文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

ファウルトラブル後の対応が両チームの明暗を分ける

オールジャパン王者の千葉ジェッツがシーホース三河をポートアリーナ千葉に迎えた第2戦。タイラー・ストーンを欠く状況で昨日は競り勝ったが、第2戦は攻守が噛み合わずに接戦に持ち込むのが精一杯、最後は力負けを喫した。

立ち上がりから両チームとも激しいプレッシャーをかけ、互いに攻めのスピードを上げるもイージーシュートを打たせてもらえず、接触の多いフィジカルな試合に。それでも高さに勝る三河は球際の強さを発揮、特に得点に直結するペイント内で、アイザック・バッツと桜木ジェイアールはもちろん、カットインして来るガード陣も強さを見せ、じわじわとリードを広げていった。

第2クォーターに入ると千葉が反撃を開始する。第1クォーターに3本の3ポイントシュートを決めた富樫勇樹に代わって投入された阿部友和がメリハリの利いたゲームメークを展開。マイケル・パーカーと原修太がシュートタッチ良く得点を重ねていく。三河に2度のタイムアウトを使わせる猛攻で、原のシュートがこぼれたところをパーカーが押し込み、29-27と逆転してオフィシャルタイムアウトを迎えた。

だが、ここから流れは三河へ。ゴール下に走り込むパーカーの動きに対応して抑えることで千葉の勢いを削ぐと、オフィシャルタイムアウト後の5分間で金丸晃輔が12得点の荒稼ぎ。桜木の巧みなアシストから3ポイントシュート、長距離を走るカットインからの合わせと、内外どちらからも得点を量産。44-39とリードして前半を折り返す。

そして後半、立ち上がりの重い展開とはまるで別のオープンな打ち合いが展開される。富樫とパーカーのホットラインで攻める千葉、桜木のポストプレーから多彩な攻めを見せる三河による迫力ある打ち合いとなった。

残り5分36秒、インサイドでの激しい肉弾戦の最中、ヒルトン・アームストロングを投げ飛ばしてしまったバッツが個人ファウル3つとなりベンチへ。その直後に小野龍猛が3ポイントシュートを決めて千葉が逆転する。しかし、三河はバッツが不在となってもギャビン・エドワーズがファイトして力強さを失わない。逆に残り4分7秒、桜木がファウルを誘い、アームストロングをベンチへ追いやると、千葉の勢いは急速にしぼんでしまった。

タイラー不在に加えアームストロングまでいなくなったことで、インサイドは完全に桜木のもの。ここで得たフリースローも決めた桜木の3点プレーを皮切りに、一挙17-0のラン。三河は千葉に1点も与えることなく第3クォーターを終え、67-51と大差を付けた。

猛追にも慌てぬ三河、比江島「やるべきことはやっていた」

第4クォーター頭から千葉はアームストロングを戻して勝負に出る。すぐに4つ目のファウルを犯したアームストロングだが、その後は自重しながら対応し、リバウンドで存在感を発揮して反攻の起点となった。大量ビハインドを追うべく3ポイントシュートを連発。タフショット気味のシュートが多かったにもかかわらず、小野が、阿部が、パーカーが5本の3ポイントシュートを沈めて追い上げる。

残り3分18秒、小野のシュートフェイクからフリーでボールを受けたアームストロングが、辛抱の続く鬱憤を晴らすような豪快なダンクを決めて70-74と4点差。6039人の観客の大半を占めた千葉ブースターの熱気は最高潮に達した。

だが、タフショットはそう入り続けるものではない。その後はシュートがリングに嫌われ続け、落ち着いて対応した三河が一歩ずつリードを広げていく。三河の鈴木貴美一ヘッドコーチは猛追を浴びる間もタイムアウトを取らず、コート上の選手たちを信じ続けた。比江島慎も「自分たちのやるべきことはやっていたし、ずっとリードはしていたので慌てることはありませんでした」と、その恐るべき平静さを語る。結局、83-74で三河が勝利している。

千葉の大野篤史ヘッドコーチは「今までだったら第3クォーターの離されたところであきらめてしまったかもしれない。そこを最後まで戦えたのはオールジャパンで勝ったことでチームが自信を得た部分」と語るも、負けて満足はしていない。3ポイントシュートの連発で追い上げた終盤にしても「3ポイントばかりになってしまうのが千葉のバスケットなのか、という話を選手にしました」と言う。「リングにアタックできず外ばかりになってしまったのは良くない」

むしろ、千葉の戦いぶりを称えたのは三河の鈴木ヘッドコーチだ。この2連戦を振り返り「千葉がすごく力を付けてきている」と語る。「千葉はお客さんも入っているし、オールジャパンでも優勝した。これはバスケット界にとってとても良いことです。僕らは試合に負けたくはないけど、千葉が優勝したことで、そのチームに勝てるよう努力する。千葉もその他のチームもまた頑張って、そうやってレベルが上がっていくんです」

ストーン不在で1勝を拾えたこと、そして今日の試合でも最後まで食い下がったことは、千葉にとっては新たな自信になるはず。そして三河もまた、粘り強く戦うチームにきっちり勝ち切ったことで、一つステップアップできた。両者にとって収穫のある連戦だったと言えよう。