境さくら

「エースをメインコートに」の思いで、逆転勝利を呼び込む

ウインターカップ3日目、準々決勝で東海大学付属福岡と大阪薫英女学院が激突した。

最初にペースをつかんだのは東海大福岡はチャラウ アミの高さのアドバンテージを生かしつつ、アグレッシブに攻めた結果、第1クォーター残り2分の時点で14-6と先手を取った。しかし、ギアを上げた薫英の攻めるようなディフェンスの前にミスが続いて逆転を許すと、その後は一時2桁のビハインドを背負うなど、追いかける展開が最後まで続いた。

それでも、東海大福岡はあきらめることなく、分のあるインサイドプレーで徐々に点差を縮めると、最終クォーター残り33秒に浜口ゆずの3ポイントシュートで同点に追いついた。そして、直後のポゼッションを守り切るとすぐさま攻撃に転じ、フリーになった伊東友莉香がゴール下を決めて、65-63で勝利した。

東海大福岡は前回大会の3回戦で優勝候補の桜花学園と対戦し、境のミラクルな4点プレーによって大金星を挙げた。一躍脚光を浴びたが、そのイメージが先行し過ぎたことで苦労したこともあったと、キャプテンの境さくらは言う。

「東海を見るたびに『桜花の時はすごかったね』って、去年のことばかり言われてきました。自分たちの代はインターハイも出れなくて、全国も出たことがなく、今年は勝てないチームって思われているのが本当に悔しかったです」

さらにエースの浜口さくらが手術を選択し、ウインターカップの欠場を余儀なくされた。しかし、誰よりも悔しいはずの彼女がチームのためにすべてを尽くす姿勢が今回の勝利に繋がったという。

「負けたら最後で、今年にかける思いは強いものがありました。出れなくて悔しいのは本人だと思うのに、それでも一生懸命にサポートしてくれていたので、さくらの分まで絶対に勝ちたいし、メインコートに連れていきたいという思いはありました」

前述の通り、東海大福岡は追いかける時間が長く続いた。点差がなかなか詰まらない状況で集中力を欠いてもおかしくはなかったが、境は「負ける気がしなかった」という。それは「さくらの分まで」というチーム全体の思いが一つになっていたからだ。

「自分たちは3年生が4人しかいなくて、下級生が多いチームなので、 チームみんなでというのが合言葉です。ベンチもコートにいる人も、先生も、応援してくれる人も全員で作る。そこの一体感が強みです。また、流れが悪い時にベンチを見たらさくらが一生懸命声を出していて、『さくらのためにも勝たないとな』って。こんなに下向きな気持ちになっているのがなんか恥ずかしいなって思い、そこで勇気をもらいました」

準決勝は連覇を狙う京都精華学園と対戦する。「去年負けた相手なのでリベンジもあるんですけど、今年は今年のチームです。走るバスケットからの厳しいディフェンスをコンセプトにずっとやってきているので、そこの軸はブラさず、京都精華に勝って全国制覇という目標に近づきたいと思います」

文字通りチーム一丸の力で『今年は勝てないチーム』のレッテルを払拭し、メインコートまでたどり着いた東海大福岡。勢いに乗り、昨年の桜花超えを上回るインパクトを与えてくれるはずだ。