃っていて、そういった選手たちがより効率よく勝つためにはディフェンスという役割を担わなければいけない」という考えが第一にあった島根時代は、自身が積極的に局面を打開するという考えは薄かった。

とは言え、自身のオフェンス力に自信がなかったわけではない。「自信を持っていないとここまでプロとしてキャリアを続けていられないと思うので」。もともと備えていたプレーが仙台・藤田弘輝ヘッドコーチの標榜するスタイルにマッチし、いっそう引き出されての現在だと説明しつつも「まだ30試合ぐらいしか終わってないので、対策されていないところもある。これからです」と話し、得点についても「フィールドゴールの確率はまだ悪いので」と謙虚かつ冷静に自身の立ち位置を受け止めている。

初の代表招集でいかにホーバスヘッドコーチの思惑をつかみ、体現できるか。その上でどれだけ自らの強みを発揮し、ライバルたちとの違いを見せられるか。日本代表という大きなチャレンジの場で、阿部が自らの可能性を大きく引き上げ、彼の言う『スタートライン』に立つことに期待したい。