ニック・ナースの笑み「面白いチームになっただろう?」
セブンティシクサーズは開幕後にジェームズ・ハーデンのトレードを決行した。夏の間ずっと交渉をまとめられず、この時期までトラブルが長引いたのは反省点だとしても、問題が片付いたことでチームの士気は高まっている。NBA優勝の可能性を追い求めるハーデンの姿勢を指揮官ニック・ナースは批判こそしなかったが「練習や試合に来るか来ないかの話題をせずに済むのはありがたい」と安堵の言葉を漏らしている。
ハーデンとのトレードでニコラス・バトゥーム、ロバート・コビントン、マーカス・モリス、KJ・マーティンが新たに加わり、もともとハーデンが移籍する想定で加入していたケリー・ウーブレイJr.も先発の立場を手に入れた。全員がモチベーション高く、それぞれの形でチームに貢献するつもりでいる。
トバイアス・ハリスが「練習では3チームに分かれて試合をしている。ローテーションに入る選手が15人いるんだ」と話す、その選手層の厚さはシクサーズの新たな武器となる。ジョエル・エンビードは「セルティックスは良い補強をした。NBAで最も充実したロスターに見える。バックスもデイム(デイミアン・リラード)の加入は大きいよね。ヤニス(アデトクンボ)とのコンビはすごく強力だ」と言うが、自分たちのチームにも手応えを感じている。
その手応えは、試合で良いプレーをするたびに、そして勝つたびに自信に変わっていく。現地11月8日にはセルティックスと対戦。昨シーズンのプレーオフで敗れた相手とあって、チームのモチベーションは高かった。終盤に追い上げられたものの、第2クォーター中盤以降のほとんどの時間帯でリードする展開で、106-103と勝利している。
これで開幕戦を落とした後は6連勝で、東カンファレンスの首位に立った。試合後の会見で「面白いチームになっただろう?」とニック・ナースは記者たちに笑いかけた。「規格外の選手であるジョエルがいて、タイリース(マクシー)という新しいスターも出てきた。彼らの周囲を才能のあるアスリートが固めている」
フィジカルに戦い、ハードにプレーする。個人のエゴを捨ててチームとして戦い、ベストを尽くすことを楽しむ。パトリック・ベバリーは今のシクサーズをこう表現する。「大事な戦力が去ったけど、僕らはチームとしてまとまるところから新たなスタイルを見いだそうとしている。お互いに助け合い、ディフェンスを徹底する。勝ち続けているのは当然のことだ」
ただ、開幕後にチームの陣容が固まっただけに、チームはこれから健全な競争を経て形になっていく。「まだ1週間か10日はいろいろ試す。私の考えが間違っていることもあるだろうし、試合で見たことを評価して決断を下し、調整していく。今はまだ流動的だが、ローテーションが固まればもっと良いプレーができる」とニック・ナースは言う。
クリッパーズから加入した選手たちは全員が経験ある即戦力。ナースは開幕前からフルカン・コルクマズやジェイデン・スプリンガーにもチャンスを与え、より重要な選手へと引き上げようとしている。チーム内競争に勝ち負けはあるかもしれないが、そこにエゴがない限りすべてはチームの強化に繋がる。ようやくバスケに集中できるようになった今、シクサーズの雰囲気は非常に良い。