ジョーダン・クラークソン

層の厚さを生かし『変化を恐れない戦い方』が強みに

ジャズが密かに快進撃を始めている。19勝20敗の西カンファレンス11位で、いまだプレーイン・トーナメント圏外のチームではあるが、直近の11試合で9勝を挙げているのはセルティックスとジャズのみ。しかもジャズはこの5日間でセブンティシクサーズ、バックス、ナゲッツと優勝候補の3チームを撃破している。

現地1月10日には王者ナゲッツを撃破。第3クォーター終了時点で99-78と大量リードを奪い、第4クォーター半ばでナゲッツに主力を下げさせている。ナゲッツを率いるマイケル・マローンは、大敗を喫した後にも怒ってはおらず、「我々が今日対戦したのは真の実力を備えたチームだ」とジャズの戦いぶりを素直に称えた。

ニコラ・ヨキッチは27得点11リバウンド6アシストと活躍したが、他の選手にシュートの当たりは来なかった。ジャズはジャマール・マレーとマイケル・ポーターJr.の3ポイントシュートを徹底的に警戒し、マレーは17得点、ポーターJr.は5得点に抑えている。ヨキッチにしてもアシスト6は及第点以下で、ターンオーバーも6を記録。ジャズの守備が上回った。

ナゲッツの変幻自在の攻めに対し、ジャズは激しく粘り強く対応した。足を動かし、スペースを消し、相手に自由を与えない。リバウンドでもヨキッチやアーロン・ゴードンが高さと強さで上回っているにもかかわらず、あちこちからジャズの選手の腕が伸びてきてボールをもぎ取っていく。ジャズがそれだけのプレー強度を保てたカギはセカンドユニットにあった。先発メンバーが下がっても、ベンチから出てくる選手たちがプレーのクオリティも強度も落とさない。ジョーダン・クラークソンはベンチスタートながらジャズで誰よりも長い33分のプレータイムを得て27得点9アシストを記録し、セカンドユニットのリーダーとして勝敗に大きな影響を与えた。

「今の僕らは本当にバスケを楽しんでいる。今、個人的にはオフェンスに注力していて、遅いペースでしっかりスペーシングしてチャンスを作り出すことを心掛けている」とクラークソンは言う。

ジャズの状況は興味深い。ケガ人も多くてメンバーがなかなか固定できず、それが様々な選手にチャンスを与えることになり、ケガ人が戻って来た今、選手層の厚みに繋がっている。ここまで12選手が先発を経験しているが、その中でベンチスタートを経験していないのはラウリ・マルカネンだけ。クラークソンにしてもここまで19試合はスタメン起用。今ベンチユニットのリーダーを務めているのも『流れ』でそうなっているだけだ。

同じような状況でもレイカーズやサンズ、ウォリアーズはメンバーが固定できない弊害ばかりが出ているが、ジャズだけはそのマイナスをプラスに変えている。どの選手も若く野心的で、どんな起用法であれチームのために受け入れて全力を尽くすシンプルな考え方を貫いていること、余計なプレッシャーがなく、負け越していても落ち着いて自分たちのバスケに取り組めることがジャズを助けている。

若き指揮官ウィル・ハーディーは、そのことを「運が良かった」ととらえている。実績や年齢、契約、選手としての格といったものにとらわれることなく、ハーディーは選手の起用法を決められる。未知のラインナップで、その場その場で問題を解決しなければならないのは選手からすれば楽ではないが、ハーディーは自分の決断が必ずしも正しいとは限らないと前置きした上で、選手たちにベストを尽くすことを求める。そして選手たちは、大変であっても新たな学びを得たり、自分の思いがけない成長という収穫を手に入れ、新たな刺激を楽しむようになった。

ハーディーは言う。「我々は変化を恐れないチームでありたい。もちろんバランスは大事で、安定して勝ためにはチームの軸、基本となる戦い方を固めていく必要もある。変化は重要だが、カオスを作り出したいわけじゃない。新しい起用法や戦術を行う時には、その背景にある考え方まで理解してもらうために、選手とは率直に話し合っている」

コリン・セクストンはチームで3番目に年俸の高い選手だが、ここまで全39試合に出場しているもののスタメンは半分以下の16試合。それでも、都度変わる自分の役割を受け入れてベストを尽くしている。「全く問題はないよ。僕らは選手層の厚さが売りだし、いろんな勝ち方のできるチームだ。僕としては、自分の名前がいつ呼ばれてもいいように準備しておくだけさ」