ボーヤン・ボグダノビッチ

ジャズとホーネッツは再建チームらしくリスタートへ

ラプターズがパスカル・シアカムとOG・アヌノビーのトレードを早々に決めた後は、噂話ばかりが先行し実際のトレードが成立しませんでしたが、デッドラインに滑り込むように多くのトレードが決まりました。昨年のような大きな動きはありませんでしたが、各チームの思惑が読み取れる動きとなりました。

ラプターズは1巡目指名権を出し、ジャズからオチャイ・アバジとケリー・オリニクを手に入れました。これでRJ・バレット、イマニュエル・クイックリー、アバジと若手ではあってもNBAで実績を出した選手が揃い、ドラフトで未知数のポテンシャルに賭けるのではなく、早期の再建を目指す方針が明確となりました。デニス・シュルーダーの放出も若手のプレータイムを確保したと想像できます。

ニックスはピストンズからボーヤン・ボグダノビッチとアレック・バークスを獲得し、不安だった選手層を強化しました。アヌノビーの獲得から好調を維持しており、プレーオフで勝つことを目指した動きですが、このトレードではクエンティン・グライムズを放出しています。バレット、クイックリー、オビ・トッピン、そしてグライムスとドラフト1巡目で指名した生え抜きの選手を惜しむことなくトレードの駒として使っており、ポテンシャルよりも現在の実力を重視した方針です。

反対にジャズはスターターのシモーネ・フォンテッキオをピストンズに放出して2巡目指名権を手に入れるなど、今シーズンの勝利よりもドラフトを重視したトレードを重ねました。ここまで26勝26敗の勝率5割でプレーイン進出は現実的なラインですが、今年の1巡目は10位までの指名権にならなければサンダーに譲渡されるため、あえての戦力ダウンで勝率を下げていく動きにも見えます。

すでにテリー・ロジアーを放出していたホーネッツは、1巡目指名権を含むトレードでワシントンをマブスに、ヘイワードをサンダーに放出しました。若手も手に入れたもののガードが多い構成になっており、現時点では戦力を集めることよりも指名権を増やすことを優先した動きでリスタートを切ることになります。

ジャズとホーネッツが下位チームらしい動きをした一方で、ピストンズはNBAの記録に並ぶ連敗を喫した屈辱を晴らすためか、2巡目指名権を放出してでも戦力強化に動いたのですが、最後の最後にボグダノビッチを放出しています。すでにトレードで獲得していたダニーロ・ガリナーリとマイク・マスカーラに同じタイプのフォンテッキオを加えて、ストレッチタイプのベテランビッグばかりになりました。また、ニックスやウルブズとのトレードでグライムスやシェイク・ミルトン、トロイ・ブラウンJr.が加わったことでロスター枠が足りなくなり、2020年のドラフト7位選手のキリアン・ヘイズをウェイブするなど、選手の顔ぶれが大きく変わりました。ベテランが増えた上でポジションバランスが悪くなり、だからといって指名権が増えたわけでもありません。様々な動きがあったものの、全体的に何をしたいのかが見えてこないデッドラインになりました。

通常、トレードデッドラインでは再建チームがベテラン選手を放出し、ドラフト指名権を求めていく動きが多くなりますが、ラプターズとピストンズは少し変わった動きとなりました。また、ウィザーズやスパーズ、トレイルブレイザーズは積極的なトレードに動かず、プレーイン圏内にいるブルズがザック・ラビーンの離脱で動きにくくなるなど、今シーズンならではの事情もあって、話題が乏しく少々拍子抜けの結果となりました。