「他のチームの倍走って、運動量でベスト8まで」
福井県の県立足羽は12月23日のウインターカップ2023開幕戦で埼玉栄と対戦。93-84で初戦を突破した。公立校でサイズのないチームではあるが、ペースを上げながらコート上の5人が連動して作ったスペースを巧みに使う全員バスケが持ち味。その中でも2年生エースの平野里奈は、華麗なフィニッシュを沈めるスキルを備えている。
それでも東京体育館のコートならではの緊張感があり、強い意気込みがプレッシャーディフェンスの強度が高すぎてのファウル連発を招き、チームファウルが溜まって出足の鋭さを発揮できない序盤となった。その状況でチームを救ったのが平野だった。最初の一歩が早く、チームメートの意思疎通のレベルの高さも生かして得点期待値の高いレイアップの機会を作っては決め、得点を繋いでいく。
先行する埼玉栄はミドルレンジでのジャンプシュートを確率良く決めていたが、高確率が40分間続くことはない。ファウルに苦しみながらも第1クォーターを23-23でまとめた県立足羽はそこから攻守の強度を上げ、第2クォーターで31-19と突き放した。
「序盤はなかなか差を付けられない展開でしたが、何とか自分のプレーでファウルをたくさんもらって、自分らしくやれたと思います」と平野は語る。「後半はチーム全体でたくさん走って、良い雰囲気で得点を重ねられました」
第3クォーターは24-19と上回り、リードを17点へと広げて最終クォーターへ。終盤に埼玉栄が追い上げる時間帯はあったものの、危なげない試合運びで勝利を収めている。
平野はフィールドゴール13本中8本成功、8本得たフリースローはすべて決めて24得点を記録した。積極的にリムへとアタックし、激しいディフェンスに晒されても最後まで攻め切る意思を貫いたことが、バスケット・カウントを何度も獲得することに繋がった。「絶対に決めるという強い気持ちが大事です」と平野は言う。「私たちにはサイズがないのでワンテンポ遅れると中に入っていけないんですけど、その一瞬で強く行けば飛び込んでいけるので、そのタイミングを見逃さず、強い気持ちで攻めていきます」
平野の強気なアタックは目立ったが、馬場雛子が20得点、竹下りのが14得点と2年生が大舞台に動じることなく結果を出し、ポイントガードの廣野智依菜のテンポの良いプレーメークも光った。エースの平野を休ませる時間帯には一転してアウトサイド中心となる攻めのメリハリも効いていた。簡単は展開ではなかったが、ここまで磨き上げてきた県立足羽のバスケをウインターカップの舞台で披露できた。10分以上プレーした選手が9人とベンチメンバーを活用し、常にフレッシュな選手をコートに立たせる強みも見せている。
この日の1勝は、ウインターカップでも自分たちのバスケをやれるという自信になる。目指すは全国ベスト8。平野は「まだまだ通過点ですけど、緊張に打ち勝つことができたのは明日への自信になります。自分たちは小さいチームなので、他のチームの倍走って、運動量でベスト8まで行きたいです」と語り、明日の和歌山信愛戦での必勝を誓った。