株式会社ティーアンドエスは日本最大級のバスケメディア『BASKET COUNT』を立ち上げるなど、バスケ界の発展に寄与してきた。2022年8月に事業を株式会社マイネットに譲渡したが、香川ファイブアローズのダンスパフォーマンス集団『United Archers』をプロデュースし、ティーアンドエスが抱えるテックダンスフュージョン集団『CONDENSE』がサンロッカーズ渋谷のBリーグ開幕戦のプロデュースを行うなど、現在もバスケ界との関りは深い。
そして今回、『CONDENSE』が福岡県を拠点にバスケットボールの技術や戦術を高いレベルで学ぶことができるプログラムを提供する『WATCH&C ACADEMY』にスポンサードすることに。『WATCH&C ACADEMY』はbjリーグ時代に2度のベスト5を受賞したことでも知られる青木康平を中心に、高いレベルでバスケに携わってきたコーチ陣を擁する。また、スパーズでアスレティックトレーナートレーナーを務めた経歴を持つ『DICE』こと山口大輔がパフォーマンススーパバイザーを務め、バスケに打ち込める環境が整っている。
ティーアンドエスの代表取締役を務める稲葉繁樹、『WATCH&C ACADEMY』の代表であり、元プロバスケットボール選手の青木康平が対談を行った。
「学校じゃない場所で教育を提供するのは本当に大変なこと」
――前編では二人が繋がった経緯について語っていただきました。あらためて、今後の展望についてお聞かせください。
稲葉 何故我々が青木君に期待してスポンサーするかというと、青木君のカルチャーのとらえ方と教育のとらえ方が特徴的だと思うからです。普通の部活生が大会で優勝を目指すとか、プライべートな大会に参加することも素晴らしいことだと思います。ただ、青木君がやっている会場にDJがいるカップ戦とか、そういうアメリカ特有のカルチャーを落とし込むことで、さらにバスケって楽しいなっていう雰囲気が作られるかと。それって教育的にも意味があるし、バスケ熱の向上にも繋がっていくと思います。
青木 本来、バスケットボールってアメリカで生まれて日本に入ってきたモノじゃないですか。アメリカがすべてとは思っていないですが、日本のバスケットは学校がメインになっています。特に小学校や中学校って独自の暗黙のルールみたいなモノがあって、僕はそれにあまり共感ができないんです。例えば、時間があれば会場の準備に来てくださいと言われますが、行ける時は行っているんですけど、行けない時にめちゃくちゃ文句を言われるんです。文句を言うなら、絶対に来てくださいと言うべきで、だから僕らは嫌われているんですけど(笑)。でも僕らは人の顔色を伺いながら運営するのは嫌なので、そういうのは一切させていません。
何が言いたいかというと、悪しき習慣を変えたいと言うか。稲葉さんがポジティブにとらえてくれましたが、僕なりのポリシーがあるんです。それをこれからも大事にしながら、今いる子どもたちの環境を良くしていきたいです。
稲葉 学校じゃない場所で教育を提供するのは本当に大変なこと。青木君は元々プロだし、ケガもして、いろんな苦労を重ねて現在に至った。プロになる前から、プロ的な立場を得られた人の体験談を聞けたり、プロになるために身体を鍛えたりスキルを伸ばしたり、そういうきっかけを与えられるところが『WATCH&C ACADEMY』の良いところだと思っています。
『CONDENSE』は世界大会で優勝したことがある、その道のプロ集団。バスケとダンスでカテゴリーは違うけど、プロを目指すには何が必要かというのをスキルだけじゃない部分でも共有できると思う。
他のクラブは選考もあったり、誰でも入れるわけではなく、それは教育というより装置だと思う。青木君の場合は平等であり、さらにプロよりも装置的な面もありながら教育の場でもある。プロ選手になることが人生のゴールじゃないっていう教えが他との違いかな。
青木 僕らは心の自立を目指しています。中学生は半分大人で半分子供。半分子供の理由はただ、経験値がないだけだと思っていて、良い悪いの判断はできるけど、その判断も大人からしたら間違っていることもあります。良い経験も悪い経験もした中で、その結果を落としこむことで自立ができる。子どもたちに何が好きかを聞いても、自問をしたことがないので意外と答えが返ってこないんです。常に自分を知ることは大切だし、自分を知ることで他人への興味もわいて、自分を持てるようになる。バスケットを使ってそういうことを伝えています。
稲葉 親に応援されることは当たり前じゃないから親にも感謝する。こうやってチームがあることに対して、青木君にも感謝するべき。こういうことを子どもたちには伝えていきたい。今回『CONDENSE』として『WATCH&C』にスポンサーすることで、僕らのことも応援してほしい。先にgiveが来ること、感謝してると感謝されることを体感して、成長していってほしいね。
青木 そうですね。たまたまウチの卒業生がバスケット界で頑張っているんですけど、5年後、10年後にウチの卒業生の中から日本の社会に貢献するような子が現れることを僕は楽しみにしているんです。人に必要とされる存在が生まれること、そこに意味があると思っています。
稲葉 うん、それこそ今年も白熱したウインターカップになったけど、小、中学生年代だけでなく、高校生たちも含めた年代も一緒に応援していきたいね。