佐藤HC「うれしい!というより、本当にホッとしたというのが正直な気持ちです」
12月10日、大学女子の日本一を決めるインカレ決勝戦が行われ、7連覇を目指す東京医療保健大学と2016年以来の頂点を狙う白鷗大学が激突した。5年連続の組み合わせとなった宿命のライバル対決は、過去4連敗中だった白鷗大が79-69で制し悲願の東京医療超えを果たした。
序盤、白鷗大はオコンクウォ・スーザン・アマカがローポストから確実に得点を重ねると、さらに田中平和の力強いインサイドアタックなど、ゴール下の攻防で主導権を握り第1クォーターで27-17と先手を取る。
第2クォーターに入っても白鷗のペースで続くが、東京医療は池松美波が切れ味鋭いドライブで白鷗ディフェンスを切り崩して応戦。点差を縮めると、第3クォーター立ち上がりから守備のプレッシャーを強めた東京医療が47-47と追いつく。だが、ここから白鷗もディフェンスを立て直すと、ともにシュートが入らない膠着状態が続いた。
しかし、白鷗は司令塔の樋口鈴乃が個人技で打開することで突き放しにかかると、東京医療は攻撃の起点となっていた池松が膝を痛めて負傷退場する痛恨のアクシデントに見舞われた。オフェンスに手詰まり感が出てきた東京医療に対し、白鷗は引き続き樋口のアタックが冴え渡る。また、白鷗はアマカが守護神として君臨し、東京医療のゴール下での得点をよく抑えた。なんとか3ポイントシュートに活路を見い出したい東京医療だったが、21本中4本成功に留まった。こうして大半の時間でリードを保った白鷗が、安定の試合運びで通算2度目の日本一に輝いた。
今シーズンも関東大学女子リーグを制して2連覇を達成したように、ここ数年の白鷗大は東京医療大から何度か勝利を挙げてきたが、最も大きな意味を持つインカレ決勝では負け続けていた。ようやくの連敗ストップに佐藤智信ヘッドコーチは、「うれしい!というより本当にホッとしたというのが正直な気持ちです」と、安堵の表情を見せる。
そして、次のように教え子たちにも思いを馳せ、ライバルへの敬意を強調する。「この5年、6年と医療さんが良いバスケットをするので、それに追いつけ追い越せの気持ちでした。『負けて卒業した学生たちに本当に悪いことをした。もうちょっと僕に工夫がいろいろとあったら良い結果だったのではないか』、そういう思いも含めて自分も成長できました。そして、OGの思いも背負って選手たちは戦ってくれました」
「大学チャンピオンになったからこそENEOSさんと対戦できる資格がある」
4年生のキャプテン、樋口は21得点4アシスト4リバウンドを記録と決勝で最も大きなインパクトを与えた。特に後半に東京医療の激しい猛追に遭いながらも常にリードをキープできていたのは、ここ一番で樋口がプルアップシュートやドライブからのレイアップで得点を重ねたからだ。
優勝の立役者は、このように喜びを語る。「この瞬間を4年間、ずっと追いかけてきたのでうれしいの一言です。1年間やってきたことを40分間、徹底してできたことが今日の勝因だったと思います」
今年の白鷗大は、大学界最強センターと言える3年生のアマカに加え、4年生では先日にアーリーエントリーでトヨタ自動車アンテロープス加入が発表された三浦舞華と田中平和、富士通レッドウェーブ加入の桐原麻尋などタレントが揃っていた。彼女たちと同じく、佐藤ヘッドコーチは樋口に絶大な信頼を寄せる。
「『どこで攻めないといけない、どこをきちんと守らないといけない』という、僕が意図することを樋口は分かってくれています。そしてキャプテンシーがすごくあり、この子だったら心中できるという選手なので全面的に信頼を置いています」
そして、樋口も「まず、自分が行って突破口を開こうという気持ちでした」とチームを牽引した。そこには、次のような強い思いがあった。「1年生の時は全く試合に出られず、2年生、3年生は少ししか試合に出られなかったです。その悔しさを試合で晴らしたい気持ちはチームの中でも強い方だと思います。最後は自分が絶対に勝負を決めようという気持ちでした」
まさに有言実行した樋口だが、彼女の学生キャリアはまだ終わりではない。水曜日には皇后杯のベスト8でWリーグの女王・ENEOSサンフラワーズと対戦する。この一戦が控えていることも、モチベーションを高める一つとなった。
「『ここで負けて皇后杯に出るのはなんか違うよね』と、みんなで話していました。大学チャンピオンになったからこそENEOSさんと対戦できる資格がある。大学の代表としてしっかり戦いたいです」
経験、タレント力ともにENEOSが圧倒的に有利であることは間違いない。ただ、今の白鷗大には、長年のライバルを下したこれ以上ない勢いがある。樋口やチームには決勝で見せたエナジー全開のアグレッシブなプレーを、同じ代々木第二体育館で引き続き見せてもらいたい。