渡邊雄太

3ポイントシュート成功率が上がらず出場機会を失う

NBA6年目のシーズンにしてついに保証された契約を締結して開幕を迎えた渡邊雄太は、順調な開幕スタートとなったものの、次第にプレータイムを減らすこととなりました。12月に入ってからは出場機会のない試合も増えています。ドラフト外でNBAにやって来た渡邊は、これまでのキャリアで実力を認めさせて出場機会を勝ち取ってきましたが、初めてその逆パターンに陥っています。

昨シーズンの渡邊はトゥルーシューティング%で一時はリーグトップに躍り出るなど、高確率のフィニッシュ力が光りました。ケビン・デュラント、デビン・ブッカー、ブラッドリー・ビールを揃えたサンズは周囲にフィニッシュ能力の高い選手を置きたく、渡邊に白羽の矢が立ったわけですが、それが63.7%だった昨シーズンに対して、今シーズンは49.6%と急降下しています。フィニッシュ力に課題のある現状、信頼を得られていません。

デュラントとの相性の良さが光った昨シーズンは、特にデュラントのポストアップに対して逆サイドのコーナーにポジショニングし、3ポイントシュートとカットプレーで合わせていくのが渡邊の大きな武器でした。サンズが渡邊を欲した理由もこの相性の良さにあるのかと思われましたが、デュラントと同時にコートに立つ時間は短く、効果的なカットプレーを決めることができなくなり、2点シュートの成功率は56%から33%へと急激に下がりました。

個人での突破力に乏しくゴール下のフィジカルな戦いに苦しむ渡邊は、NBAキャリアにおいてインサイドでのフィニッシュ能力の低さが常に大きな課題です。ネッツではチーム全体がテンポ良くボールを動かしたことでイージーシュートが増えましたが、サンズはデュラントやブッカーのパスからのフィニッシュはあるものの、エクストラパスが連続するシーンはなく、ボールが停滞してしまいがち。良い意味ではチーム戦術に合わせられる渡邊ですが、チームの課題を解決する個人能力は持ち合わせていないため、こうなると非常に苦しい状況に陥ります。

日本のファンから見れば渡邊のストロングポイントはディフェンスですが、実際はむしろオフェンスで貢献できる選手として起用されています。そのディフェンスではチームにコミュニケーションミスが多く組織ディフェンスが成立していないため、渡邊の強みである献身的な運動量やヘルプディフェンスが評価されません。同時にカバーリングが足りないチームにおいては、マンマークにおけるフィジカル面の弱みが出てしまいます。コートのどこにでも顔を出しハッスルしまくる渡邊の姿を見たいものですが、チームが課題を抱えている現状では、まずは1on1をしっかりと守り信頼を得ることが優先事項です。

3ポイントシュートの不調もあって渡邊の使いどころは失われていきました。ただ、新加入選手とケガ人の多さでチーム戦術が固まらないことで彼の良さは出しづらく、ここからチームが攻守に機能していくにしたがって長所を出せる可能性もあります。『ビッグ3』が揃わない間は得点力のあるハンドラーが重用されましたが、ビールの復帰によりハードワークのできるウイングが必要とされ、渡邊の出番も増えてくるでしょう。

2024年は崖っぷちからのスタートとなりますが、苦しい立場からプレータイムを勝ち取るのが渡邊のNBAキャリアだけに、ここから真価を発揮してもらいたいところです。