ステフィン・カリーのゲームウィナーで逆転勝利
110-112と2点ビハインドで迎えた残り3.1秒。ウォリアーズは当然、最後のチャンスをステフィン・カリーに託す。ケビン・デュラントの懐から抜け出したカリーを狙って、ブランディン・ポジェムスキーがパスを出すが、スイッチしてパスカットを狙うブラッドリー・ビールの動きを気にして、パスは本来のコースよりも後ろにズレた。ビールの伸ばす腕は届かなかったものの、カリーはリングを背にしてボールを拾い、すぐさま反転してシュートを打たなければいけなかった。3ポイントラインから1メートル以上離れた位置からの、理想のキャッチ&シュートからはほど遠い形だったが、カリーがシュートを放った時点でチェイス・センターの観客は勝利を確信して立ち上がる。拳を突き上げたファンたちが見守る中、シュートはリングの中央を射抜いた。
土壇場での逆転3ポイントシュートにスタンドは大興奮となったが、カリーはしばらく硬い表情のままで、派手なガッツポーズを出したのはしばらく後だった。「今シーズンのこれまでの流れを考えると、残り0.7秒が永遠のように感じられたよ」とカリーは言う。
ナゲッツ、サンダー、クリッパーズにレイカーズと、今シーズンのウォリアーズには勝つべき試合を最後の最後でひっくり返される経験が何度もあった。それでもこの試合では、最後の0.7秒をよく耐え、113-112での勝利をモノにした。
カリーの勝負強さは今に始まったことではない。ここに来てウォリアーズが遅ればせながら調子を上げているのはディフェンスの改善があってこそだ。ドレイモンド・グリーンがコート上での暴力行為による無期限の出場停止から復帰し、彼をセンターに据えるスモールラインナップが機能するようになって、ディフェンスはようやく安定した。グリーンの復帰からチームは7勝3敗。『ビッグ3』が揃うサンズを112失点に抑える勝利で、ウォリアーズは25勝25敗と勝率を5割に乗せた。
そのグリーンが出場停止処分を受けたのは、現地12月12日のサンズ戦でユスフ・ヌルキッチを殴ったからだ。その時以来となる両者のマッチアップは当然ながらヒートアップした。最初に仕掛けたのはヌルキッチ。ポストアップでグリーンを押し込んでフックシュートを決めると、フロアを手で叩いて「小さすぎる」というジェスチャーでグリーンを挑発した。すると直後、グリーンはヌルキッチに対してポストアップからのフックシュートを決め返す。2人はその後も激しいやり合いを続けた。
この試合でもグリーンは熱くなっていた。出場停止が明けてからテクニカルファウルもフレグラントファウルもなかったが、この試合では判定に異議を唱えてテクニカルファウルを受けた。ヌルキッチが挑発を仕掛けたのも、グリーンの退場を引き出す意図があってのことだろう。だがグリーンは熱くファイトするとともに、必要な冷静さを失わなかった。こういう時にグリーンは真価を発揮する。
試合後、ヌルキッチは「結局、彼は何も学んでいない。また誰かを殴るのも時間の問題だ。自分の発言を取り消すよ。彼はチャンスを得るに値しない」と語った。前回は何も言い返せなかったグリーンだが、今回は違う。「あれでは良いディフェンダーにはなれないね」とグリーンはヌルキッチについて語る。「僕より30kg近く体重があるのにゴール下への侵入を許した。もっと注意して守らなきゃ」
ウォリアーズを率いるスティーブ・カーは言う。「ドレイモンドが偉大なのは競争心とエネルギーがあるからだ。消極的になってしまうぐらいならプレーさせない方がいい。テクニカルファウルやフレグラントファウルをもらうのは構わない。そこで一線を引いてくれればいいんだ。このところはディフェンスの向上が、今日のような試合を勝ちで終わらせるのに役立っている」
グリーンは満足そうにこう語った。「静かな男じゃ勝てない。僕は決してそんなことはしない。率直に言って、今日の僕はかなり良いプレーをしたいと思うよ」