佐藤久夫コーチを6月に亡くした仙台大学附属明成は悲しみを乗り越え、畠山俊樹コーチの下、日本一を目指している。今年のチームを牽引するのは主将の村忠俊、198cmのウィリアムス・ショーン莉音(まりおん)、佐藤晴の3年生トリオだ。亡き恩師の教えを受け継ぎ、明成の新たな歴史を作っていく。初戦の相手は福岡第一。強豪同士の組み合わせに燃える3選手に大会への意気込み、佐藤コーチへの思いを語ってもらった。
「一番苦しかったのは先生。自分たちの明るさで元気にしよう」
——村キャプテン、自己紹介をお願いします。
村 東京都出身で 日本学園中学校でした。好きな食べ物はカレーライスです。
佐藤 村はスピードがあって、ドライブで切っていったり、そこからのパスがあったり。3ポイントも安定してきてアウトサイドもしっかり入る選手です。普段はいじられキャラです。
ショーン 私生活ではしょうもないいたずらや、ちょっかいをかけてくるので、かわいいなって感じです。
——キャプテンはいじられるかわいいキャラなんですね。続いて佐藤選手は?
佐藤 秋田県出身で羽後中学校でした。好きな食べ物は肉全般です。
ショーン 佐藤はオフェンス能力が高くて、1対1を仕掛ければかなりの確率で点数を決めてくれます。ちょっと体力には難がありますが……。
村 食べ物を勝手に食べるので、それは直してほしいです。遠征中に小さいケーキを楽しみにしていたんですけど、自分が飲み物を取りに行っている間に食べられてしまって。それがかなりウザかったです。
——ショーン選手もお願います。
ショーン 東京都出身で足立区立第九中学校でした。好きな食べ物はフライドポテトです。
村 ショーンは身長もあるし、手足も長いです。それを生かしたゴール下のプレーに加えて、アウトサイドのシュートも上手い。最近は3ポイントも決めているので、リバウンドも含めて大黒柱です。
佐藤 ショーンもいじられる数は多いです。動物に例えられたり、滑舌の部分で結構いじられています。村は幼稚園児っぽい発言が多くて、それを真似まねされていますね。
——佐藤先生がお亡くなりになられ、様々な感情があったと思います。
村 ウインターカップが終わって、先生が最初に自分たちに与えてくれたテーマが「明るく元気に」でした。インターハイまではアシスタントコーチの高橋陽介さんが久夫先生の代わりにコーチをしてくれて、3年生が主体となって練習を作ったり、試合でも声を掛けあったりしていました。一番苦労したのは、(畠山)俊樹さんに変わってからで、一からバスケットを作ることになり、最初は正直うまくいきませんでした。練習試合やトップリーグ、練習を重ねていく中で成長し、今はやることも決まってきて、ディフェンスも最初の頃よりレベルアップしてまとまってきました。
——佐藤先生の体調が回復せず、手術を受ける中、どういった気持ちで日々を過ごしましたか。
佐藤 先生の体調が優れずに練習に来られない日が増えて、常に不安はありました。インターハイ予選が近づき、先生のバスケットを一番よく知っているのは3年生なので、それを後輩たちに伝えながらプレーすることが多かったです。
ショーン 久夫先生が練習に来られなくなって、辛く不安でしたが、一番苦しくて辛いのは久夫先生です。先生を元気にするのも、自分たちの明るさ、元気の良さだと常に忘れず、ミーティングや練習中に声を掛け合って、励まし合って乗り越えていきました。
村 大きく変わったのは土浦日本大学高校とのインターハイ1回戦です。第2クォーター途中で最大23点を追っていたんですが、みんなでディフェンスを頑張って、試合に出ている人もベンチも応援席も一つになった結果、延長戦に持ち込んで78-71で勝利をつかむことができました。 そこまではチームが同じ方向を向いていなくバラバラでしたが、それが一つにまとまった試合でした。
佐藤 あの試合は立ち上がりの悪さがすべて出ました。インターハイまでに課題を直せないまま初戦に臨んでしまいました。でも苦しい時間帯に我慢してやるべきことをやれば、接戦の中で勝ち切れるというのを肌で感じました。
「覚悟を決めて俊樹さんとバスケットを作ろう」
―畠山監督が就任して、一からのチーム作りは大変だったと思います。
ショーン OBでプロの舞台も経験した畠山さんに教えてもらえることになり、どういうバスケットを教えてくれるのか楽しみでした。でも実際にやってみると、考えるバスケットなので、チームとしてうまく共通理解を持てなかったです。誰か1人がボーっとしていると成り立たず、うまく攻めきれない状況が続いて、苦しみました。
村 先生が亡くなって、俊樹さんがヘッドコーチになると決まり、全員が覚悟を決めて、俊樹さんと一緒に新たなバスケットを作ろうと切り替えました。俊樹さんも監督は初めてで、自分たちと一緒に作っていく中で、うまくいったことや、改善案などを話せました。
——対戦カードが発表され一番注目される1回戦となりました。決まった瞬間はどうでしたか。
佐藤 正直、見た瞬間に時が止まったというか、驚きを隠せなかったです。でもいずれはやらなければいけない相手です。出し惜しみなく、初戦から全力を出せるのはプラスだと考えるようになりました。
ショーン 崎濱秀斗やアピア・パトリック眞とは連絡を取っていて、ケガから間に合うことは知っていました。2人が復帰して完全態勢の福岡第一が相手でも、自分たちがやるべきことは変わらりません。負ける気もないですし、残り2週間弱でバスケットの質を上げて、出し惜しみせずにやるしかないと思っています。
村「本当にめちゃくちゃ苦しんだ3年間でした」
——日本一になるために、さらに強化したいポイントは。
村 オフェンスの流れが悪い時にズルズル行って、ディフェンスにも影響が出て、そこで点差が離れてしまうことが多かったです。その時間帯をどう断ち切るかが課題だと思います。
佐藤 一人ひとりが日本一という目標に向かうことが大事です。1人でも別の方向を向けば遠ざかってしまうので、全員が同じ方向を向いて、どれだけ練習の中で緊張感を持って試合までやっていけるかだと思います。
——チームや個人としてライバル視している存在はありますか?
ショーン チームとして一番のライバルは福岡第一です。福岡第一もディフェンスで粘って、オフェンスに繋げてくるチームでがむしゃらに高校生らしく頑張るところも似ていると思っています。個人的に負けたくない選手はチームメートの佐藤晴なんですけど、他のチームでは福岡第一のアピアです。同じビックマンの留学生には絶対に誰にも負けたくないです。
——特別な3年間だったと思います。
村 本当にめちゃくちゃ苦しんだ3年間でした。 1年時は試合に出るチャンスはあまりなく、ほとんどをBチームで過ごしました。2年になって少しだけ試合に絡めるようになりましたが、あまり試合には出られなかったです。新チームになって先生が軸となる選手としてショーンと晴と自分を選んでくれて、「自分がやらないといけない」と責任を持つようになりました。
——最後のウインターカップはどのようなプレーを見てもらいたいですか。
佐藤 集大成なので、悔いのない試合をして、チャンピオンフラッグを取りたいです。持ち味の1対1からのドライブを見てほしいです。
ショーン 久夫先生のことがあって、OBの方々が手伝いに来てくれて、差し入れもいただきました。今、バスケットができている環境に感謝して、試合の内容や結果で恩返ししたいです。
村 明成は高校生らしく全力で一生懸命やっています。足を使ったディフェンス、ルーズボール、リバウンドを40分間徹底して、オフェンスではとにかく走って、がむしゃらに戦っていきます。日本一を取って久夫先生に恩返しをする気持ち、感謝の気持ちを持って大会に臨みたいと思っています。