プレーの見極めもようやく完了「この観察期間は必要だった」
スパーズのグレッグ・ポポビッチヘッドコーチがフランスのスポーツ紙『レキップ』のインタビューに応じ、フランス出身の新人王候補・ビクター・ウェンバニャマについて語った。
約224cmの身長と約244cmのウイングスパンという規格外のサイズを誇りながら、アウトサイドのプレーも堪能。傑物揃いのNBAにあっても史上稀にみる才能を持つ20歳のウェンバニャマは、現在44試合出場で20.4得点、10.3リバウンド、3.2アシスト、3.1ブロックという驚異的なアベレージスタッツを挙げている。しかし、肝心のチームは10勝40敗でウェスタンカンファレンス最下位。ポポビッチは世間からのさまざまな批判を「彼らは何も理解していない」と一蹴し、以下のように続けた。
「ビクターが才能あふれる選手であることは誰もが知っている。でも、選手というのは才能だけで成り立つものではないんだ。マイケル・ジョーダンが初タイトルを獲得したのは7年目。ニコラ・ヨキッチは最初のチャンピオンリングを手に入れたばかりだが、これも8年かかった。物事が早く進むことを望むのは当然だが、段階を飛ばすことはできない。それに、チームを作るには時間がかかる。そんなに簡単なことなら、毎年違うチャンピオンがいるはずだ。成功に至るまでのサイクルは長く、30年以上におよぶ。そして当然、ある時点でゼロから始めなければならない。それが今の私たちだ」
アシスタントコーチ時代、GM時代を含め20年以上スパーズに在籍する75歳の巨匠は、ウェンバニャマの本質をチームのレジェンドであるティム・ダンカンになぞらえて称賛した。
「ビクターがエキサイティングなのは、ダンカンのような気質と性格を持っていることだ。若者は『自分が何でも知っている』と思いがちだが、彼は人からの意見を素直に受け入れられる。彼は自分の能力に自信を持っているが、学ぶことも聞くことも厭わないし、ポジティブにもネガティブにも対処できる。最高の選手であっても、他の選手と同じように扱われることを受け入れなければ、選手育成はうまくいかない」
話題は具体的なプレーへと移る。ポポビッチは規格外のサイズを誇りながらボールハンドラーとしてもプレーできるウェンバニャマの特異な才能について述べた後、シーズンを戦う中でようやく彼のプレーの本質を見定めることができたと語る。
「この観察期間は必要だった。私たちは(フランスでプレーしていた)彼のことをそれほど知らなかった。ハイライトビデオだけでは十分ではない。彼のどんなプレーが安定していて、どこを修正すべきかを見極めるには2〜30試合が必要だったんだ。彼は背中にディフェンスを背負っているし、誰もが彼の正面をフィジカルに攻撃したがる。まずはゲームの荒さに適応しなければならなかった」
ポポビッチは加えて、ウェンバニャマが密集地帯でドリブルを減らしたほうがいいと気づき、自らプレーを修正したことなどについても言及し、「彼のキャリアはまだ始まったばかり。3ポイントシュート、バランス、一貫性をテーマにワークアウトに取り組んでいるが、時間がかかるのは承知の上だ」と話した。
名将の言葉を信じるならば、ウェンバニャマはサンアントニオの地でさらなる成長を遂げ、名実ともに歴史に刻まれるスーパープレイヤーになるだろう。彼の成長とチームの成長が共に進み、再びの王朝が築き上げられることをファンたちは願っている。