瀬川琉久

ゲームハイ32得点も体力が尽きて終盤に失速

ウインターカップ初制覇を目指した東山だったが、福岡第一との準々決勝に71-74で敗れた。2年生エースの瀬川琉久はゲームハイの32得点を挙げたが、チームは最大18点をリードしながら大逆転を許し、大粒の涙をこぼした。

第4クォーター残り27秒、崎濱秀斗の逆転3ポイントシュートが決まるのを見つめ、瀬川はエースの差を痛感した。「崎濱さんのチームを勝たせるという強い気持ちが伝わりました。自分は留学生のコンタクトがあって負けてしまった。気持ち、責任と自覚が本当に違った」

既に体力は限界だった。3点を追う中、左コーナーから放ったラストショットはリングに届かず、試合終了のブザーを聞いた。前半は試合を支配するようなパフォーマンスを見せていた。自身最初の得点は得意のドライブで、山口瑛司からバスケット・カウントを奪った。ボールを持つとピックを使いながらアタックし、プルアップジャンパーも交えながらスコアラーとしての本領を発揮していた。「最後は絶対に自分が決め切る、シュートに行くと決めていた」。大会前から意識していた崎濱とのエース対決で先手を取った。

だが、徐々に福岡第一の術中にはまる。厚い選手層を誇る相手から執拗なマークを受け続け、瀬川もいらだちを隠せず、振りほどくために脚力が削られた。4点差に詰め寄られた第4クォーター残り2分、ドライブを仕掛けた瀬川がバランスを崩した。無人の左コーナーにボールを投げるターンオーバーを献上し、直後に福岡第一の崎濱に3ポイントシュートを決められ1点差とされた。続くオフェンスではファウルをもらったが、足がついていかない。この試合11本目のフリースローが初めて外れた。

「疲れが足にきていました。第一さんの激しいディフェンスを突破するときにファンブルしたり、重心が前に行ってしまい視野が狭くなったりしてターンオーバーに繋がってしまった。それまでに(佐藤)凪に預けたり、(佐藤)友さんに回したりして、ボールを散らしてから最後に自分が決め切れられれば」とうつむいた。

瀬川琉久

「いつ逆転されるか分からない危機感があった」

フィールドゴールは第3クォーター残り3分半の場面が最後、4つのターンオーバーのうち3つは後半に犯した。数字は残酷に物語っていた。「10点リードしている中で、常にいつ詰められて逆転されるかというのは本当に分からなかった。危機感があった」。

点差以上のプレッシャーが2年生の肩にのしかかっていた。東山は例年にない選手層を誇っていたが、第一が11人出場したのに対し、東山は9人。スターター以外で10分以上のプレータイムを得た選手はいなかった。佐藤友とともにフル出場を余儀なくされた。大澤徹也コーチも「必要以上に瀬川がハードワークで消耗してしまった。うまく機能しなかった。ボールから逃げている部分ものぞいていて、ファウルをもらってやろうという気持ちがほしかった。第一さんの崎濱君に3年生の意地を見せられ、瀬川もまだまだだったかな」と脱帽した。

中学時代にJr.ウインターカップを制し東山に入学したが、1年時の昨年はウインターカップの出場権を逃した。洛南との大一番を前に鼻骨を骨折。強行出場したが、チームを勝利に導けなかった。今夏のインターハイは準決勝で福岡第一に快勝したものの、決勝では観客を味方に付けた日本航空を相手に、リズムを崩して準優勝。日清食品トップリーグも勝てば優勝に大きく近づく開志国際戦で勝負どころのシュートを決められず涙している。繰り返し、あと一歩届かなかった頂へ、今大会こそという思いは強かった。初戦の桜丘戦は40得点、3回戦の帝京安積戦も出場17分余りで22点を挙げていた。

試合後にゲームキャプテンの佐藤友と抱き合うと、チームを勝たせられなかった不甲斐なさを噛みしめた。ともに辛苦を味わっただけに「2年間一緒にバスケットできたのは良い経験で、友さんはチームを引っ張ってくれるリーダーでした。新チームでは友さんの役割も、今のエースの役割も担います。待っている壁は高いと思いますが、乗り越えられると信じています」とリベンジを誓った。

大澤コーチも「2年生としては合格点なのですが日本代表、世界を見据えてやってほしい。ここで立ち止まっているわけではないと思う。崎濱君のシュートからエースの意地がどのようなものか、理屈じゃない何かを感じ取って将来に生かしてほしい」と信頼は揺るがない。

瀬川琉久

新チーム初顔合わせは快勝「お互いこれからどんどん変わっていく」

大会終了から5日後の2024年1月3日。新チームはニューイヤーカップで始動した。初戦で延岡学園を下して迎えた相手が福岡第一だった。会場も福岡第一のコート。試合前には「悔しさがよみがえってきて気合が入りました」と言い、両チーム初の得点をマークすると、文字通り先頭に立ってブレイクを決め、バスケット・カウントを奪い、多彩なオフェンスを見せた。福岡第一は新キャプテンに就いた八田滉仁らがウインターカップ時と同様に厳しくマークしたが、「3年生のチームで対戦していた時に培った力が発揮できた」と瀬川はものともしなかった。前半だけで24得点と爆発し、後半も優位に進めて73-54で完勝した。

福岡第一とのウインターカップ準々決勝は、一度だけ目を通したという。時間がたっても涙で画面がにじんだが、もう前しか見ていない。「新チームで勝って少しはすっきりした気持ちがあるけど、お互い始まったばかりです。これからどんどん変わっていくチームなので、特におごることなく、もっと自分たちを磨けるように頑張りたい」

大会は2校の他に福岡大学附属大濠、中部大学第一、延岡学園が集まり、ハイレベルな試合が続いた。「現時点では東山より上だと思う」という福岡大濠とは83-83で引き分けたが、初の実戦の場を3勝1分けで終えた。

新チームでもゲームキャプテンの背番号は「5」のまま。大澤コーチの「一番信頼するプレーヤーに渡す番号で、3年間つけてほしかった」という意向で変えていない。不完全燃焼だった2年間を糧に、世代No.1プレーヤーは2024年こそ、信頼に応えてチームにタイトルをもたらす。