コービー・ホワイト

「失敗するたびに、そこから教びを得て進み続ける」

ブルズは開幕から1か月で5勝14敗とスタートダッシュに失敗したが、その後は14勝9敗と立て直した。エースの一人であるザック・ラビーンをケガで欠く期間が長かったにもかかわらずチームが勢いを取り戻せたのは、ポイントガードのコービー・ホワイトの成長が大きい。

ホワイトは2019年のNBAドラフトで1巡目7位指名を受けた23歳。ザイオン・ウイリアムソンやジャ・モラントが出た『当たり年』ではあるが、ホワイトはブレイクまでに時間がかかった。試合には出ているものの、好不調の波が激しくて主力を託すには安定感を欠いたからだ。デビュー当初は年間82試合をこなすNBAの厳しいスケジュールをこなすのに苦しみ、その後はメンタルの課題が出た。実績のあるチームメートに遠慮してしまい、爆発的な運動能力と高いスキルという自分の持ち味を隠してしまう。NBAのレベルで『お人好し』はしばしばネガティブな要因となる。膝の故障が長引くロンゾ・ボールに代わって先発ポイントガードの立場をなかなか確立できない時期が続いた。

それが今シーズンは変わった。ここまでブルズの全42試合に先発出場し、35.5分出場、18.5得点、4.4リバウンド、4.9アシストのすべてがキャリアハイ。特に最初の1か月でベテラン勢の調子が上がらず、チームが苦境に陥った時に「自分がやらなければ」という積極性を持てたことが大きい。

ホワイトは『The Athletic』の取材にこう答えている。「今回のオフは今までと違うことを試した。練習はいつも全力でやってきたけど、メンタル面での成長に重きを置いてこなかった。だから本を読んだり日記を書いたり、瞑想で自分と向き合うことを始めたんだ。慣れないことだったけど、僕は日々成長したい。それでリーダーシップを学び、メンタルを強くする方法を学ぶことにした」

キレのあるドライブで目の前の相手を抜く。自分でアクションを起こしてズレを作り出す彼は、そのままシュートに行くこともアシストすることもできる。大事なのは常にアグレッシブでいることで、そのためには自分の中の不安や恐れを克服しなければならない。そこで自らをコントロールできるようになったことで、ホワイトは5年目のブレイクに至った。

ブルズを率いるビリー・ドノバンは先日、ホワイトについて「オールスターに値する選手」という言葉で称賛した。ホワイトは「良い響きの言葉だね」と喜んだが、活躍が目立てば目立つほど、次には大きな課題が訪れるのがNBAだ。

現地1月15日のキャバリアーズ戦、彼は今までで一番と言ってもいいほど厳しいマークを受けた。フィールドゴール15本中5本しか決められず、3アシストに対しターンオーバーは7。特に77-80で迎えた第4クォーターで、ホワイトはターンオーバー3つを喫し、チームでは8を記録。ここからキャブズにイージーな得点を与え、勝負の12分間を14-29とされて91-109の完敗を喫した。

キャブズ指揮官のJ.B.ビッカースタッフは試合後、「ホワイトをペイントに入れないことを重視した。スピードで裏を突かれ、ペイントに入られると手が付けられないから、まずは彼を中に入れないことだ」とのホワイト対策を明かした。エースのデローザンやラビーンはミドルレンジのシュートを得意としており、相手守備陣の注意がそちらに向くことでホワイトは突破がしやすい。しかし、状況は次のフェイズに入った。これから相手チームがホワイトの突破を一番に警戒するようになれば、彼もまたもう一段階ステップアップする必要がある。

ホワイトは「僕のせいだ。もっと上手く対応しなければならなかった」と落ち込んでいたが、それでもドノバンの信頼は変わらない。「コービーのせいにするつもりはない。今回のことは良い勉強になるだろう。シュートが入らない時はポイントガードとして少しペースを落とすことで流れを変えられたかもしれない。それを学べたのは彼にとって良い機会だ」と語る。

ホワイトは課題から逃げず、正面から向き合おうとしている。「失敗から学び、成長するために僕はここにいる。だから、これもバスケ選手としては大事な瞬間なんだろうね。落ち込んでも仕方ない。失敗するたびに、そこから教びを得て下を向くことなく前に進み続けるんだ」