プレーオフまで限られた時間でチームをどう変えるか
ヘッドコーチ交代に踏み切ったバックスは、ドック・リバースの下でナゲッツとトレイルブレイザーズに敗れた後、3試合目となるマーベリックス戦を最大25点のビハインドから逆転し、初勝利を奪いました。ですが試合内容に改善は見られず、何のためにヘッドコーチを交代させたのか見えないスタートになっています。
今シーズンのバックスはディフェンスに問題を抱え、ヤニス・アデトクンポが不満のコメントを発していました。指揮官交代でこのディフェンスの問題に最優先で取り組んでいくものと思いましたが、リーグで2番目に平均得点が低いブレイザーズに119失点で負けており、改善の兆しは見えていません。それどころかチームにエネルギーをもたらしていたアンドレ・ジャクソンJr.をローテーションから外してしまい、むしろディフェンスの足が止まっています。
マブス戦では3ポイントシュートを中心に攻略してくる相手に対し、インサイドを固める形で試合に入り、第1クォーターで44失点を喫するゲームプランのマズさもありました。そこで慌ててアウトサイドにプレッシャーを掛けに行くも、今後はゴール下へとパスを通されます。欠場者続出で試合終盤にオフェンスのバリエーション不足に陥ったマブスに対し、バックスは48得点のアデトクンボと30得点のリラードの火力で逆転勝利を収めましたが、その試合内容から何を改善したいのかは見えてきません。
ルーキーのジャクソンJr.に加えて2年目のマージョン・ボーチャンプも起用されなくなったことで、3ポイントシュートへのチェイスやトランジションでのフリーランニング、そしてオフェンスリバウンドと若手が担っていたハードワークを欠くようになりました。代わりにリラード、クリス・ミドルトン、ブルック・ロペスといったベテラン陣のプレータイムが35分を超えるようになり、前任者の下で進められていたチームの若返りの芽が摘まれています。
ベテランが多いバックスは同じロスターで同じように戦っていてもチーム力が年々低下していく傾向が次第に明らかになったからこそ、新たなヘッドコーチの下で若手を組み込んでいくことを目指して今シーズンをスタートさせたはずです。それが昨シーズンまでと同じ形に戻ってしまいました。選手との関係性を重視するのがドック・リバースのコーチスタイルですが、主力選手がやりたいようにやっていても、チームとしての進化は生まれません。
まずは昨シーズンまでの戦い方を取り戻し、そこから調整を繰り返していくプランかもしれませんが、プレーオフまで残り30試合あまりと残された時間は長くはありません。トレードデッドラインとオールスターブレイクで立て直すことができるのか、ヘッドコーチ交代という大きな刺激は即効性のある薬にはならなかっただけに、さらなる改善策が必要です。