ルカ・ドンチッチ

カイリーがケガがちな分をドンチッチが埋める状況

マーベリックスはこの半月で2勝6敗と失速し、プレーオフのストレートイン圏内から脱落した。エースのルカ・ドンチッチが34.8得点、8.6リバウンド、9.6アシストとMVPレベルのパフォーマンスを続けている以上、チームとしては優勝を狙えるバスケを見せなければならないが、その姿はなかなか見えてこない。

そしてトレードデッドラインを数日後に控えた今、マブスには大きな動きがあるのではないかと予想されている。マブスはこれまでもシーズン中の移籍に積極的で、昨年のトレードデッドラインにはネッツからカイリー・アービングを獲得している。ただ、トレードには代償もあり、ジェイレン・ブランソン退団後にスペンサー・ディンウィディーでは埋められなかったドンチッチのパートナーはカイリーで収まったが、ハードワークを厭わず相手のエースを止めるドリアン・フィニー・スミスを放出したことで、今度はその穴が埋められずにいる。

開幕前に獲得したデリック・ジョーンズJr.とグラント・ウィリアムズの働きは主力としては物足りない。ルーキーのデレック・ライブリー二世は特に守備面で期待を上回る活躍を見せているが、その彼が鼻の骨折で離脱してからの2試合は、相手の大型スコアラーを止める術がなくなって完敗を喫することとなった。

パワーフォワードとセンターの層は薄く、トレードデッドラインまでに補強があるだろう。獲得候補として名前が出ているのは、PJ・ワシントンとマイルズ・ブリッジズ、カイル・クーズマとダニエル・ギャフォード、ジェレミー・グラント、さらにはフィニー・スミスの呼び戻し。ただし、1巡目指名権はほとんど手放しており、トレードに使える資産は乏しい。相手クラブの同意を得るには、ジョシュ・グリーンやジェイデン・ハーディーといった、近い将来に主力となる若手をトレードに出す必要が出てくるだろう。

ただ、ビッグマンの獲得でディフェンスのテコ入れをするだけで優勝争いを演じられるのか。ドンチッチとコンビを組むガードはカイリーとダンテ・エクサムだが、どちらもディフェンスを高めるタイプではなく、ハンドラーの役割が重複する。そしてカイリーは素晴らしいプレーを見せてはいるものの、ケガが多くて安定感を欠く。

ドンチッチは今シーズンここまで平均プレータイムが37.6分となっており、これはキャリア最長にしてリーグ最長の数字。開幕当初はプレータイムを抑える意向が見られたが、12月以降はそれがなくなり、今は6試合連続で39分以上プレーしている。カイリーがケガがちな分を絶対的なエースが埋めている状況は、これから負荷の増すシーズン後半とプレーオフに向けて不安でしかない。

ヘッドコーチのジェイソン・キッドは、チームのドンチッチ依存の高さを問題視して「オフェンスですべてをこなし、ディフェンスでも多くのプレーに参加している今、精神的にも肉体的にもかなりの負担がかかる」と話す。キッドの仕事は与えられた戦力でチームを勝たせることで、そのためにはドンチッチを酷使せざるを得ないのだろうが、それではいずれ限界が訪れる。

ビッグマンの補強だけでなく、ドンチッチの負荷を下げるために本当に意味のある変化をもたらせるのか。リーグ屈指のスーパースターを擁しているからこそ、マブスは難しい問題を前に正しい判断を下す義務がある。