新オーナーはテキサス州でのカジノリゾートを目論む
マーベリックスを所有するのはマーク・キューバンではなくなった。ミリアム・アデルソンとその一族が、株式の過半数を買い取ることになり、NBA理事会の承認も得られたことで、数日のうちにオーナー変更が正式に決定する。
ミリアム・アデルソンはラスベガスのザ・ヴェネツィアンとザ・パラッツォを保有するカジノ王だった亡き夫、シェルドン・アデルソンの後を継いでラスベガス・サンズ社の筆頭株主となった。『Forbes』による2023年版の長者番付では35位で、保有資産は320億ドル(約4兆8000億円)と見られる。11月の時点でラスベガス・サンズ社は「プロスポーツチーム買収のため」として株式の一部を売却しており、そのターゲットがマブスだったということになる。
キューバンは2000年にマブスを2億8500万ドルで買収し、当時のNBAにはいなかったIT企業の経営者としてNBAクラブの経営に様々な改革をもたらした。『現場介入』も積極的に行い、最初は失敗続きだったものの、ダーク・ノビツキーの獲得を機に物事が上手く回りだし、2005-06シーズンにNBAファイナル進出、2010-11シーズンに優勝を勝ち取っている。
今回の買収額は非公開ながら40億ドルを超えると見られている。キューバンは今後もマブスの株式の27%を保持し、経営の舵取りをすることになりそうだ。
キューバンは言う。「2000年1月にマブスを買収した時、私はこのリーグで誰よりもインターネットやテクノロジーに詳しく、それを経営に生かしてきた。だが今となっては、そのアドバンテージは存在しない。テクノロジーに代わる何かが得意な人物が必要だった。マブスは今、世界トップクラスのパートナーを得ることで、経営基盤を拡大することができる」
ラスベガス・サンズ社の最終的な目標は、テキサス州でのオンラインベッティングの合法化を実現し、ダラスに大規模なカジノリゾートを建設することだ。人口が全米2位のテキサス州は新たな市場としては魅力的だが保守的な州で、熱心なロビー活動にもかかわらずオンラインベッティングの合法化が進まない。今回のマブスの買収は、その後押しという意味合いが強いと見られている。
キューバンは「カジノリゾートの話は数年前に出ていた。私にはそれを作れない。それを作れる新たなパートナーが現れて、何十億ドルもの投資をするのであれば、マブスを保有したがるのは当然だろうね」と話す。
キューバンは今後もマブスの経営にかかわるつもりだが、契約でその立場が保証されているわけではなく、今後は不透明だ。長年に渡ってマブスを運営してきたことについて「誇りに思うと言えるのかどうかは分からないが、その1分1秒を愛してきた」と涙ぐんだ。
最近ではサンズがオーナー変更により、チームの運営ポリシーが大きく変わった。ホーネッツもマイケル・ジョーダンがオーナーではなくなり、これから変化があるだろう。マブスにも大きな変化が訪れる可能性はある。