レブロン

『マスト・ウィン』の戦いぶりが大会を盛り上げる

初の試みとなったインシーズン・トーナメントはレイカーズとペイサーズがファイナルへと進みました。『インシーズン』と言えども、グループリーグからコートは派手に装飾されて特別感が演出され、セミファイナルからはラスベガスでの開催とNBAはエンタテインメントとしての魅力向上を打ち出しています。

同時に目の前の勝利にこだわらない戦い方の見られるシーズンの試合に、プレーオフのような『負けられない』という緊張感を持たせたい思惑もあったはずです。ファイナルへと進んだ両チームはまさに『マスト・ウィン』の戦いぶりを見せて勝ち上がってきました。

38歳となり衰えも感じさせるレブロン・ジェームズは、今シーズンはキャリアで最も短いプレータイムになっていますが、トーナメント初戦のサンズ戦では40分プレーして得失点差は+12点とスターターで唯一のプラスを記録しました。セミファイナルのペリカンズ戦では3ポイントシュート4本すべてを決めての30得点、8アシストで得失点差+36点を稼ぎ、わずか22分半しかプレーしなかったものの、昨シーズン終了時点で引退をほのめかした選手とは思えない圧巻のパフォーマンスでした。

他の選手とは段違いの『マスト・ウィン』の経験を持つレブロンは、通常の試合とは明らかに異なる集中力を発揮して勝負強く得点を奪うだけでなく、相手のディフェンスが対応を変えても簡単にアジャストするインテリジェンスの高さが際立っています。生半可な対策ではレブロンの経験値を上回ることは難しく、同じように経験を重ねているケビン・デュラントのような相手でなければ太刀打ちできないことを示しました。

しかし、イーストでは選手個人の経験値に乏しいはずのペイサーズが、リーグ最高のオフェンス力でライバルたちを蹴散らしました。優勝も経験しているヘッドコーチのリック・カーライルは、セルティックス戦ではプレーオフさながらに起用する選手を絞り、高速バスケで振り切ったかと思えば、バックス戦ではフィジカルに戦えるアイザイア・ジャクソンを起用するなど、通常の起用法にとらわれない『マスト・ウィン』の采配で勝利を手繰り寄せました。

そしてプレーオフを1試合も経験していないタイリース・ハリバートンが経験値など関係ないと言わんばかりに、セルティックス戦ではトリプル・ダブル、バックス戦では27得点15アシスト、そして2試合を通じて驚異のターンオーバー0と完璧なプレーを見せています。「選手の本当の価値はプレーオフでしか測れない」と言われますが、初めてのインシーズン・トーナメントはハリバートンの価値を証明するためにあったと言っても過言ではありません。

誰よりも『マスト・ウィン』で結果を出してきたレブロンと、初めての『マスト・ウィン』で価値を示したハリバートン。ディフェンスを中心にした戦い方の中で勝負強さを見せるレイカーズと、オフェンスに振り切った高速バスケで打ち勝つペイサーズ。対照的な両チームが初めてのタイトルを争います。