ハイメ・ハケスJr.

レブロン・ジェームズとの対戦「信じられない経験」

ヒートはジミー・バトラーやバム・アデバヨといったスター選手を擁しているが、その強さは彼らがチーム内で育った選手たちとともに常にハードに戦う『ヒート・カルチャー』に支えられている。ただし新陳代謝は激しく、今オフにはゲイブ・ビンセントとマックス・ストゥルースがチームを去り、その穴は誰かがステップアップして埋めなければならない。

それでも、次から次へと新たな戦力が台頭するのがヒートというチームだ。今シーズンも開幕したばかりだが、すでにハイメ・ハケスJr.がローテーションに食い込み、存在感を放っている。ハケスJr.は今年のNBAドラフト1巡目18位でヒートに指名されたルーキーだが、ここまで開幕から8試合すべてに出場し、うち2試合では先発を任された。

その持ち味は運動能力とサイズ、ウイングスパンを生かした粘り強いディフェンスで、ルーキーではあるがヒートのスタイルをよく理解している。スモールフォワードの彼はデビュー早々にジェイソン・テイタム、アンソニー・エドワーズ、レブロン・ジェームズとNBAのトップスター選手のマークを任された。レブロンとマッチアップした時には「信じられない経験ができた。いつか父親になったら、今日の出来事を子供たちに話さなきゃね」と語っている。

ヒートを率いるエリック・スポールストラは、次のような言葉でハケスJr.のディフェンスを称賛する。「相手が誰であれ決して臆すことなく立ち向かう。身体能力だけでなく気持ちも強く、ペリメーターで相手を止め、ペイントエリアでも対応できる。我々のプレースタイルを学び、よく理解している。接触を恐れないからウチに合っているよ」

驚くべきことに、彼は試合の最後の時間帯を任されることもある。現地11月8日のグリズリーズ戦では第4クォーターにフル出場。10点前後のリードを終盤に吐き出す中でも混乱に陥ることなく、最後までやるべきディフェンスを遂行した。そしてこの試合の最後には、3ポイントシュートで勝負を決めてもいる。ディフェンスでは堂々のパフォーマンスを見せているが、オフェンスでは平均18.6分の出場時間があっても6.5得点と目立った活躍はできていない。その彼が105-102と1ポゼッション差に詰め寄られた残り18秒に3ポイントシュートを決めたのだ。

この試合では21分プレーして、それまで3ポイントシュートは打っていなかった。失敗できない場面で思い切り良く打ったことに意味がある。「本当はもっとしっかり試合をコントロールして、危ない場面を作るべきではなかった。でも、簡単に勝てる試合なんてないんだから、勝利を喜びたい。僕個人で言えば、チームのために必要なタイミングで結果を出せて良かった」と彼は言う。

「ディフェンスではミスをしないのが一番。オフェンスでは打つべきシュートを打ち、決めるべきチャンスを決めること。NBAでプレータイムを得るには、信頼を一つずつ積み重ねていくしかない。コーチが自信を持って僕を起用できるよう、努力していくよ。それには時間がかかるけど、そのプロセスをきっちり踏んでいくつもりだ」

スポールストラは実績のない選手でも、使えると判断すれば大胆に起用していくヘッドコーチで、ハケスJr.はすでにある程度の信頼を得ている。スポールストラはUCLAで4年間過ごした彼について「ルーキーだが、すでに様々な経験を積んでいる」と言う。NBAキャリアのスタートは上々。あとはこのままハードワークを続けていけばいい。