「コーチに求められていることをよりコートで表現していきたいです」

シーホース三河は1月31日に行われた横浜ビー・コルセアーズとのアウェーゲームに74-75と競り負けた。第4クォーター残り2分半で4点のビハインドから残り1分に一度は逆転したが、残り2秒に逆転の3ポイントシュートを決められる痛恨の逆転負けだった。

現在の三河は22勝12敗で中地区2位と、昨シーズンの27勝33敗から見事なV字回復を見せ、2020-21シーズン以来となるポストシーズン進出へ好位置につけている。だが、ここにきて長野誠史のインジュアリーリスト入り、横浜BCでは西田優大が故障欠場と主力ガード陣が離脱。チームの大きな武器であるアップテンポなバスケットボールを支える推進力に優れ、切れ味抜群のドライブで相手ディフェンスを切り崩しているガード陣の不在は大きな痛手となっている。

この危機を乗り越えるためにも残ったメンバーのステップアップが求められるが、31日の試合で存在感を示したのが中村太地だった。今シーズン初の先発起用となった中村は、粘り強いディフェンスで河村勇輝のマークにつくとレイアップをブロックするなど奮闘。オフェンスでも3ポイントシュート、味方との見事な連携でゴール下のダイブからシュートを決めるなど16分3秒のプレータイムで5得点1ブロックのスタッツ以上の貢献を果たした。それは出場時間の得失点差を示すプラスマイナスで、チームトップのプラス9だったことが何よりの証明だ。

中村は次のように試合を振り返り、第3クォーター中盤てに2桁リードを奪った後でさらに突き放せなかった部分を悔やんだ。「後半、河村選手にバックカットで簡単なレイアップを決められてしまいました。あそこでもっと堅いディフェンスをして、リードを10点から15点、20点と広げていければゲームはそこで終わっていたと思います。それなのに相手に反撃のチャンスを与えてしまい、そこからズルズルと崩れてしまったのは一つのターニングポイントでした」

そして自身のプレーについては、「ディフェンスと3ポイントと、ハッスルプレーだったりを求められていると思います。もっともっとアグレッシブにやり、コーチに求められていることをよりコートで表現していきたいです」と役割を語る。

「2年続けて同じメンバーが揃うことはないからこそ、このメンバーで優勝したい」

その上で一番重視しているのはディフェンスだと強調する。「オフェンスは点を取れる選手がいっぱいいるので、ディフェンスでミスなく、自分の責任をしっかり果たすことです。それができれば自分のリズムが生まれるので、まずはディフェンスにフォーカスしています。自分が出ることで、ディフェンスのレベルを引き上げることが大事です」

今シーズン初の先発起用だったように、故障者が出ている状況は中村にとってプレータイムが増え、自身の評価を高めるチャンスとも言える。だが、彼は「自分のできる最大限のことをやろう、やりすぎないことも大事だと思います」と献身的な姿勢を崩さない。「欲を出さないというか、とにかくできることを1個ずつ増やしていく。そうすることでハンドラーを任せられるようなタイミングが来ると思います。まずはディフェンスからの意識です」

痛恨の逆転負けを喫したとはいえ、三河は引き続きチャンピオンシップ出場圏内で過去2シーズンに比べると順調な歩みを見せている。だが、中村は優勝のことしか考えておらず、まずはCSに出場できればという思いは微塵もない。そこには「プロの世界では、2年続けて同じメンバーが揃うことはないからこそ、このメンバーで優勝したいです」と今のチームメートとの強い絆も大きく影響している。

また、今の三河は高い向上心を持った選手たちの集まりであり、さらに成長していけると自信を持っている。「勝った試合でも誰も満足していないですし、みんな完璧を目指して取り組んでいます。本当に負けず嫌いの集団で、負けた時の悔しがり方は尋常ではないです。それは練習の紅白戦の時からです。もっと高いレベルにいける競争心を持っていると思うので、これからもこの部分は大切にしていきたいです」

ここ4試合に限れば三河は1勝3敗と苦しんでいる。この悪い流れを払拭して、2月中旬からのブレークに入れるか。今は大きな踏ん張りどころであり、中村の強度の高いディフェンスを筆頭とした攻守に渡るハッスルプレーがより必要となってくる。