1年時から東山の中心としてキャリアを積む瀬川琉久は2年生ながらエースを任されている。去年はゲームキャプテンの佐藤友(3年)との二本柱だったが、今年はガードの佐藤凪が入学。持ち味の得点力で瀬川の負担を減らしている。インターハイは決勝で日本航空に敗れ、トップリーグは開志国際に屈していずれも2位に終わった。2年生エースと伸び盛りのルーキーの力で初の日本一に導き、「シルバーコレクター」を返上する。

「純粋でかわいいけどバスケは1年生っぽくない」

──自己紹介をお願いします。

佐藤 大道中学と横浜ビー・コルセアーズU15でプレーして、東山に入学しました。好きな食べ物はオムライスで、好きなタイプはかわいくてバスケを応援してくれる人。ドライブや3ポイントなど点を取ることが得意です。

──瀬川選手から見て佐藤選手はどんなキャラクターですか。

瀬川 試合中や練習中、バスケに関わってくると、良い意味で1年生っぽくないですね。堂々としているし、気持ちが強い。普段はめちゃめちゃかわいくて、純粋なんです。俺がずっと機嫌が悪くてブチギレるみたいな「ガチギレドッキリ」をたまに仕掛けるんですが、何も悪いことしてないのに泣きそうになるんですよ。かわいいですね。

佐藤 それは「別に」って感じです。いつもいじられてます。でも、取材などでは良いところを言ってくれるので、ちょっとうれしいです。

──チームとして成長していると評価が上がっています。

瀬川 1年生のスタートのカンダ・マビカ・サロモンと凪がチームになじんできました。4月末の飯塚カップはサロモンがいなくて、凪は入ったばかりでまだなじめていなかったです。インターハイが近づくにつれて、凪もチームバスケットを理解し始めました。佐藤友さんと凪と自分が噛み合ったのがインターハイだったと思います。

──飯塚カップからどう成長して、堂々とやれるようになってきましたか。

佐藤 すぐには上手くいかなくて、インターハイ予選でも迷いや難しい時間が長かったです。近畿大会で吹っ切れて、一つ成長したのはあります。先輩方が4月からずっと「もっとやっていい」と言ってくれていて、やらなきゃいけないという自覚が持てたので、成長できたと思います。

──インターハイ決勝は波に呑まれたような印象を受けました。

瀬川 1、2回戦は自分たちのリズムでやれていなくて、準々決勝の藤枝明誠さんと準決勝の福岡第一さんの時は自分たちのリズムでやれました。波に乗れたかなと思ったんですけど、日本航空との決勝は、前半は良い流れでスタートを切れて、そこで気持ちが浮かれてしまったかと。その時に周りに任せてしまって、エースとして攻めないといけない場面でパスを回してしまい、流れを変えられなかったです。

瀬川琉久

「いつもは優しいのに試合になった瞬間オーラが出る」

──2年生になってエースの覚悟が強固になっているように感じます。佐藤選手から見て瀬川選手はどんな先輩ですか。

佐藤 インターハイの時もそうでしたけど、いつもは優しい感じですけど、試合になった瞬間に目つきが変わって、勝ちへの執念みたいなオーラが感じられます。自分もただついていくだけじゃなくて、もっとやってやろうとなります。琉久さんだけに任せてしまうと、東山のリズムかではなくなってしまうので。

──エースとして、チームを勝たせる難しさも感じているのでは。

瀬川 メディア、大澤徹也先生からもエースと言われて、自覚は持っていたつもりでした。でもトップリーグの開志国際戦の残り34秒、81-84の接戦でラストショットを任されたんですが、どうしても自分で攻められなくて、友さんにパスをして、カットされて81-86で負けました。それを機にもっとエースとしての自覚を持つ、ガードとしてのゲームコントロールをもっと磨いていかないといけないと思いました。

──ウインターカップ京都府予選で1位を取れました。

瀬川 米須玲音さん(現日本大3年)が2020年のウインターカップ予選で洛南さんに負けて、そこから予選で3年間勝てませんでした。今年はインターハイに行けたんですけど、去年、一昨年は負けてインターハイも出られなくて、一昨年のウインターも2位で出場でした。去年は3位で出られなかったですし、今年こそ絶対に勝ってやろうという気持ちは自分たちも大澤先生も強かったと思い ます。目標は圧勝でしたが、京都精華学園さんもチームの底力を上げてきました。逆転勝ちで終われたんですけど、あの状況のまま本大会に臨んでしまうと、すぐに足をすくわれると思っています。

──トップリーグの新人BEST5賞に選ばれた感想を。

佐藤 素直にうれしかったですけど、トップリーグを通じて、福岡第一の宮本聡と耀のツインズや、仙台大学附属明成の小田嶌秋斗、福岡大学附属大濠の榎木璃旺という1年生のガード陣が活躍しているのを見て、一層負けたくない気持ちが強くなりました。

──トップリーグを終えて、成長した部分は。

瀬川 優勝を掲げる一方、勝負にこだわるより冬に勝つための材料集めをしていました。大澤先生と共通理解の中でやっていましたが、開志国際戦で勝ちゲームを落としたのは自分のせいです。悔しくて、試合後ずっと号泣していました。翌日は明成戦だったので、その日のうちに切り替えなきゃと思ったんですけど、食事が終わって自分の部屋に戻る時に、涙が出てきて、めっちゃ悔しかったです。

瀬川琉久

「昨年逃した夢の舞台にやっと出られる」

──ウインターカップへの思い入れは。

瀬川 兄が北陸で出場して、自分は小学校4、5年ぐらいで応援に行って、会場の雰囲気かのすごさに鳥肌が立ちました。本気でこの舞台でやりたいという思いが芽生えました。中学ではジュニアウインターカップに出たんですけど、コロナ禍で、無観客でした。優勝したけど思っていた光景と違いました。やっと夢見ていた舞台でやれる。東山に行ったら出るのが当たり前だと勝手に思っていて、去年は出られず相当悔しかったです。メディアからも優勝候補として名前を挙げられているので、期待に応えられるようにチームを引っ張ります。去年は両洋戦の最後に鼻を骨折しました。次の日が洛南戦で、医者からは「絶対に出たらダメ」と言われたんですけど、出なくて後悔するよりは出て後悔した方がいい。フェイスガードをつけて試合に出ました。

──優勝に向けてあと1歩足りないポイントは。

佐藤 個人的にはインターハイもトップリーグも波があったのが課題です。トップリーグの開志国際戦は特にスタートダッシュがよかったのに、失速してしまいました。安定して良いプレーが続けられるようにしたいです。

──瀬川選手から佐藤選手へ助言は。

瀬川 ものすごく期待していますけど、1年生なのでまだ迷いが出ます。あと1年一緒にやれるので、2年時に安定できるようにしてもらったらいいと思っています。

──瀬川選手が1年時に感じたから、分かる気持ちですか。

瀬川 めっちゃ分かります。まだ1年生でメディアやチームからも期待されて、重圧に悩んだ時もありました。今年は僕と友さんがいるのでまだ軽い。去年は僕と友さんがメインでやって、友さんが止められたら自分が攻めないといけないという重圧にやられました。凪には思い切って、1年生らしくミスを気にせずにやってほしいなと思います。

──負けたくない選手とチームを。

佐藤 個人的なライバルはいっぱいいます。順当に勝ち上がれば、準々決勝で当たる福岡第 一の宮本兄弟です。逆の山では尽誠学園の金山楓。インターハイでものすごいスタッツを残していたので超えてやろうと。チームは準々決勝で福岡第一さん、準決勝でずっと勝てていない開志国際さんとやる可能性が高いので、まずはそこが目標です。

瀬川 個人的には、小学生の頃からずっとライバルの開志国際の平良宗龍。同い年は宗龍以外あまり見ていなくて、1個上で言うと崎濱秀斗さんか赤間賢人さんです。準々決勝で当たると思うので負けたくないです。赤間さんはインターハイ準々決勝で当たって、僕は35得点、赤間さんが40得点というスタッツでした。チームで勝ったから別にそこまで悔しいとはならなかったん ですけど、5点差で負けたので、次こそは点数も含めすべてで上回ってやろうっていう気持ちです。チームは、開志国際さんにずっと勝てていないので絶対に勝ちたい。インターハイ決勝で戦った日本航空さんが決勝に上がってきた時にはリベンジしたいですね。

──大澤コーチや応援してくれる方々への思いを。

佐藤 大澤先生には入学当初からスタートで自分を使ってもらって、「どんなにダメでも、 とにかくやり続けよう」、「点を取りに行き続けろ」と言ってくれたおかげで、ブレずにやり続けられました。今大会はチームとしての結果もそうですけど、個人的にも大澤先生を満足させられるようなパフォーマンスを見せたいです。

瀬川 原点になるゴッドドア監督の本間雄二コーチにすごくお世話になりました。兄が本間コーチに教わっていたのもあって、僕が幼稚園の頃から中学校3年までずっと面倒を見てくれて、バスケットを教えてくれてここまで成長できました。「県外に行っていいよ」と言ってくれて、 東山に送り出してくれました。中学で日本一を取ったんですけど、高校でも期待に応えないといけないですし、東山でも日本一を取りたい。大澤先生は将来や進路など入学前からいろんな話をさせてもらって応援してくれます。大澤先生はまだ日本一を取れていなくて2位が多かったです。悔しい思いをしていると思うので、今年こそは日本一を取ってみんなで笑って終わりたいです。